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022 根性! ひたすら素材集め

「うぼぼぼぼおおおお……」


 わたしは悩んでいた。

 ギルドホームについての情報が少なすぎるのだ。さっき、運営というかゲームマスターに今日か明日には買うつもりだからもっと情報を出してくれとメールを送ったが、返事はない。


 市役所で唸っていても仕方が無いので、ギルドホームや店を置ける地域の散策だ。ギルドホームはともかく、お店の立地条件は大切だ。隠れ家的なお店なんて、二つ目以降の道楽用だ。しっかり集客して儲けなければ店を開く意味がない。


「この辺りか」


 広場に近く、メインストリートから直接視認できる場所。小規模や中規模のお店ならこの辺だろうという場所は見つけた。クランホームは、正直、広場から近ければどこでも良いと思う。迷宮にはワープして行くし。


 時間は十二時五十分をまわったところだ。そろそろみんな来る頃かな? 

 と思っていたら、ピロンとメールがやってきた。ゲームマスターからだ。


 『本当にもうホームを買うんですか? 想定より一週間早いですよ……。それはさておき、クランホームについてですが、追加情報を公開いたしました。公式サイト、またはゲーム内の市役所より閲覧できますので、ご確認ください』


 ほうほう。ならば見せてもらおうではないか。

 早速、市役所で見てみると、クランについての説明や、家の基本機能についての説明が大幅に追加されていた。


 店やクランホームが内部で連結できるなんて、以前は書いていなかったからね。家の大きさによってクランに登録できる人数が違うとか、設置できる工房の大きさなどの記載も増えてる。というか、その辺の情報がないと選びようがないだろ普通。


 拡充された一覧をめくっていると、ヒイラギとキキョウがやってきた。


「やっほー、今日も張り切っていこうか」

「あれ? ユズ、剣どうしたの?」

「何か凄い目立ってるみたいだったから、街中では外すことにした」


 今のわたしは二刀流ですらない。左の腰に『安物の剣』を一本だけ下げている。これに換えてから注目を集めている感がなくなった。


「今日中に十五万貯まるかな?」

「やり方考えないとね」


 一匹から取れる素材の売却額で言えば、第二階層ボスのサメが最高だ。次は第三階層のクマ。だが、クマは負ける確率が高いし、ボスは涌くまでのインターバルが長いかと思われる。


「第二階層の敵だと、蜘蛛が一番お金になるんだったか?」

「一匹当たりの金額だと、蜘蛛、蟷螂、深海魚の順だったはず」

「十も変わらないけどね。わたしは蟷螂が楽で良いかな。一人で素材を取った上で勝てるし」

「蜘蛛って弱点あるのかな? 深海魚は電撃一発だけど」


 一々回復に時間や金をかけていたくはない。深海魚はダメージを受ける心配がないのが利点だろう。鮭や蛙も気絶(スタン)するが、得られる金額が安いから却下だ。


 今日の方針を話し合っていると、ツバキもやってきた。


「おっす。三人とも随分早いな」

「お昼食べてすぐ来たからね。そうそう、運営に文句言ったら、クランホームの情報増えたよ」

「マジかよ。まあ、情報少なすぎだったからな」


 そして、クランホームをどうしよう、こうしようと盛り上がっていると、セコイアとヤナギもやってきた。


「じゃあ、今日の目標、十万稼ぐぞー!」

「十万かよ、増えてねえか?」

「お金には余裕があった方が良いじゃん」

「とりあえず、今日は二手に分かれて狩ろうと思うの。わたしともう一人誰かが一人で蟷螂をやって、残り四人は深海魚やるのが効率的に良いと思うのよ」


 わたしの『無傷の勝利者』があれば、蟷螂に勝つのは難しいことではないはずだ。一発でカマを切り落とせるし、そもそもダメージを受けることもないと思う。一方の深海魚は電撃で気絶(スタン)してそれで終わりだ。あれで勝てないはずがない。


 蟷螂担当はヒイラギに決まると、迷宮第一階層はダッシュでボス部屋まで突き進む。


「ここのボスどうする?」

「武器とか安いんだよなあ」

「でも、倒したら奥の宝箱あるでしょ?」


 あ、そっか。強奪することばかり考えていたけれど、ボスを倒せば撃破ボーナスがあるんだっけ。第一階層は一人四百Gだっけか。それなら倒していった方が良さそうな気がする。


「じゃあ、速攻で倒していこうか」

「ここも班を分けない? 骸骨の剣って他のよりグレード高いし、できるだけ多く取っておいた方が楽だと思うんだ」


 セコイアは攻略法が分かってるし、可能な限りドロップ品は狙っていこうと言う。


「それじゃあ、どう分ける?」

「私は一人とか無理だよ?」


 キキョウが言うとヤナギもそれに同意する。この二人は武闘派じゃないし、仕方がないだろう。


「じゃあ、キキョウはわたしと一緒に、ヤナギはセコイアと一緒で良い?」

「僕は構わないよ」

「ツバキとヒイラギはどうする?」

「ソロはなあ……」

「出来るって言って負けたら恥ずかしいよな」


 ということで、この二人もペアを組むことになった。


「じゃあ、先に行くね」

「行ってら~」


 扉を開けると、私とわたしとキキョウは全力でダッシュする。そして飛び蹴りを食らわせたり斧をぶちかましたりと、やりたい放題に暴れて動く鎧(リビングアーマー)を転倒させ、剣を奪っていく。


 ここまではキキョウも問題なくできている。ここから先、殴りかかってくる鎧に正面から戦うのが難しいということだ。動く鎧(リビングアーマー)の足が遅いので、逃げることはできるので負けはしないが、勝てもしない、あるいは時間が掛かりすぎてしまう。


 『無傷の勝利者』があれば何の問題もなく勝てる。普通なら牽制のための突きが、致命的なダメージを与えていくのだ。


「ねえねえ、そういえばあの鎧って合体するとか言ってなかったっけ?」


 四体の動く鎧(リビングアーマー)を全部倒し終わって、キキョウが今更なことを思い出す。


「合体することを確認したわけじゃないのよね……。今度、確認してみようか」


 もしかしたら超ヤバなことになるかも知れないし、そういうのは伊藤さんがいるときの方が良い。

 骸骨もあっさり撃破して宝箱を開けると部屋の外に出てセコイアたちが出てくるのを待つ。


「お待たせ。やっぱり一人でも大丈夫だよ」


 そう待つことなくセコイアが余裕の表情で出てきて、一分ほどでツバキとヒイラギも出てきた。


「第一階層ボスは問題なさそうだね」

「ああ、次は一人で行ってみるかな」


 攻略法をおさらしし、二人も自信がついたのだろうか。レベルが上がったり強い武器を使えば、もっと楽に勝てるようにもなるだろう。



 第二階層に下りると、セコイアたちは右手前側の深海魚エリアに向かっていく。わたしとヒイラギは右奥の蟷螂エリアだ。


 そして、狩りをすること約二時間。キキョウからボイスメールが届いた。


 『調子はどう? こっちはもうすぐ百匹だけど』


 キキョウからボイスメールが届き、メニューを開くともう十六時になるところだ。インベントリの中の『蟷螂のカマ』は二百六十二個にもなっていた。


「わたしは百三十一狩ったよ。他の人も同じくらいなら全部で七万くらいになってるだろうし、一度集まろうか。ボスの洞窟入口あたりに集合で良い?」


 返事を送ってみると「了解」と返ってきた。わたしも途中の蟷螂を狩り倒しながら、ヒイラギの方へと向かう。


「サメ倒してから町に戻ろうよ」

「おお、そうするか。おれもそろそろ飽きてきたところだ」


 楽勝で勝ててしまうのは面白みに欠けるのは確かだ。ほとんどただの作業と化しているし、飽きもする。


 ボスの洞窟は、入口のほぼ真正面、蟻の縄張りの奥にある。蟻と戦うのも面倒なので、蟷螂を倒しながら奥へ進み、突き当たってからの崖に沿って進んでいく。



 暫く進んでいくと、蟷螂と蜘蛛の集団が見えくる。そこがボスの洞窟の入口だ。振り返ってみると、セコイアたちらしき人影が見える。


「じゃあ、始めちゃおうか」


 手近な蟷螂に切りつけてカマを落とし、頭にもう一撃加える。蟷螂狩りはこれだけで終わる。慣れれば実に簡単だ。ヒイラギと二人でやっていれば、全然問題なく群れにも対応できている。


 蟷螂の駆除が終われば残りは蜘蛛だ。その頃にはセコイアたちも到着し、ガンガン攻勢に出る。魔法で集中砲火を浴びせれば、蜘蛛のHPはあっという間に減っていく。特に氷の魔法の効きが良さそうだ。

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