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021 指導! 戦い方にはセオリーがある

「戦い方の自由度が高いからね。弱点を突くのは別に卑怯でもなんでもないよ」


 これまでのゲームだって、概念的には大した差は無いだろう。敵の弱点属性を突く武器やアイテムを用意したり、大人数で一匹を取り囲んでみたり。

 転倒しやすい敵を転ばせるのは戦術の一つだろう。フルダイブで実際にやると、リアリティが増しすぎてもの凄く卑怯臭いんだけど。


「逆に自分たちが転ぶ可能性もあるからね。第三階層はかなり足場が悪いし、注意しないとね」


 セコイアの言う通りだ。その辺りを含めて、わたしたちにはまだちょっと早いと思う。わたしも『無傷の勝利者』がなくても問題なく戦えるようにならないと。

 奥の小部屋で水晶とお金、メダルを回収して第二階層へ向かう。今日のメインはこっちだ。


「ええと、これから狩場に向かいます。敵はかなりキショいので覚悟しておいてください」

「キショいのかよ。強さはどうなんだ?」

「電撃でスタン入るから、全然問題ない」

「電撃? 私電撃持ってないよ……」

「大丈夫だよ。わたしは、もう電撃は覚えたから」


 ヤナギは心配そうにするが、キキョウが電撃の魔道書を渡して呪文を覚えてもらえば問題ない。


「魔道書が必要なのは、その魔法のスキルを覚えるまでなんだよ」


 セコイアとキキョウの魔法が使えるようになった経緯から分かったことを述べる。


 つまり。

 電撃の魔道書を入手して一定回数使うと、一つのスキルとして『電撃』を覚える。そのスキルを得た後は、魔道書がなくても本人が呪文を覚えていれば魔法は使える。

 尚、魔道書を持っていようが、スキルを取得していようが、呪文を唱えることができなければ魔法は使えない。魔法の発動は、完全な詠唱がキーになっていて、詠唱を間違えたり、一定時間中断すると、魔法は全く発動しないのだ。


 ということで、男性チームと女性チームに分かれて深海魚を狩っていく。魚類は電撃を一発当てれば簡単に気絶するので、狩り自体はとても簡単だ。落っこちたところを狙って疑似餌を切り取り、止めを刺して牙をへし折り、ドロップアイテムを回収する。


 三人いれば一連の作業はスムーズに進む。少々飽きてくるが、三人のレベル上げも兼ねているということで二時間ほど頑張った。


 わたしは一しかレベルが上がってないけど、一桁台だった人たちは無事にレベル十を超えた。


「今日のところはこれくらいで勘弁してやりますか」

「先生! 他のモンスターも狩ってみたいっす」


 ヒイラギのリクエストによって、他のエリアにも行くことにした。まずはカエル。電撃で気絶もするけど、一歩下がりながら斧を振り下ろすだけで簡単に倒せる。

 ただし、そこらの剣は効きづらい。たぶんだけど、斬撃耐性があるんだと思う。わたしの『無傷の勝利者』は攻撃力が違いすぎるので、多少の耐性は突破できるけど。


 そして、足の生えた鮭やアリ、クモ、カマキリを狩って、ボスの洞窟の入口まで着いた。


「どうする? 第二階層のボスクリアしておく?」

「勝てるかなあ?」

「ボス自体はめっちゃ弱いから、大丈夫だと思うよ。行くのが大変」


 『無傷の勝利者』をツバキとヒイラギに貸して、前列を任せて突き進む。出てくる敵の数は多いけど、殆どが一匹ずつだし、二人が並んで警戒しながら進んでいれば、とくに問題なく対処できるみたいだ。


 だが、二人が頑張っても、伊藤さん一人が前列を張るよりも進むのが遅い。あの人の化物っぷりがよく分かる。


「敵、多ッ! めっちゃ多ッ!」

「やっと着いた!」


 ボス部屋への扉がある広場に着いて、ツバキとヒイラギは安堵の声を漏らす。そして、扉の前には数人陣取っていた。


「ボスやりたいんで通してもらえますか?」

「その様子だと初めてじゃなさそうだな。どんな奴か知っているのか?」

「空飛ぶサメ。数は、確証はないけど、こっちの人数の半分だと思う。前回、四人で入って二匹だったよ」


 第一階層のボスがこちらの人数で変わるのに、第二階層は固定ということはあるまい。今回は、わたしたちのパーティーは六人だから、三匹が出てくるはずだ。


 一人一匹の裏ボスはかなり厳しいけど、三匹なら問題ない。だって、電撃使いが三人いるんだもの! 


 わたしが男たちと話をしている間に、セコイアとキキョウはヤナギと作戦について話をしている。当然、開幕スタンでタコ殴り作戦だ。

 わたしは『無傷の勝利者』を返してもらい、『無防の力』『剛腕』を装備する。


 扉の前で武器を構え、ヒイラギが扉を開ける。


「先制攻撃いくぞー!」


 叫びながら部屋に突入する。数は予想通り三匹。セコイアの電撃が中央の一匹に命中し、少し遅れてキキョウとヤナギの電撃が左右の二匹にそれぞれ命中する。


 わたしはヒレを切り落として、二本の剣でバスン、バスンとそれぞれ二回切りつける。サメなんてそれだけで終わりだ。


「次!」


 叫んで左のサメに向かう。やはりヒレを切り落として、左右の剣で一撃ずつ。それでHPが一気に減ったのを確認すると、そちらはキキョウとヒイラギに任せて右の一匹に向かう。

 そちらも、ヒレを切って止めを刺すだけだ。急がないとスタンから回復してしまうけど、とても簡単な作業だ。


 外にいた人たちも、魚ということは教えたのだから、弱点の雷撃系で攻撃することを考えるだろう。数も少ないし、しっかり対策すれば、見かけほど怖くない。もしかしたら初見ボーナス取れるかも。


 ヒレを四枚ずつ切り取って回収すると、サメの死骸は消えていく。奥の小部屋にはおなじみの宝箱が六つ、スポットライトに照らされていた。

 わたしの宝箱に入っている物は知っている。『安物のエメラルド』にメダル一枚、お金が五百ゲーくらいだろう。


 初めてクリアするツバキたちは『転移のエメラルド』を得たはずだ。


「このメダルって何?」

「今回は二枚なのか」

「用途は今のところ不明。集めておけば、たぶん、良いことあるんだと思うけど……。枚数増えてるのは、ノーダメボーナスかもしれない」


 よく分からないし、そこら辺は今度、ゲームマスターに聞いてみようかな。


「ここで、一つ大きな問題があります」


 唐突に振り返り、わたしは真剣な顔で言う。って、このゲーム表情ないんだった。


「何?」

「第三階層の雑魚敵は、下手したら今のボスより手強いです」

「何それ⁉」


 三人は驚きの声を上げるが、セコイアとキキョウは、わたしの見解を否定しない。あの不意打ちを軽々と迎撃できるのは伊藤さんくらいだ。わたしじゃなくても、防御力に不安がありすぎる。


「この先は、武器も防具も、真面目に揃えていかないと無理だと思う。それくらい、一気にレベル変わるから」

「いつまでもユズの剣だけに頼っていられないしね」

「鍛冶だよ! 生産だよ! 武器作ろう! アイテム作ろう!」

「ということで、第三階層に着いたら、速攻で『帰還の水晶』で帰るから」


 『転移のエメラルド』で行けるのは、()()()()()()()()階層の入口だ。ツバキたち三人は、第二階層をクリアしたが、まだ、第三階層には行っていない。


 一度、足を踏み込んでおく必要があるだろう。メニューパネルを開いたまま階段を下りていき、一歩出たところで『帰還の水晶』を使う。


 白くなった視界が戻ると、そこは町の神殿前広場だ。


「んじゃあ、ドロップ品売りに行きますか」

「幾らくらいになったかな?」


 結論。今回のドロップ品だけで四万(ゲー)を超えていた。わらい。


 所持金は全員を合計すると七万五千ゲーくらいだ。それでもまだ目標額の半分ほどだけど、二、三日で達成可能だということは明白だ。


「ユズは明日何時くらいにインする予定?」

「午前中は家事とか済ませたいから、早くて十二時、正午くらいかなあ」

「一人暮らしなの? 大変だね。わたしもゲームばかりしてると怒られるから、午前中は勉強して、お昼ご飯食べ終わっての昼一時くらいかな」


 みんな用事は午前中に済ませて、十三時前後に市役所二階に集まろうということになった。

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