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登山道

俺達はやっとカカリ山に入った。ウルフ以降、魔獣が襲ってくることは無かった。登り始めてからは、約一時間くらい経っただろうか。昔父さんと登った時は、七時間くらいかけて登った。つまり、まだ山の七分の一程度しか登っていない。


「……長い」


「しょうがないよ。この山、標高……何メートルだっけ?」


「千三百くらいじゃねーの……」


「そかそか……どの辺にネペントっているのかな?」


「中腹ってことは、半ばだろ? じゃあ……あと二三時間くらい登れば」


「かなぁ……」


この山は、どちらかというとなだらかな山だ。そして、緑豊かで右も左も木々で囲まれている。十数年前に整備された道を通っているが、こうも木に囲まれていては、少し暗い気分になりかけるものだ。それに、空が見えないせいもあって、現在の時間もつかみにくい。


「ねぇ、魔獣の気配は?」


「気配って……俺索敵能力ないんだけど」


「さっきウルフに気付いたじゃん。分かるんでしょ?」


「まあ一応は……気配はあるけど、襲ってはこないと思う。近くにはいない」


「それはよろしいことで」


「それよりさ。お前が領主の娘っていうの、本当なのか?」


「本当だって。お父さんにもお母さんにも、そこまで似てないけど……」


 確かに、領主は少し太り気味だし、その奥さんもレイラとは似ても似つかない。本当に家族なのか、とも思ってしまう。


「まぁ、そんな嘘つくわけないか……ストップ」


「……魔獣?」


「……人だな。多分、五、六人はいる。一応隠れよう」


 俺とレイラは、寄り添い合って道の脇の木の陰に隠れる。息を殺して、その人が通り過ぎるのを待つ。そして、木の脇から覗いていた俺が見たのは——


「——ちょ」


 俺は道に飛び出した。レイラが驚くが、無視だ。理由は、向こうから歩いてくるのが山賊だったらいけないと隠れたが、実際は俺の知り合い——冒険者学園の同級生だったからだ。


「ケイルじゃないか! どうしたんだよその傷」


 俺がケイルと呼んだ少年は、左腕がなかった。赤髪の彼は、髪を乱して、学園支給の装備をボロボロにしていた。未だになくなった左腕の切り口から、血が滴り落ちる。


「レイラ、回復できるか!?」


「わ、分かった……知り合い?」


 やはり気になるのだろう。俺はレイラに大まかにケイルと他五人との関係を話す。全員、かなりボロボロで、満身創痍といった感じだった。


「じゃあ、回復するよ……《ヒール》」


 傷が塞がったのか、血が落ちることはなくなった。


「ありがとう……」


「何があったんだ? お前ら、——ケイル以外はよく知らないけど、結構学園でも上位だったはずじゃ」


「そうなんだけどさ……実はな、」


 ケイルは思い出すのもつらそうに語りだす。他の四人も、苦そうな顔をする。


「俺たち、七人(、、)でスライム討伐をやってたんだ。でも、途中でレベル十五くらいのウルフが五、六体現れて……俺たちも傷を負って、一人——リーマルが死んだ」


 リーマルは聞き覚えがあった。学園で上位十人に入る優等生で、冒険者として将来有望とされていた生徒だった。俺も何度か手合わせの経験があり、勝率は俺が七割くらいだった。ちなみに俺は学年一位だ。レベルは最下位だろうけど。


「そっか……一体くらいなら問題ないけど、六体か……」


「一体ならって……まるで一度倒したみたいな言い方するな……」


「まあ、実際倒したからな。立ち話もなんだ。どっか空き地探して、そこで話そうぜ」


 そして、俺達八人は空き地を探し始めた。ちなみにケイル以外の五人は、マルリア、ソーマ、フェリア、リューセン、フレスという、リーマルとケイルも含めて、男四人、女三人の七人パーティーで、全員聞き覚えのある、学園上位者ばかりだった。

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