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「ホワイト・メガブラスト!!」




 超自然の光を帯びた光忠をユニコルオンは軽々サドルシールドで受け止める。次に来るのは、おそらく衝撃波。

 ヘルガーが喰らって吹き飛ぶような代物を、私が受ければ大惨事だ。当然喰らうまいと左手に電磁フィールドを発生させた。


「バッシュ!」


 ユニコルオンがそう叫ぶ直前、私は左手の電磁スラスターで無理やり体勢を変更して避けきった。すれすれで避けた衝撃波が、コートの一部を千切り取る。


「おっそろしいなぁ!」


 本心からの叫びだ。すぐ隣に、死。別に戦闘狂じゃない私は心底怖ろしくてたまらない。

 けど相手につけ込む隙を与えたら負けだ。だから虚勢を張って笑顔を形作る。怯えているからチャンスと思われるよりも、戦闘狂だとドン引きされる方が遥かに有利だ。


 振るわれる一閃一閃が死の境界。一歩、否半歩間違えれば黄泉への超特急。そんな死線をデコピン感覚でくり出してくるヒーローの、なんと怖ろしい事か。


「聖騎士甲冑術、壁通し蹴り!」


 テイルセイバーを潜り抜けた私へと、ユニコルオンの前蹴りが放たれる。受ければ骨折、もしくは内臓破裂か。そして攻撃を回避するために既に無茶な体勢を取っている私では、受けざるを得ない攻撃か。

 無論、一人ならば、の話だが。


「忘れてねぇかよ!」


 ユニコルオンの背後で、灰色の風が煌めく。疾風の如く迫ったヘルガーへ対応するために、前蹴りを中断して振り返るユニコルオン。

 鉤爪はテイルセイバーで受け止められたが、今度は私が空いた。超電磁刀をユニコルオンの背に向けて叩きつける。

 が、流石に許してはくれなかった。ガキリと音を立てサドルシールドに阻まれる。


「バッ……」

「させっかよっ!」


 私に追撃をかけようとしたユニコルオンへと、ヘルガーが鉤爪の第二撃を繰り出す。ユニコルオンはそれに対応するために私への追撃を止めざるを得なかった。その隙に私はシールドの前面から離脱する。


 ……拮抗状態だ。基礎スペックからして違うヒーロー相手に二人がかり。対応は辛うじて出来ているが、決定打が無い。加えてユニコルオンの一撃一撃が重い。特にサドルシールドから発生する衝撃波は、私は愚かヘルガーですら何度も耐えられるものではないだろう。

 埒を開けねば、生き残れない。そう考えた私は刀を一度鞘に仕舞った。

 戦闘態勢を解いた訳ではなかった。現に足はユニコルオンを向き、手は刀の柄から離れていない。

 腰を落とし、目を眇め狙いを定める。


「!? 何を……?」

「余所見とはいい御身分だなぁ!?」

「くっ!」


 私の気配が離れたことをユニコルオンは察知したが、ヘルガーが猛攻を繰り広げて来たために私の様子を確認できない。いくらユニコルオンといえど元ローゼンクロイツ最強の怪人を相手に振りきることは容易ではなかった。ナイスフォローだ。流石は私の部下といったところか。


 集中。両掌に、紫電を集める。大事なのは、一極に集中させた電気を拡散させず、己の身に向けないことだ。ある程度チャージできれば、自然と破壊力は出る。

 刀へと集う力を感じる。私の瞳、腕、刀から漏れ出る紫電の輝きが、荒れた店内を照らしていく。

 どれくらいチャージすればいいのか目途が立っていないが……このくらいでいいだろうか。

 まぁ、考えるのは後でいいだろう。どうせしくじれば死ぬだけだ。


 鞘に収まった刀を手に、一層深く腰を落とし身体を捻る。

 俗に言う、居合いの構え。


「ヘルガー!」

「やれ!」


 私の警告の声に、一瞥もせず答えるヘルガー。

 運が悪ければ巻き込むかもしれない。だが躊躇してはどの道勝てない。

 だから私は、光忠を引き抜いた。


「――紫電抜刀超放電メガブラスト!!」


 抜刀の勢いと共に、放たれる大量の紫電。

 そのほとんどがすぐに散って周囲の壁や床を傷つけるが、一部は狙い通り、ユニコルオン目掛けて飛んでいく。

 咄嗟に盾を構えその電撃を受けたが、私のほとんど限界値の電力を込めた雷撃はそのままシールドを打ち砕いた。


「なっ――」


 盾を食い破った電撃はそのままユニコルオンを襲う。以前私の全力を耐えたユニコルオン。しかし収束した紫電はまるで槍のように突き刺さり、その身を焼いた。


「がっ、があああああああ!!」


 放電を終え、紫電の輝きが全て散ったそこには、煙を上げてテイルセイバーを杖のようにつくユニコルオンの姿があった。


「ぐっ……がはっ……」

「まだ意識があるのか、怖ろしい奴め」


 ヘルガーが吐き捨てる。

 ユニコルオンへと雷が着弾する寸前飛び去ったヘルガーも身体から煙を発しているが、軽症だ。私の飛び散った雷を浴びたに過ぎない。


 ふらつきながらユニコルオンがバイザー越しに私を睨みつける。


「今のは……ビートショットのメガブラストか」

「そうだ。怖ろしい威力だったからな。真似させてもらった」


 とはいっても、再現はほとんど出来なかったけどね……。

 エネルギーを一点に集める媒体に光忠を使用してチャージには成功したけど、放電時にチャージした雷の大部分は散ってしまった。想定の威力の半分以下だ。これではビートショットが私目掛けて放ったノーマルブラスト程度だ。

 だがそれでも、ユニコルオンに痛撃を与えることには成功した。


「観念するがいい、ユニコルオン。ヒーローばかりが学習するという訳ではないのだよ」

「……あぁ、俺も少々見くびっていた。それは認めよう」


 自嘲的なユニコルオンの言葉。しかし諦めたようには見えない。


「幹部級二人が相手なのだからな」


 そのユニコルオンの態度に私の脳裏で警鐘が鳴り響く。

 なんだ……? 何かヤバい!?


「街中ゆえに、本気を出さなかった俺の落ち度か」

「ヘルガー! 殺せ!」


 放電の反動で動けない私の代わりに、ヘルガーに指示をする。しかしヘルガーも私の雷を少なからず受けた影響で動きが鈍い。


 ユニコルオンの周りに、雪のような白い光が現れた。


「見せてやろう。一角の騎士、その必殺技――俺のメガブラストを!」


 光が収束し、弾ける。その衝撃波で私は転び、ヘルガーも竦む。

 そしてユニコルオンの手の中には、白い柄を持つ美しい槍が握られていた。

 矛先は、まるで黄金の一角だ。

 まさにユニコーンの、槍。


「輝け我が魂! 一角の加護よ、悪しき敵を灰と滅ぼせ!!」


 ユニコルオンが掲げた槍が再び光を発する。しかしその光は美しさよりも、収束した日の光の如き暴力的な気配を持っていた。

 光が渦巻き、形を為し、そして力を得る。

 それは、純白の破壊の竜巻。


「――いざ! 白域(はくいき)を為さん!」


 ユニコルオンの言葉が、その破壊を解き放つ。

 最早、生き残る者は我以外に必要ないと。




「ホワイト・メガブラスト!!」




 私の視界は、轟音と共に光に埋め尽くされた。






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