ようこそ!新たな【異世界】へ!!
この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体・職業とは一切関係ありません。
「なに?そんな訳があるか!なぜ出来ない!?」
俺は思わず声を荒げた。こんな事あってたまるか・・・
「そんな事言われてもねぇ・・・」
目の前に佇む男は神妙な面持ちでこちらを見つめている。
そんなやりとをしていると、いつのまにやら周囲を囲まれてしまっていた。
「ちくしょう!よりにもよってちくしょう!」
なぜこんな事になってしまった?今までずっと完璧なストーリーを歩んできたはずなのに…
・・・2年前、異世界にて
「食らえチート魔術!」
「ぐわー」
「キャー素敵抱いて!」
うーん、この頃はまだ問題無かった。じゃあその後か?
・・・1年前、麻雀界にて
「まーた、常盤明がやってしまいました!!おめでとうございます優勝です!」
実況の男がひきつった顔でヤケクソ気味にそう告げると、対局者達が叫び出す。
「ふざけるな!ただのイカサマだろ!!」
「まともに麻雀しろ!」「まるで将棋だな」
また弱者共が吠えているな、と一蹴し、会場を後にした俺のもとにとある男が駆け寄ってきた。
「明くん、すこしいいかね?」
「これはどうも会長、今回も楽勝すぎて退屈な対局だったよ」
この男は俺が所属しているプロ麻雀連盟の会長だ。
「賞金はいつもの口座に振り込んでおいてくれ」
俺はそう会長に伝えるとその場を後にしようとするが、それを会長は、俺の肩に手を掛け引きとめる。
「いや、明くん・・・君はクビだ。前々から思っていたがあれは麻雀ではない。世間も私も君をプロとは認められない。麻雀界を追放だ」
「・・・え?」
うーむ、ここからだな。そうか、1年前のあの日、麻雀界を追放された俺は職を失い、今日まではなに不自由なく生活してきたが、今まで稼いだ賞金がついに底をついたのだ。
そして、今俺が置かれている状況はと言うと、クレジットカードの残高が無く、飲食代が支払えないで店と会計で揉めていて、店員ににらまれ、ギャラリーが人垣を作ってしまっていると言う訳だ。
こうなってしまっては仕方ない・・・。使うか?嶺上開花を・・・
俺が右手に魔力を集中させようとしたその瞬間
突如、一人の女性が割って入ってきた。
「あ、あの!私の知り合いなので支払いは私が!」
そう言うと、その女性は手に持った財布から現金を出すと店員に明の飲食代を支払った。
「・・・誰?」
その後、そそくさと店を後にした二人は店から少し離れた公園のベンチに腰を下ろした。
「助かったよ、ありがとう」
その女性に礼を告げると、彼女は
「いえいえ、困った時はお互い様ですから・・・」
そう言いながら微笑んだ。
「金は必ず返すよ、・・・いつになるか目途が立たないけれど。」
そう、金を返すどころかこれからの生活の目途も立たないのである。どうしたものか。
「大変そうなんですね・・・」
「ああ、そうなんだ。実は、気がついたら職を失っていてな。この様だ」
無職と聞くや否や、彼女は思わずといった様子で立ちあがり言った。
「それでしたら!お力になれるかもしれません!」
「なに、本当か?詳しく聞かせてくれ!」
「はい、実は私は・・・」
翌日。俺は彼女、槇島 読子から聞いた住所まで来ていた。
「ここが、彼女が言っていた【施設】か・・・」
正面の入口前に立っていた人物が俺の到着を待っていた様で、話しかけてきた。
「おはようございます。あなたが今日からの新しい職員さんですね、私はこの施設の管理をさせていただいている者です。こちらにどうぞ。さっそくですが、業務に付いていただきます。なにせ職員はあなた一人なので、すぐにでも業務に付いていただかないと1分1秒が惜しいですからね。」
そうまくし立てるように管理人を名乗った男は俺の背中を押す。
「おい、どういう事だ。色々ツッコミ所はあるが、俺一人?彼女、槇島 読子はどうした?」
「え?槇島ですか?彼女は昨日付けで退職なされましたよ。あなたは彼女の後任として来たのでしょう?おしゃべりはこれぐらいにして、さぁ中へどうぞ。」
理解が追いつかぬまま押し込まれ、建物の中に入るとその先に待っていたのは・・・
建物の外観からは想像がつかないほどの荒れ様。フローリングはめくれ、壁紙は破れていない所を探す方が難しい。
そして、その荒れ果てた建物内を徘徊する無数の老人
あたりを飛び交う世の物とは思えぬ奇声とうめき声。あとうんこ。
「こ、これが【老人介護施設】。【異世界】の【ダンジョン】にも引けを取らない凶悪さだ・・・」
果たして、この【老人介護施設】で明は無事に【老人】を【介護】できるのだろうか。
「凡人なら間違いなく無理だろうが、俺にはこいつがある!」
「いくぞ!!!嶺上開花!!!!」