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衝撃の事実

(あいつらは、どうしてなかなか、離れてくれないんだろう)


 僕は学園の裏にある森の入り口の木に、背を預けていた。

 ここは、滅多に人が通らない場所。

 ここにいると、僕は人と関わらなくてもいい。

 クラブも、適当な所に所属したらいいだろう。

 どうせ僕は、それに参加しないのだから。


「何、やってんだ?」


 そんなことを考えていたら、突如降る声。

 驚き見てみると、蒼色の双眼が、僕に向けられていた。


「……サリュ・ミーク」

「サリュでいいよ」


 爽やかに微笑むサリュに、やはり違和感を感じ得ない。

 本当に、あのサリュと同一人物なのだろうか。


「グループ、決めようと思ったんだけど、何か争い始めちゃって……。だから、逃げてきたんだ」


 そう言いながら、僕の隣に立つ。


「ねぇ。良ければだけど、僕と一緒に回らない?」


 手なんか差し出しちゃって、少しキザっぽく、サリュは言う。


「……嫌だよ、君みたいな有名人と回るなんて。目立つじゃん」

「……それを言われたら、何も言えなくなるんだよなぁ」


 腕を組み、考え込むサリュ。

 その間中、さっさとどっかにいけオーラを僕は放つ。

 気づかないわけはないそれを、サリュは無視して空を仰ぎ続ける。


「じゃあ、あまり人がいない所に行こう。それなら、いい?」

「……ダメ」

「何で?」

「僕、1人で行きたいから」

「1人ではいけないでしょ」


 呆れたようにサリュは言い、強引に僕の手を取った。

 いつものごとく避けようにも、こいつは普通の生徒ではない。

 普通を遥かに凌駕した、ルピナス隊の隊員である。

 それを避けようものなら……僕のこれからは、終わるだろう。


「ほら、腕輪」


 避けるそぶりは見せながらも付けられたそれは、水色の腕輪。


「僕、一緒に回るなんて、言ってないけど?」

「いいじゃん。いなかったんでしょ、回る相手」

「そう、だけど……」

「じゃあ、いいでしょ」


 そう言って、スタスタとサリュは歩き出す。

 といっても、今は放課後の時間を利用しての一年生総出のクラブ巡りである。

 皆が回っているというのに、あまり人がいないところなんてあるのだろうか。

 そう思いながらも、歩くサリュを追う。

 ふと上を見れば、怪しい雲行きの空が、そこにはあった。




△▽




「……ねぇ。私、アル君について、その……気になってる事、あるんだ」


 アルの机を呆然と眺めていたら、躊躇いがちにミリーが口を開いた。

 視線を向け、先を促す。


「……私と、アル君、その……似てない?」

「似てる、って……?」

「顔、とか」


 顔?

 と、ミリーの顔に注目するフレイ、リア、フィー。


「「……あっ!」」

「……!?」


 その顔は、確かにアルと同じ顔であった。

 髪色こそ金に近い茶髪ではあるが、髪型を同じにすれば見分けがつかないのではないかというほど、アルの顔と酷似している。


「……やっぱり」


 呟くミリーは確信めいたように頷いた。


「けど、どうして?」


 リアは呆然と零す。

 それもそうだ、友達と友達の顔が、恐ろしいほどに似ていたのだ。

 驚くなという方が無理な話である。


「私……私には、生き別れた兄が、いるらしいの」


 悲しげに、ミリーは切り出す。


「双子に生まれた私と兄は、生まれてすぐに、別れたらしいの」

「……どうして?」

「兄が、両親によって……森に、置いておかれたから」

「……ッ!?」


 それは、捨てられたということ。

 それも、生まれてすぐに。

 フレイは、ミリーの両親を思い浮かべた。

 愛情のこもった優しげな顔に、いつも笑顔の表情。ミリーを呼ぶ声はいつも愛に溢れ、抱きしめる手は優しくミリーの背中に回る。


「なん、で……」


 そんな人達が、自分の子供を、捨てるなんて……。

 信じられず、フレイは声を漏らした。


「兄は、膨大な魔力を持ってたらしいの」

「魔力?」

「そう。そしてそれは、両親を傷つけた」


 ある日、元気よく生まれた、男の子と女の子。

 1人は赤い髪を持ち、1人は明るめの茶髪を持つ。

 そして、赤い髪の方ーー男の子の方には、膨大な魔力が宿っていた。

 最初は気にしていなかったのだが、その男の子の世話は、とてつもない程大変であったのだ。

 感情によって左右されやすい魔法は、幼い子供にとって制御が難しい。

 それは、男の子にとっても例外ではなかった。

 お腹が空いた、トイレ、眠たい、何にもない時さえ、溢れ出る魔力、炎の豪炎。

 その為、常時発動させなくてはならない結界に、2人の子供の世話、プラス上の子もまだ幼い為、そちらの面倒も見なくてはならない。

 幾重にも重なる重労働、溜まる疲労、ストレス。

 そうして耐えられなくなり……ミリーの両親は、男の子を、森に捨てたのだ。


「……どうして、施設に預けなかったの?」

「施設は、親がいる子供は預かったりしないらしいわ」


 リアの質問に、ミリーが答える。


「じゃあ、ミリーの兄がアルかもしれない……って、ことか?」

「うん」

「でも、それだとおかしくない? アルの髪は赤って言っても先だけだし、魔力だって特待生ではあるけど、そんなに多くないわ。それに、アルの属性は確か、風、よね。火は、使えないはずじゃない?」


 アルの髪は、何度も言うように、白に近い銀色にちょくちょくと赤が混じり、先が完全に赤、という髪型である。

 それに魔力も平均的だ。

 魔封具だって、付けている気配はしない。

 そもそもアルは、アクセサリーの類をつけていなかった。

 よって、魔封具を付けている可能性はない。

 それに、自己紹介の時に言っていた、属性。

 小さな声で紡がれたそれは、確かに風であった。


「まだ、あるの」

「え?」

「兄の、名前……アルディなの」

「アル、ディ?」

「そう。捨て置いたときに包んでいた毛布と一緒に、刺繍の入ったハンカチを入れていたらしくて」

「じゃあ、本当に……アルは、ミリーの兄なのか」

「多分、だけど」


 アルの名前は確か、アルディル・アマルド。

 アルディというミリーの兄と、似すぎている。

 これだけ証拠が揃えば、もう否定はできないだろう。

 後は、本人に確かめてみるだけである。


「……行こう」

「うん」


 となれば、即行動である。

 アルに、真実を確かめに。

 あの悲しい目を、破る為に。


 フレイらは、駆け足となって教室を飛び出した。

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