表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/97

ネペント討伐作戦

「あぁ……失敗すれば、俺もお前も、命はないかもしれないけどな……」


「教えて。それで勝てるなら、それでいこ」


 俺は迷った。もし、これでレイラがいこう、と言ってしまえば、あまりにも無茶すぎるのだ。


「……分かった。言うには、言う。——ここは、さっきから攻撃が来ていないから、多分ネペントの攻撃、それか索敵的なやつの範囲外なんだと思う。それで、だ。俺が範囲内に入って、俺がネペントの注意を引き付ける。その間に、あいつの口の中にお前が火炎球を放り込むんだ。中からなら、あいつの樹皮でカバーされて、外が燃えることはない。それに、体内が消滅して、ネペントは死ぬ。成功すれば俺らでも倒せるかもしれないけど、危険がデカ——」


「それでいこ」


 やはり、そう言うか……予想はしていた。でも、


「お前、距離もあるし、ここからじゃ見えないんだぞ? 提案者の俺が言うのもなんだけど、ネペントの口に入れるなんて、運に任せても入りっこない。分かっていってるのか?」


「うん。でも、それしかないんでしょ? “バーニングネオ”なしでやるには」


「そ、そうだけど……」


 やはり、ここは逃げて冒険者の討伐隊が来るのを待つべきだ。そう言いたかったのだが、レイラの目は真剣そのもので、あまり自己主張をしてこなかった俺には、止めれそうもなかった。エミはまた別の意味で止めれないが、こっちの目は別種の意味で止めれない。止めても無駄だ、と分かっている。何故なら、


「……あの時の俺、こんな目してたんだな……」


 リザードマンを倒した時の俺は、まさに今のレイラのような目をしていた——らしい。ケイルたちに聞いただけなのだが、あいつらの言ってた目と、雰囲気が似ている。


「なんて?」


 でも、やっぱり子供なんだな。この年代のやつは、みんなこんな目をするのだろうか。


「……分かった。でも、失敗が許されない方法だ。外したらこの辺一帯、焼け野原で、俺らも焼死体だ。いいな?」


「大丈夫。信じてよ」


 信じれない——そう思ったが、今のレイラなら、できるような気がしてしまうのが、本当におかしなものだ。やはり、俺ができたのだから、同じ目をしているこいつなら——とかいう、同族意識みたいなことだろうか。笑えてくるな。


「よし。そうなりゃ作戦決行だ。お前はここから動くなよ。じゃねぇと、どこからあいつの範囲か分からない。いいな?」


「うんっ」


 俺はレイラを置いて、走り出した。今までの十三年間で、一番の賭け勝負だ。



 俺はネペントのいると思われる場所に向かって、走った。すると、今まで二度聞いてきた、ブオオオォォォ……という音が、また聞こえてきた。


「来たか……」


 俺は走る位置を三メートルほど右にずらす。どこを走っていようと、どのみち木ばかりなので、変わらない。


 そして、ダァァ——————ンという音と共に、大量の木を叩き潰しながら、太いじっとりと濡れた触手が叩きつけられた。俺の一メートル弱左に。


 俺は方向を転換し、右に向けて走った。まっすぐ向かっていては、意味がないのだ。それに、俺の役目はネペントの注意を引くこと——戦うことではないのだ。ネペントの攻撃があったことにより、既に範囲に入っていっることを確認する。


「頼んだぞ、レイラ……!」


 俺は走りながら小さく唸るように言った。



 私は、脇に置いてあるロッドを拾い上げる。付いていた土を落とし、どこも折れていないことを確認する。気絶していた間に、服が買えられていたのに気付き、


「……レンのやつ、何も見てないよね……」


 若干顔を赤くしながら、後で問い詰めようと心の中で決めた。


 ポーチも腰につけ、短剣はつるす場所がないので、ポーチに入れる。


「よし。あとはレンの作戦通りにいけば……」


 ——ダァァ——————ン。轟音が私の耳を打った。しかし、レイラのところまでは攻撃は届いておらず、今のはレンが範囲内に入ったことを教えてくれた。


「……レンは、ちゃんと役割を果たしてくれてる。私も、やらなきゃ」


 ロッドを両手でもち、音がした方に向く。しかし、空は木に覆われて一切見えず、狙おうにも狙えない。どうすればいいの……?


「おや。まだ君はここにいたのか」


「だ、誰……」


 突如聞こえたアルトボイスに、思わず視線を向ける。


「ボクはしがない旅人さ。それで、何をしているだい?」


 私は、しがない旅人と名乗った、帽子を深くかぶったその人に、レンの作戦を説明した。


「ふむ、なるほど……難易度は高いけど、合理的な判断、かもね。あのネペントには、普通の攻撃を当てようなら、飛び散った粘液で即退場だ。彼の判断は、間違ってはいないよ。それに、樹皮どうこうも、正しい。——流石、あの人の子供だ」


 最後の方は、小さくてうまく聞き取れなかった。しかし、私は問い詰めずに、何か方法はないか聞いていみる。


「そうだね。……なら、ボクが道を作るよ。そこに、君が火炎球を放り込めばいい。あとは、勝手に流れていく。面白そうじゃないかい?」


「そ、そんなの……できるの?」


「ああ、できるとも。けど、君が自分ひとりでしたい、と言うなら、手出しはしないよ。他の作戦を考えよう」


「お、お願いしますっ! やると言っちゃったので、失敗はできないし……成功するなら、確実にいきたいので!」


「分かった。それじゃあ、始めよう」


旅人は、レンが走っていった方向に、手を広げて向けた。どうやら、ロッドは持っていないらしい。


「《アクア・ロード》」


そして、旅人の手から、ほぼ透明の、水の道が現れる。


「す、すごい……」


持続魔法は、かなり燃費が悪い。どんどん魔力は削れるし、失敗すれば大損だ。けど、旅人に迷いはない。だから、私も迷いは──いや、レンに宣言した時から、迷いなんかない。ずっと、勝てると思ってた。だから、


「さぁ、今だよ!」


旅人の掛け声と同時に、


「《フレイムショット》っ!」


私のロッドの先から、火の玉が飛んでいく。複数飛ばす必要は無い。今は一つにして、威力を底上げする。敵は一体だけなのだから。


──お願い!


そして、山中を何かの唸るような重低音が鳴り響いた。ドゥワァァ──────ンッッ! と、音が鳴り響く。ネペントが倒れたのだ。そう、つまり──


「──成功、した……?」


「みたいだね。よかった」


旅人が呟く。私は、しばらく呆然として、旅人の存在すらも忘れていた。



俺のすぐ横に、何かが──いや、間違いなくネペントが倒れてきた。その巨体は、高さ二十メートルを越していただろう。結構距離をとっていたつもりだったが、それでもネペントの体の半ばしか見れない。その体は、ぶっとい蔦三本が、縄のように捻れているようだった。口があるかどうかは、正直賭けだったが、あったらしい。


「レイラのやつ……本当にやりやがった」


俺は、ネペントは放置して、レイラの元に向かうことにした。


逃げ回って十五分ほどだった。しかし、戻るのは歩いても十分程度で着いた。気配でレイラと、謎のもう一人の気配を察知しながら、近付いて行った。その人物に、心配はしてなかった。何故なら、その気配がさっき会った謎の旅人──そして、毎日のように会っているあの人と同じだったからだ。


「レイラ!」


「レン!」


俺が近寄ると、レイラが抱き着いてきた。


「──」


俺が驚いていると、レイラは自分が何をしたのか気付いたのか、急激に紅くなって、俺から離れた。


「ご、ごめん……嬉しくて、つい……」


「いや、いいんだけどさ。にしてもお前、よくやったな。お前があの時、やろうって言ってくれなきゃ、こうはならなかったぞ」


「ううん。私だけじゃない。レンがこの案を思いついたから。それに、旅人さんがいなきゃ、当てれなかったし……」


レイラが件の旅人を話題に出したところで、俺はその人に視線を向ける。


「ありがとうな」


「──!?」


旅人は少し驚いた表情を見せた。おそらく、俺が砕けた言い方をしたからだろう。しかし、驚くのはまだ早いぜ? 俺は、感謝の言葉に、こう繋げる。


「母さん」


「────」


驚いた表情のままだった。レイラまでも、驚いている。まあ、そりゃそうか。こんなところに俺の母さんがいるなんて、誰も思わねーよな。


「……何故そう思ったか、参考までに聞いていいかな?」


明かさないつもりなのか、アルトボイスのまま旅人──母さんは聞いた。


「俺が第六感持ってること、知ってるんだろ? 十三年間も一緒にいたんだ。それに、特訓にも付き合ってくれた。母さんの気配は、よくよく感じれば、感じ分けることくらい出来るよ」


俺は苦笑混じりに答える。実際、最初はわからなかったのだが、茶色の瞳と、気配の感じでなんとなく予想出来たのだ。


「……流石、あの人の子ね。騙せないわ」


声のトーンが、急にメッゾソプラノになる。遂に正体を現した、とでもいうか。レイラは案の定、驚いている。


「つか、なんで母さんがいんだよ。エミはどうした?」


「今日登ったのよ。エミは学園。母さんだって、この山、何十回何百回って登ってるんだから、ここまで来るのに、二時間もあれば十分よ」


「……俺らの苦労は一体……」


「まあ、いい特訓になってよかったじゃない」


しかしまあ、旅人が母さんなのだというのなら、変な回復薬とか持っててもおかしくはないか。この人、村じゃ結構名の知れた冒険者だったしな。


「それじゃ、ネペントも倒せたし、帰りましょう」


「……なんであんたが仕切ってんだよ」


母さんの言葉に、ツッコミを入れておく。レイラはずっと頭にビックリマークとクエスチョンマークが交互に浮かび上がっていた。

久しぶりに後書き書きます。

最近は書くのが一定になってきてます。「タイムトラベル、異世界転移、化身、魔法──俺の人生はどれだけ変わってしまうのだろうか」なんですが、なんというか、やはり処女作ということもあって、あまり上手くかけた自信が無いんです。いや、自分が面白いと思うように書いたから、一応満点だけどね? けど、最近色々アニメとか見てるうちに、ラブコメの方と、今書いてるレベル一のストーリーが出てきちゃったんですよ。

というわけで、レベル一でレンが央都に行くまで、しばらくレベル一を書き続けるつもりです。ラブコメはその後に書いていきます。タイムトラベルはぁ……まあ、気が向いたら……w

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ