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ネペント戦

「よーし行こーっ!」


完全に目を覚ましたレイラが、大声をあげる。魔物は近くにいないので、問題は無い。朝食を食べ終え、その他の色々も終えたので、いつでも出発可能だ。


「あまりはしゃぎすぎて、後で体力なくなった、とかやめろよ」


「はーい。それで、道への戻り方は?」


「そっちに進んだら行ける」と言って、川がある方向の、逆を指す。


俺たちはそっちに向けて歩き出す。


数十分歩くと、俺が言った通り道に出た。そして、山頂へ向けて道を進む。一晩ぶりに木の影から出て、まともに光を浴びたので、目が少しやられたが、すぐに回復したので、まあ後々影響、とかはないだろう。


「どのくらいにいるのかな。気配ある?」


「あともうちょっと上がったら、森の中に空間があって、そこに結構いるっぽい」


「ふぅん。ま、行こ」


雑いな! しょうがなく、俺たちは登り始めた。



一時間ほど歩いただろうか。ネペントの位置がだいぶ近付いた。


「そろそろ?」


「そうだな。森の中に入るか」


「うん」


森の中に入る。再び光が当たらなくなり、少し気分が下がるような気がしたが、レイラが相変わらず元気なので、なんとか維持ができた。


そして、森の中をしばらく進むと、ちょっとした空間に出た。俺の感覚が正しければ、この辺にいるはずだった。今も、近くに感じている。


「……移動したのか?」


「えぇ……気配は?」


「この辺なんだけど……いや、待て……これは……」


「え、な、なに?」


レイラの顔に恐怖が映る。俺たちは、どうやらハメられたらしかった。気配は近くに、前後左右全てから感じた。その数、およそ二十強。


「ごめん、囲まれた……」


「嘘……?」


「……こうなりゃ、このままやるしかない。ネペントは二本の触手で攻撃してくる。伸びるから、距離が空いてても攻撃してくるぞ。あと、ネペントの作る粘液は、服とか皮膚を溶かす。身体に害はほとんどないけど、場合によったらまずいやつもいるからな」


「わ、分かった……」


俺は剣を抜く。レイラはポーチからロッドを取り出し、敵の攻撃に備える。


しばらく警戒を継続したが、一向に攻撃が来ない。一瞬、俺自身の感覚を疑った。しかし、それが油断となった。


一瞬遅れて気付き、体を後ろに倒す。すると、俺のチェストプレートを掠めて、じっとりと濡れた触手が、通り過ぎた。そして、飛んできた方向へと戻っていく。


「攻撃が始まった。レイラ警戒!」


「うんっ!」


俺は飛んでくる触手を、避ける、たまに剣で切りつけて、ダメージを回避する。レイラは自分でなんとかしているらしく、特に被害は見受けられなかった。


──ネペントの倒し方。なんて言ってたっけ……父さんもネペントには苦戦した、って言ってたし、ノートにも書いてたけど。なんだったか……


「《フレイムショット》!」


「──!」


レイラが魔法を使った。瞬間、火の玉本体がネペントに当たることはなかったが、飛び散った火の粉がネペントの触手に触れ──猛烈に燃えだした。


──火だ!


「レイラ、ネペントの粘液は着火性が強い! 火属性魔法で燃やし尽くすぞ!」


「分かった!」


そうだ。ネペントは燃える。父さんじゃない、母さんが言ってた。昔は父さん、ネペントに苦戦してて、お母さん火属性魔法で大活躍だったのよ、と言っていた。そうだ。そうだった。


俺とレイラは、飛んでくる触手をかわし、"フレイム"や"フレイムショット"で火をつける作業を繰り返す。木のない空間を、炎の赤が囲み始めた。


「押し切るぞ!」


「了解! ──《フレイム》!」


レイラが新たにネペントに火をつける。そろそろ気配の数も減ってきた。


そして、更に俺とレイラで四本の触手を燃やした。そして、攻撃が収まった。気配もなくなり、ネペントが全滅したことを意味する。


「ふぅ……取り敢えず終わったな」


「だね。帰る?」


まだ完全に終わったわけじゃない。念の為ネペントの全滅を確認しなければいけない。


「念の為確認しておこう」


「はーい」


俺が一歩踏み出した瞬間、ブオオォォォ……と音が聞こえた。なんの音だ……?


「──!」


俺は急いでレイラの襟首を掴み、引き寄せた。


「え……? ──!?」


先程レイラがいた場所に、直径一メートルにも至る、太い木の幹のようなものが落ちてきた。それはねっとりと濡れていて、レイラの服に同じ液がついていて、──溶けだした。


「──!」


まずい。まずいまずいまずい。この太いのはネペントのやつ。これはネペントの粘液。それにこの太さのやつは──!


「──っ!」


俺は即座に動いた。まだ触手があるうちに、レイラの服を破き捨て、ローブの粘液のついているところを剣で切り落として、レイラのロッドとポーチと護身用の短剣を持ち、粘液の付いていないローブのあまりを、レイラに巻き付ける。レイラは意識を失っていた。


「──っ!」


触手が動き出した。少しずつ浮いていく。俺はそれを見届けようとせず、レイラをお姫様抱っこを要領に、レイラを抱き上げる。ロッドを通して魔法を使う。


「《ヒール》! 《ヒール》! 《ヒール》!」


ロッドを通すことにより、効果が大体一点三倍になる。それを利用して、レイラの体の中に粘液が入り込むのを防ぐ。


──頼む、死ぬな、頼む。お願いだから、死なないでくれ!

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