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捏造の王国

捏造の王国 その9 フェイク国家ポンニチ疑惑を払しょく、カメラをまわすぞ!

作者: 天城冴

国会開会前の準備に頭を悩ますガース長官。差し入れのクロイチゴクリーム大福を食べようとした途端、スマートフォンが鳴り出す。シモシモダ副長官から驚愕の報告が…

 冬らしい寒さがつづくトーキョー、ジコウ党のガース長官の部屋。本日も快晴ではあるが冷たい北風が窓のガラスをガタガタ鳴らす。

「ああ、今年もこの風のように国会でも強い風が吹きそうだ。新年会はさんざんだし、コーロー省の調査不正に、オリンピック国内委員会のダケダについに捜査の手が及ぶし。去年お茶を濁しといたのに、やはりヨーロッパは厳しいか、国内マスコミなんぞは誤魔化せても外国メディアやましてやインターポールなんぞはそうはいかなかった」

 新年早々頭の痛い問題が山積み。もうすぐ開かれる通常国会に向けての総理の答弁やらの原稿準備などを行っている。ガース長官は野党などから出された事前の質問項目をみてため息をついた。

「ロシアのプータン大統領は表向きはニチソ共同宣言をもとにといいながら“北方領土はロシアのものと認めるなら平和条約を結んでやる”と強気、。まったくアベノ総理が余計なことを新年にいってくれるから。内輪向けの発言でも絶対外部にばれるから注意してくださいとあれほどいったのに」

 ググー、不意に腹の虫がなる。

「考えすぎてエネルギーを消費しすぎたか。それでは一服するか」

いそいそとお茶の準備をする。

「さて今日の茶菓子は、後援会会長から頂いた新作和菓子“クロイチゴクリーム大福”か。おお、私の実家のクロイチゴと生クリームをなかにいれた新作大福、これはおいしそうだな」

菓子皿に大福をのせ、クロモジで半分に分けた途端、机の上のスマートフォンが震えだした。慌ててスマートフォンを取り上げると

「ガース長官!」

と聞こえてきたのはシモシモダ副長官の声。

「な、なんだね!シモシモダ君!」

と、ガース長官が立ち上がった拍子に、クロイチゴクリーム大福の半分が机から滑り、マーフィーの法則のごとく生クリーム面を下にして床に落ちた。

「ぎょええええ、わ、私の茶菓子がああああ」

「わー申し訳ありません」

「い、いや。まだ半分ある。それよりどうしたのだ」

「ア、アベノ総理が」

「総理がどうした」

「ど、動画を撮るとおっしゃって、いま官邸でカメラを」

「な、なんだとー」

アベノ総理のおかげで一服する間もないガース長官であった。


官邸、総理の部屋では金だけはかけてあるカメラ機材を前にアベノ総理が怒鳴り散らしていた。

「ったく、リベラルだのパヨクのやつらめ。“政治のまーちゃん”だの、“杏子のきもち”だの。お、おまけに“偽装民主主義国家ポンニチ”だとおお、わが国のどこが偽装だああ」

アベノ総理の八つ当たりをうんざりしながら聞くシモシモダ副長官。

(はあ、コーロー省の統計問題がトドメだよなあ。GDPもおかしいんじゃないかとニチニチギンのマックロカワ総裁までいいだしたし。フェイク国家って言われたって仕方がないし。そもそも北方領土だのオキナワのサンゴ移植だので、総理が口から出まかせを言っているのは本当なんだよなあ)

あきれ顔のシモシモダ副長官だが、彼の役目はあくまでも総理、いや総理を一人前にみせかけようと奮闘するガース長官の補佐。むろん総理の暴走の抑制も仕事の内である。

「総理、どうせ無料の動画です、一般庶民の意見ぐらい自由に」

「いや、国会が開かれる前になんとかするんだー、ぼ、僕も動画を撮るぞ。もちろん僕が主役だ。アニメ顔の女子高生なんかに負けてられるかー」

総理のあまりに突拍子もない発言に目を白黒させるシモシモダ副長官。

(マジか。自分の顔が可愛いイラストの女の子より受けると思ってるのか総理は。総理の支持者のネトキョクウどもだってアニメ絵の女子高生のほうがいいに決まってるだろうに。総理の自宅に鏡がないってのは本当だったのか)

バタン!

まさに棒のように突っ立ているシモシモダ副長官のわきのドアからガース長官が飛び込んできた。

「あ、アベノ総理、な、なにをなさるおつもりで」

「決まってるだろう!僕がフェイク国家などという疑惑を払しょくするんだ!まずは華麗に飛び立つF35.5全機をバッグにカッコいい僕の軍服姿を!」

「総理!操縦できるパイロットは3人です!全機はとても。それにそれぞれ任務に」

総理のお遊びにつきあう暇などないとはいえずに語尾をにごすガース長官。総理は気が付かなかったのか

「じゃあ、あの例のTTPテーテーペーのポスター、僕がミンミン党の奴等に大勝利をおさめたときの選挙ポスターをだな」

ガース長官は頭を抱える。

「そ、総理!あれはTTP反対を掲げていて、現在は、そのTTPに参加を、わが政府は積極的に進めてて、その」

絶対反対を貫いているのは共産ニッポン、ジコウ党ではない。それをさんざん叩かれたことも忘れたアベノ総理にガース長官は頭を抱える。

「じゃ、ロシアとの平和条約に向けて、昨日の会談の宣伝を!四島返還で北方領土問題に決着!」

「そ、そ、総理、基になるニチソ共同宣言は二島返還がもとで。しかも今回の会談では領土の帰属には全く言及はなく…」

プロモ用動画でそんなこと言ったら、なにいってんだ、ドアホアベノ、300億だがなんだかやる約束だけしやがって、しかも二島が帰る保証すらないじゃねーか!とサヨクどもがまた騒ぎ出すにきまっている。

 なんでそんなこともわからないんだーとガース長官は心の中で思いっきり叫んだ。

「じゃ、キムジョンジョンと会談、ラチ問題解決!って言ってやる」

「そ、そ、そ、総理。仲介役の韓国とは今チョーヨーコウ問題やらレーダー問題で、そのレーダーの件はうやむやにしたばかりですし、しかも韓国からまた哨戒機飛ばして難癖付けてきてとクレームがああ」

自分が無理やりコトを大きくし、アメリカのドランプ大統領にも仲立ちを断られ、泥沼になっていることも記憶から飛んでいるらしいアベノ総理。三歩歩けば忘れるどころか、一秒前のことも彼方に消えたのか、総理の消えた記憶を復元する薬がいますぐにでも欲しいガース長官である。

「じゃあさ、いっそ僕の生い立ちを、アベノ総理の半生。大好きなウメさんに出演してもらって。どんなに僕が素晴らしい少年だったかを語ってもらうとか」

ドヘエエエエ。

ガース長官、シモシモダ副長官の顔はムンクの叫び×2。

“ほ、本気ですか、総理は、ガース長官。学校の宿題忘れてウメさんにやってもらったとか。寂しがり屋で泊りに行った家で女の子とお母さんに手を握ってもらって寝たこととかも話す気ですか”

“そ、それだけではないぞ、シモシモダ君。友達にむりやり映画監督ごっこをして命令してたとか、中学生の時ウメさんに添い寝してもらったこともウメさんはウキウキとしゃべってしまうんだろう”

“な、なんでそんな恥ずかしいことをしゃべっちゃうんですか、総理の乳母さん”

“ど、どうも総理と密接な関係だったことが自慢らしいのだが、そのエピソードが総理にとってマイナスになりかねないことを理解していないらしい”

“篤姫の乳母の逆をいくような方ですね。しかし、その、まるでアキエコ夫人…”

“う、まあ、そうだ。やはり養育者と似たような女性を選んでしまうのだろうか”

顔を見合わせ、がっくりと頭を垂れる二人を尻目にアベノ総理はグボウメに電話をかけようとスマートフォンを探す。

(ま、まずい)

「そ、総理駄目です」

「なんでだよ、すぐに撮らなきゃ国会に間に合わないよ」

「きょ、今日はですね、ニンタチの会長と会食を。ほら例の原発撤退後どうするか」

“い、急いでニンタチの会長と連絡をとってくれシモシモダ君”

“は、はい、総理。会長がだめでも誰か適当な人物を”

“うむ、頼む。こうなったらモモタンだのズルノだの芸能関係でも構わん”

急いで部屋をでるシモシモダ副長官。ガース長官は内心の焦りを隠して総理に

「総理、そのような動画制作は広報にお任せください。総理は総理としてやるべきことを」

「わかったよ、財界のトップだのマスコミのやつらだのとご飯を食べて仲良くすればいいんだよね。ところで今日は久しぶりに寿司がいいかなあ」

「は、手配しておきます」

と、機嫌をなおした総理を後にガース長官は部屋をでた。


自室に戻り、

「はあ、ようやく一服、ん?」

机の上の玉露の入った湯飲みと半分は無事だったはずのクロイチゴクリーム大福の皿が消えていた。

「ど、どこに、ま、まさか」

急いで廊下を出て、清掃の女性を捕まえる。

「私の机は誰が」

「え、あのう、副長官のタニタニダさんでしたっけ、長官がいらっしゃらないようだし、お茶に埃が入らないように片付けろって。大福食べかけですよって言ったんですけどねえ」

「で、だい、大福は」

「あ、食べちゃいました。落ちてたのもあんまり汚れてなかったからって他の人が」

(ああああああ、私のクロイチゴクリーム大福があああ)

しかし女性を怒鳴るわけにもいかない、むろんタニタニダ副長官も。いつも机は整理整頓、きちんとしておくようにと言っているのはガース長官なのだ。彼らはその言葉に従ったにすぎない。

(や、やはり今年もゆっくりと玉露と菓子を嗜む暇もないのか)

年明けから続くバタバタに嫌な予感が満載のガース長官であった。


いやあ、アベノ総理のプロモ動画見つつクロイチゴクリーム大福を食べてみたいものです。

笑いすぎて大福をのどに詰まらせないようにしなければならないかもしれませんが。

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