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010 購入! ファンタジーならやっぱり魔法だよ!

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 『炎の槍』『爆炎球』『氷の槍』……


 火に氷、風、雷といったよくある属性の初等魔法なのだろう。単体攻撃用と範囲攻撃用がそれぞれ一つづつある。


 金額はどれも、一つ二十五Gだ。そして、CPも十五必要らしい。


「えええ、CPここでも必要なの?」

「魔道書のコピーするのに必要なんだ」

「魔道書のコピー?」

「これだよ」


 言いながらセコイアが出したのは『電撃』の魔道書だった。A4サイズくらいの紙に、魔法円と呪文が何やら書かれている。


 それに触れたら『魔道書を複製しますか?』と出てきた。これコピーすれば良いの? お店でお金を払う必要なくね? 


「これからコピーできるんだね。仲間で一つだけ買えば良いらしいよ。CPは必要なんだろうけど」

「え? そうなの? 結構みんな買ってたよ」


 このゲームは謎な仕様がちょいちょいある。装備しなくても武器を扱えるとか、他の人知らないんじゃないかな。


 さて、わたしの魔法はどうしようかな。セコイアが雷なら、水とか? って、毒の魔法はあるのに解毒は無いの? 補助魔法的なものも一覧には無い。


「回復魔法って無いんだね」

「そういえば見当たらないね。他にも店があるのかな? 探してみる? キキョウはどうする?」

「私はCPが足りないです……」


 キキョウはガチャに五十突っ込んで、現在は七しか残ってないらしい。


「とりあえず、聞きながら探してみようか」

「そうだね。回復薬とか売ってる店も知りたいし」


 セコイアはガチャで出たポーションが尽きてしまいそうだと言う。あれ? わたし、今まで回復なんてしたことないよ? そういえば、今まで一度もダメージを受けていないかもしれない。もしかして、わたしSUGEEE? 


「すみません、回復魔法ってどこで売ってるかご存知ですか?」

「回復は向こうだよ」


 広場に戻って聞いてみると、すぐに答えが返ってきた。攻撃魔法の店とは反対側にあるらしい。指された方に行ってみると、回復魔法を売っている店はすぐに見つかった。


 店の作りはほぼ同じ。カウンターの奥にいるのは、こちらはお婆さんだ。「すみません」と声を掛けるだけでパネルが出てきた。


 『治療』『治癒』『解毒』……


 何やら色々並んでいるが、治癒と治療って何が違うのよ? 選択してみると、簡単な説明文が表示される。


「治療が単体で、治癒が範囲って紛らわしいな」

「範囲回復は今は良いや、治療と、バフを買うかどうか……」

「パーティーなら、範囲回復の方が良くない?」

「たぶんだけど、範囲内の敵も回復するよ?」

「え?」


 二人とも、このゲームに対する理解が甘い。やたらリアルさを追求しているのだ、範囲攻撃は味方も自分も巻き込むし、範囲回復は敵をも回復するだろう。戦闘中に相手の武器を奪えるくらいなんだから、変な保護機構はないと考えた方が良い。フレンドリーファイヤは常に有効という前提でいるべきだ。


 とりあえずお金を払い、治療の魔道書を複製しておいた。キキョウはCP不足なので、魔法の種類の確認だけだ。


「これをどうやって使うの?」

「魔道書に書かれている呪文を唱えれば使えるよ」


 な、なんだってーー⁉ 


 魔道書に何やら呪文が書かれているのは確認済みだが、これを自分で詠唱するのか。何やら、というのは書かれている呪文が日本語ではないからだ。これは、たぶん、英語。もしかしたらラテン語とか気もしれないけれど。


 ええと、どう読むんだろう……? 


 って、右上にlanguageとかあるし、その横にプルダウンで言語を選択できるようになっている。さすが仮想世界だぜ。ただの紙に見えて紙ではない。


「ヴァセ、エイリエ、オレンソール、モノ、ゼルンポック」


 言語を変更し、カタカナで表示された呪文を詠唱してみると、左手が黄緑に光りだした。その状態でポイっと手を振ってみたら、光は飛んでいく。

 ほう、そうやって使うのね。


「よし、じゃあ早速行ってみよう!」

「どこに?」

「第一階層のボス倒しに」

「まだパーティー組むとは言っていないんだけど……」

「ええええ?」


 この流れでセコイアはなかなか冷たいことを言う。普通、ここでバイバイとはならないと思う。


「冗談だよ。本当に僕でいいの?」

「基本、ヤな奴じゃなければ良いんじゃない? レベルとか強さとか、今の段階じゃ大した差なんて無いよ」


 良くも悪くも伊藤さんがそれを見せつけてくれた。彼女のような例外を探したって見つからないだろう。


「あの、私は……」

「全然オーケーだよ。レベルなんてすぐ上がるから。武器もいくつかあるし。剣と斧とダガー、どれが良い?」


 インベントリから出してみせると、二人とも驚きの声を上げる。キキョウはガチャで出たのは防具だけで、武器がなくてどうしようかと思っていたらしい。


 まず二人とパーティーを組み、ついでにフレンド登録もしておく。さすがに何もない相手に武器をあげるとかするつもりはない。


 メニューから『パーティー』を開くとメンバーの基本情報が表示される。と言っても性別とレベル、それに自分で設定した自己紹介文だけだ。


 ちなみに、セコイアは身長百七十センチあるかないか、クセのある茶色の髪を短めにまとめたヘアスタイル、見た目は好青年である。キキョウの方は身長はわたしとほぼ同じで百六十弱、オレンジの髪を「おさげ」にした女子だ。バストサイズは自由に設定できるのだが、それほど大きくはしていない。


 見た目だけで年齢は推察できないが、何となく物腰や話し方から察するにセコイアは大学生よりは上、おそらく就職している。逆に、キキョウの方は学生感が漂っている。


「第一階層なら武器なんかなくても十分戦えるんだけどね」

「武器なしで? どうやって?」

「蹴る。全部蹴り殺す。実際、最初はそうしていたし」


 武器を使うよりも蹴り飛ばせというのは伊藤さんのアドバイスだ。だが、本当にそれで勝てるのだからガチャで武器が出なくても問題ないのだろう。


 二人とも剣を所望したので、『安物の剣』を一本ずつ渡してやる。セコイアの方は魔法の杖が出たらしいが、魔法だけだとかなり大変らしい。


「しゃあ、早速行こうか」


 迷宮のそんなに遠くはない。広場から五分もかからずに入り口に着く。


「まずは明かりの魔法だね。これ、もっと簡単に使う方法ないのかな?」


 メニューを開き、魔法の欄から『照明』を使う。すぐ横にさっき買った『治療』もある。これも長押しで使えるのだろうか? 


 試しに長押ししてみると画面の上に青のゲージが現れて、白のバーが左から伸びてくる。それが右端に到達すると左手が黄緑の光に包まれる。


 光をキキョウに向かって放り投げるも、何も起こらない。HPは満タンだしそんなものか。


「メニューからは使えないね」

「詠唱していても動き回れるけど、戦闘中にそれやってたら袋叩きにあいそうだよ」


 そんなことをしながら歩いていたら、ギャアギャアという声とともにチビデブが三匹現れた。


 即座に間合いを詰めて、「とうりゃあ」と掛け声を上げつつ中央のチビデブの顔面めがけて靴底を叩き込む。セコイアとキキョウは剣を抜こうとして反応が遅れている。


「蹴飛ばして! 剣はいらないから!」


 キック一発でHPを大きく減らし、チビデブは左後ろのもう一匹を巻き込んで倒れ込む。だが、もう一匹はダガーを振り上げてこちらに向かってきている。


 そこに、セコイアの蹴りが炸裂する。助走をつけた片足飛び蹴りだ。チビデブはたまらず吹っ飛び、地面に転がる。


 それを踏みつけて止めを刺せばそれで終わりだ。


「剣と魔法は……?」


 転がるチビデブの死体を前に、二人がドン引きしているが、それはわたしも通った道だ。伊藤さんがひたすら蹴り殺していくのを見て愕然としたのは昨日のことだ。


「剣を使うのでも良いけど、びびって腰が引けているようだと勝てないよ。覚悟を決めて踏み込んで、思いっきりぶちかまさないと戦いになんでならない」


 これは、わたしがここまでやって実感したことだ。技術的な面だけじゃなく、精神的な面の差が大きいことは、伊藤さんと、他の人たちの戦い方を見れば歴然としている。



「ボスに直行したいけど、キキョウのレベル上げを考えたら、少しは第一階層でモンスター狩りしていった方が良いのかな?」

「直行って、レベル二とか三でボスに勝てるものなの? 僕も何度かチャレンジしたけど、全然勝てる気がしないんだけど」

「たぶん、勝てるよ。なんていうか、戦い方をにコツがあるのよ。今は斧もあるし、余裕とはいかなくても、歯が立たないことはないと思うよ。はっきり言って、レベルは一でもいける」


 私としては、あの戦いでレベルアップの恩恵があったようには思えない。基本的には、最初に剣を奪ってしまえば負けることはないだろう。あとは地道にダメージを与えていけば良いだけだ。

 だが、レベル上げを一切しないのも考えものだ。少しずつだがレベルが上がればステータスも上がっていく。どこかでレベル不足で壁に当たるんじゃないかと思う。


「じゃあ、少しだけ探索していこうか。ユズは第一階層は全部回ったの?」

「右半分は大体塗りつぶしたけど、左側はまだだね」

「じゃあ、そっち行こうか。僕は下半分は大体終わってるけど、上の方がまだなんだ」


 キキョウは初めてだし、希望も何もない。わたしとセコイアのマップの空白箇所を目指していくことにした。


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