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012 強化! スキル取得は必須だよね!

「何これ!」

「キショすぎ!」


 記憶を頼りに芋虫部屋に直行すると、二人は悲鳴に似た声を上げた。通路の先の部屋にウジャウジャといる芋虫が溢れかえっている光景に、そういう反応をしてしまうのは仕方がない。わたしもドン引きした。


「鏖殺っていうスキルがあるんだけど、敵の数が十倍以上のときに攻撃範囲、攻撃力がアップするのよ」

「ピンチのときに便利っぽいね」

「オウサツ? それってどんな字書くの?」

「みなごろし」

「……そう」

「それは、こいつらを(みなごろし)にすれば手に入るの?」

「わたしは途中で取れたから、たぶん、一定時間内に殺した数で取れるんだと思う」


 説明するととりあえず二人とも納得したようで、芋虫部屋に挑戦することにした。わたしは既に取得済みなので、一度、パーティーを抜けておく。


 最初に魔法をぶっ放し、二人で蹴って切ってを繰り返す。芋虫の数はどんどん減っていく。二人でやれば部屋いっぱいの芋虫もすぐに片付いてしまいそうだった。


 しばらくすると、セコイアが少し後ろに下がる。もうスキル取れたのかな? 

 芋虫の数が目に見えて少なくなってきたころ、キキョウも「取れた!」と戻ってくる。広い通路まで出てきたら、芋虫はそれ以上追ってこないようだ。


「スキル取れた?」

「うん。鏖殺は取れました。それとレベルがすごい勢いで上がっていくんですけど……」


 開始して一時間も経っていないのに、既にレベルは八まで上がったようだ。


「それなら第二階層にも行けるね」

「行ってみよう」

「おー」


 全員一致で今度こそ第二階層へと向かう。

 ボス部屋の前まで行くと、さっきの人たちがまだいた。


「いつまで待ってるんですか?」

「あ? お前らまた来たか。何度来ても無駄だって」

「いや、勝ったんだけどね」


 セコイアはあっさりとバラしてしまう。


「なんだって? どうやって勝ったんだ? 何か攻略法でもあるのか?」

「まあ、攻略法はあるけど、正攻法でいくならプレイヤースキルを磨いた方が良いよ」

「は? お前は自分が強いって言いてえのか?」

「違うよ。わたしじゃない。わたしも最初は助けられたから。さっき勝てたのは卑怯技」


 横でセコイアとキキョウも「あれは酷いよね」と頷き合ってるけど、そういうのも含めて今までのゲームにはない戦術性なんだと思う。


「情報を買おう。いくらだ?」

「別に無料(タダ)でいいよ。所詮は第一階層だし、御大層に秘密にする程のことでもないし」


 実際、何度かやってみれば傾向は掴めるはずだ。いくつかのパーティーで情報交換しあえば、攻略できないなんてことはないだろう。


 まず、分かりやすいことからと言うことで、人数は少なめで二、三人くらいが一番やりやすいこと、敵も転ぶことを伝えた。


「とにかくダッシュで奥に行って速攻で叩くことだね。敵が剣を構える前からダメージ判定あるから」

「は?」

「あの鎧が台から前に進み出て抜剣! ってやってる間に一番手前は殺す。二番目も転倒させる。それで勝てる。二人で入れば、鎧は四体しか出ないから、そんなに難しくないと思うよ? その後の骸骨は多少大変になるけど」

「骸骨? 何だそれ!」

「本当のボスは骸骨。かなり強いけど、倒した鎧のパーツを足下に放り込んでやれば簡単に転ぶから、後はタコ殴りするだけ。たぶん、この方法は卑怯すぎるし多分対策されると思う。来週にはできなくなってるかもね」


 骸骨と戦っていたら鎧が集まっていくが、その後どうなるのか知らないから、そこには触れない。


 そして、わたしは薄紫に光る転移用の魔法円に向かう。残り時間はかなり少なくなっているが、まだ使用可能だ。セコイアとキキョウもボスクリアしたし使えるようになっている。パネルを操作して転移をポチッとタップすると視界は白く塗りつぶされていく。


 真っ白になった視界が徐々に色を取り戻すと、狭い通路に出る。後ろには延々と続く上り階段。目の前の出口の先はサバンナが広がっている。


「えっと、二人は生産職とか興味ある?」

「生産職? 武器職人とか? このゲームって職業はなかったよね?」

「職業はないけど、それ用のアイテムとかスキルはあるんじゃないかな。工房は見つけたけど、手に入れるべきなのかは分かんない。あ、入手にCPが二十必要」

「うえええ、またCP? 足りないよ!」


 話を聞くと、キキョウは、ポーションとか作ってみたいらしい。


「ええとね、鍛冶に皮革、織物の三種類の工房が見つかってる。それに厨房。食べ物はやっぱりバフ関連かな?」

「ああああ、やりたい! それやりたいよ!」

「ちょっと待って、これ、受け取れる?」


 パネルを操作して、『厨房(小)』の譲渡を選んでみる。


「え? 良いの?」

「CP二十貸しね。あ、家がないと意味ないよ」

「がーん。家の目処が立ったらお願いして良いかな?」

「その時までに残ってたらね。一つでインベントリ五枠使ってくれてるから結構邪魔なのよ」


 家の入手方法も分かっていないし、工房開設はまだ先のようだ。お金とCPを貯めていく必要がありそうだ。


「左側方面は行ってみたけど、工房入手できるくらいかな」

「じゃあ、別の方向に行ったほうが良さそうだね」

「あ、ただし。左に行けば工房のところで斧とかいっぱい手に入れらる。あの数をブン奪れば、結構な金額になるかも」


 一人だと狙ってばかりもいられなかったけど、三人ならいけるかも。


「お金は欲しいよね」

「工房の場所も知りたいし」


 意見はまとまり、チビデブのアジトに向かうことにした。



 入口はかなり見つけづらい。崖のすぐ前に大岩があり、その大岩の崖側に裂け目があるのだ。崖に沿って歩いているだけでは、そこに入口があることは分からない。

 やたらと見つけづらい裂け目から入り、長い通路を抜けて広間に出る。昨夜と同じように、ガチン、ガチンと音がしている。ここのモンスターもリスポーンしているようだ。


「あの音は見張り。見つかったら下からワラワラ出てくると思う」

「思う?」

「わたしは仲間呼ばれる前に倒しちゃったから。どっちにしても殺すんだけどね」


 そんなことを言っている間に、わたしたちを見つけたのか、チビデブが騒ぎながら階段を駆け下りていった。そしてドアを開ける音がして、ドカドカと大量の足音が階段を上ってくる。


「腕狙いでいくよ! 剣の長さが倍になってるから注意!」


 全員、『鏖殺(おうさつ)』を持っているのだ。赤い光が伸びた剣を振り、武器を叩き落しつつ、チビデブを屠っていく。

 調子に乗って殺しまくっていると、後続が登ってこれないくらい、死体が山のように積み重なっていく。


「少し武器回収した方が良さそうかな?」

「何匹いるのコレ?」

「全部で百以上だね。正確な数は数えてないし、分かんない。とにかく、どんどん拾っちゃって」

「うひい」


 落ちている武器をちょっと握るだけでインベントリに格納される。そしてその数秒後には、ドロップしたチビデブが消える。

 チビデブの山が崩れて、さらにやってきたチビデブをどんどん始末していく。剣の赤い光も消えたし、残りは三十もいない。

 二人が武器を回収している傍らで、わたしはひたすらチビデブを蹴り飛ばす。キックのレベルがさらに上がり、それに伴って威力も上がっているっぽい。鎧を着たチビデブでも一撃で殺せるようになった。

 それでも、腕を狙えば一撃死にはならないようで、頑張って武器を落とさせるように倒していく。


「ふう、終わった!」

「何本あるのコレ?」

「えっと、私はね……」


 わたしは今回、一つも拾っていない。前回、一人でやったのと混ざっちゃうからだ。

 で、回収したドロップアイテムは、斧が三十一、槍が七、小剣が三十六、ダガーが四十八、棍棒が五という結果だった。

 それを三人で山分けにして階段を下りる。


「ここで工房ゲットできるのよ」


 廊下から部屋に入り、すぐ横の宝玉を示す。


「なるほど。CPが必要なのね」

「これ、工房取るの大変じゃない?」

「小でこれだからね。でも、他にもあるかも知れないよ? クエ報酬とか」

「あー、なるほど」


 少なくとも一つは入手方法を得たということでとりあえず納得したようだ。チビデブのアジトを出ると、今度は右の方に向かってみることにした。

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