幼女レイラ
ここは冒険者ギルドの二階。俺は恥をかいて俯きがちなまま、剣を右手に持って、クエストの掲示板まで来ていた。
「えーと……“グリフォンの討伐”、“シルバードラゴンの討伐”、“ファイアーバードの討伐”……なんだよこれ、高難易度しかねえじゃねーか!?」
「すみません。簡単なクエストは既に全てなくなってしまって……この前の冒険者学園の卒業生が、根こそぎ受けて行ったので……この中だと、“ネペントの殲滅”が一番低難易度かと」
「ネペント……」
ネペントとは、植物型の魔獣のことである。二本の触手を持っており、それに加えて、口から吐き出す毒液で攻撃をしてくる。その液を喰らうと、装備や皮膚が溶けてしまう。
「なんだい少年。クエストが難しくて、受けれないのか?」
少し上からな言い方で話しかけてきたのは、身長160にも及ばない俺よりもちっさい、それこそ冒険者学園低学年くらいの幼女だった。金髪碧眼で王族のような雰囲気を持っている。
「ここは冒険者ギルドだよ。君、まだ十三歳じゃないよね?」
俺は幼女の質問には答えず、そう言った。すると幼女は、少しイラっとしたような顔をして、
「私は立派な冒険者! ほら!」
そう言って見せてきたのは、さっき俺も受け取った腕輪だった。そこには、十三とレベルが表示されていた。
「嘘……こんな子供が、冒険者……?」
「子供子供言うな。それで、クエスト、私も手伝ってあげるけど、どうなの?」
「いや、まぁ……人手があるのはありがたいけどさ……」
「じゃ、決まりね。お姉さん、さっきのネペント、レイラと——君名前は?」
「レンだけ……」
「レンで」
「ど」と繋げたかったのだが、遮られた。というか、勝手に決めるな。
「よし。これでいいね。じゃあ、後でね。準備とか色々。先輩だから、ちゃんと敬うんだよ〜。あ、ちなみに──私はレイラ。よろしく」
「はいはい……俺はレンだ。よろしく」
こうして、行き当たりばったりで出会った幼女レイラと俺は、一緒にクエストに行くことになった。
「あ、あと──集合場所は東門ね」
♢
俺は一度、家に帰っていた。
「ただいま〜」
「お帰りお兄ちゃんっ!」
「おう、ただいまエミ」
俺は駆け寄ってきたエミの頭を撫でる。
こいつは俺の妹のエミリー──通称エミ。父さんと母さん譲りの茶髪をツインテールにして、目がくりっと大きい。目の色は両親は茶色なのに、どちらかというと赤に近い。
「母さん。俺今からクエスト行ってくる」
「あら。早速ね。気を付けてね」
「大丈夫。なんか成り行きで仲間出来たから」
「お兄ちゃん、行っちゃうの……?」
「ああ。大丈夫。ちゃんと帰ってくるから。俺には父さんが付いてるんだから」
「絶対だよ! 帰ってこなかったら許さないよっ!」
「分かってるって」
俺はもう一度苦笑いしながら、エミの頭を撫でた。