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ウルフとの決着

俺が地面を蹴ると同時、ケイルが


「逃げるぞ!」


と声を上げた。俺はそっちはなんとかなる、と信じ、ウルフにだけ集中した。ウルフ四体が俺に近付いてこようとする。しかし、うち二体を火の玉が襲う。レイラの《バーニングショット》だ。しかし、レベルの低い時、または熟練度の低い時は、一度使うとしばらくクーリングに入る。他の魔法は使えるのだが、ウルフに効果のある《バーニングショット》はしばらく使えないのだ。


「──!」


燃えだしたウルフには目もくれず、俺に突進してくるウルフを、今度は横から風が襲う。この攻撃には、ほとんどダメージはないのだが、相手を怯ませるには十分だ。


「ぜあっ!」


風をもろに受けたウルフに、右手の剣で斬り掛る。しかし、流石十五レベというだけあって、あの程度の魔法では、怯みも一瞬だったようで、俺の垂直斬り下しはかわされた。


すぐに体勢を立て直す。瞬間、正面から噛み付いてくる。それを左手のケイルの剣で突き攻撃で受け止める。右からさっき攻撃をかわした奴が、飛びかかってくる。こいつも噛み付きだ。今度は右手の剣をほぼ水平に振って受け止める。剣がガリッと音を立てるが、まあ問題ないだろう。


突きで噛み付きを止めたウルフの、下顎に蹴りをかます。と同時に、左手のウルフの口に対して垂直に突いた剣を下に力をかける。剣のスペックはそれほどでもないが、うまいこと下顎の骨諸共、切り裂くことに成功する。


下顎を切り裂いたウルフが怯んでいるうちに、右手の剣を振り払って、もう一体のウルフの口を切り裂く。そして、左手の剣を頭に叩き込む。流石に致命傷を与えるには至らなかったが、軽い脳震盪を起こせれたようだ。


と思ったのも束の間、下顎を切り裂いたウルフが、横から迫っていた。俺はそいつを、練習で何度も失敗してきた、右足の回し後ろ蹴りで、吹き飛ばす。運良く成功した。といっても、やはりバランスを少し崩してしまい、左膝を着く。


一瞬油断にも思える状態になったが、ウルフは二体ともまともに動ける様子ではない。──ここまでおよそ一分。まだレイラが魔法を使えるわけがないので、もうしばらく耐えなければいけない。しかし、そこまで難しいことでもいないように思えた。レベル一の初心者冒険者がなんだ、と思うだろう。しかし、俺には知識がある。こいつらの動きは、大体把握しているのだ。例えレベル一でダメージ量が少ないとしても、十分抵抗できる。


俺が立ち上がった瞬間、脳震盪から回復したらしいウルフの片方が、噛み付きや引っ掻きではない、新しい攻撃を仕掛けてきた。突進だ。意表をつかれ、一瞬動きが遅れてしまった。ウルフが突進をしてくるのは、実に珍しいのだ。しかし、逆に意表をつかれたのが幸いしたらしく、足を滑らせ、横転してしまった。それが上手いことウルフの突進の攻撃範囲から外れ、爪が軽く皮膚に触れただけで済んだ。


俺は受け身の容量で、落下ダメージを減らし、すぐに立ち上がる。レイラの準備はまだらしい。集中し切っていると、数分が数十分に感じる。その分、レイラの待ち時間が長く感じてしまう。


下顎を切り裂いたウルフが、またもやこいつもか、と思うように突進してくる。俺に突進が効くと判断したらしい。しかし、速度はほとんど変わらず、勢いがある以上、方向の転換もしない。慣れていない攻撃は、初回以降はただの悪足掻きでしかない。


 俺は迷いもなく右にかわし、瞬間に“フレイム”で火をつける。“バーニングショット”に比べれば弱いが、燃えてしまえばこっちのもんだ。


 もう一体は、さっきの燃えたやつを見て、突進も危険と判断したのだろう。動かない。


「いけるよ!」


 さっきより幾分落ち着いたらしいレイラが、俺にそんな言葉を投げかけてきた。しかし、さっき燃えてるほうのウルフが突進してきたせいで、二体の距離が開いてしまっている。


「大丈夫、狙えるから!」


 しかし、そんな心配は無用だったらしい。


「頼む!」


 俺がそう叫ぶと同時、レイラが


「《バーニングショット》!」


 魔法を唱え、二つの火の玉が俺の左右めがけて飛んでいく。そして二体のウルフが、小爆発に巻き込まれ、燃えだした。

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