獰猛で、力強く、勇敢ないきもの
私は、恐る恐るドアノブに手をかけ、背伸びをしてのぞき穴から外を見た。
いたのは、トラだった。
よかった。
私はほっとして、ドアを開けた。
「やっほー。うまくやってる?」
トラはいつものやわらかい笑顔で手を振った。
「まあまあね。」
私の足元には、真っ白なユニコーンちゃんが行儀良くおすわりをしていた。
なついてくれたのかな?
ソファーの下においた器の中は、カラッポだった。
うん、えさもちゃんと食べてくれたみたいだね!
「ところで、何の用?」
私が聞くと、トラはポケットから何かを取り出した。
「なにこれ?」
カラオケに行ったときに、マイクについてるカバーみたいな……
「見てのとおり、カバーよ。」
トラは、にっこりと笑って説明してくれた。
「ユニコーンの角にはね、水を浄化し、毒を中和する特性があるの。」
えっ、なにそれ
「さらに、あらゆる病気を治す力を持っているのよ。」
まじで。それ超便利じゃん
病院代が浮くね。
……そんなことを考えてしまうのは、貧乏人の証拠なのだろうか。
なんか悲しい。
私が一人で勝手にしょげていると、トラは再び口を開いた。
「しかし、ユニコーンはもとは獰猛で、力強く、勇敢ないきもの。」
……えっ?
私は足元を見た。ユニコーンちゃんはまん丸な瞳をぱちくりした。
この子が……
獰猛で、力強く、勇敢……?