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夕食の会話

俺は家に帰り、裏にある父さんの墓の前にしゃがんで、目を閉じて手を合わせていた。


目を開けて、一人呟く。


「父さん。今回の俺、ちゃんと冒険者出来てたかな? レイラを、守れたかな? これから先、一冒険者として、やって行けるかな……」


しかし、当然と言ってもいいが、父さんからの返答はない。当たり前だ。父さんは既にこの世界にはいない。生まれ変わったとか、転生した、とかならば、まだ救われる気もする。けど、この世界はそんな単純じゃない。"転生者"なんて呼ばれる人もいるが、俺は転生とか信じていない。伝説の剣士も、正直オカルトだと思っている。


でも、やっぱりちょっとは信じたい。父さんが、ただ死んだだけで終わっていない、と。


「お兄ちゃん、ご飯だよっ!」


家の影からひょっこりと姿を見せて、妹のエミが俺を呼ぶ。


「分かった、すぐ行く」


そう言って、俺は立ち上がる。もう一度手を合わせてから、エミが消えた方へと向かう。その時、『──お前なら大丈夫だ』と、声がしたような気がした。もう一度墓を振り返り見るが、もちろん父さんがいるわけもない。今のは、俺の中の父さんが言った、幻聴でしかない。


「…………行くか」


そして、家の中に入る。


食卓の上には、至って普通な夕食で彩られていた。ただ、いつもと違うのは──


「今日はレンが頑張ったから、豪華にお肉買ってきちゃった〜」


などと言って、母さんが食卓の上に、家の中で一番大きな皿に乗せられた、鶏の丸焼きを置いた。俺とエミは、「おぉ〜……」と目を輝かせる。これだけの料理は、今まで片手で数え切れるほどしか食べたことがない。


「「いただきますっ!」」


俺とエミは、そう一言だけ言って、鶏肉にがっついた。



ものの十分程度で、肉はなくなった。あとは残りの野菜だの主食の米だの、それらを食べる。


「にしても、レンに初日から仲間が出来るなんて、お母さん思わなかったわよ。どういう出会いしたの? 山の中で迷ってるのを助けたの?」


「そんなかっけぇ感じじゃねーよ。母さんが誕生日まで冒険者登録させてくれなかったせいで、簡単なクエストがなくて困ってたんだよ。そんだら、あのチビが話しかけて、無理矢理あのクエストを受けさせられただけだ」


隠すことは無く、そのまま伝える。


「そういえば、レイラちゃん、お母さんが最初見た時、布に包まれただけだったけど、見たの?」


「……見たって、何をだよ」


「色々」


「食事の時にエミもいるところでそういう話やめてくれないかな……」


俺はジト目で米を食いながら答える。当然の言い分だと思う。


「エミだってもう九歳になるんだから、こういうことも学園で聞いたりしてるわよ。問題ない問題ない」


「気分の問題だよ!」


エミは何故かさっきから一頃も喋らない。寝ているのかと思って確認するが、単に飯にがっついているだけだ。


「はぁ……一応言っておくが、見たかもしれないけど、見てない」


「なによ、はっきりしないわねぇ。将来お嫁さんになるかもしれない子なのよ?」


「なんねーよっ! 勝手に候補に入れるなよっ!」


「分からないわよぉ〜。だって、お父さんとお母さん、本当のことを言うと、初めてのクエスト、一緒に受けたんだからね?」


「……マジで?」


聞いたことなかった。初耳だった。


「マジよ。だから、レンもあるかもしれないじゃない。それで、はっきり言うと?」


「……見たは見たよ。でも、ほかのことで頭いっぱいだったから、思い出せないよ」


「そう」


おい。あんだけ熱心に聞いといて、その反応はねぇだろ。


「お兄ちゃん、お今日一緒お風呂入ろー!」


「……はぁ。はいはい。一緒に、ね」


さっきまでレイラの色々を見たか、という話をしたせいで、少し意識をしてしまったが、相手はレイラよりも一つ年下の妹だ。気にしなくていいだろう。


その夜、俺はエミと一緒に風呂に入り、一緒に寝た。一晩いなかったせいで、寂しかったらしい。

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