プロローグ 始まりは星の綺麗なそんな日。
プロローグは簡潔に。
異世界転生。
最近よくそう言った物語が多くある。
平凡な高校生や中学生が神の悪戯か異世界に飛ばされる話。
よくある話だが、個人的には嫌いじゃない。
だって異世界だぜ?夢が広がるよな?
俺だって1度か2度想像したことはある。
自分が異世界で活躍してハーレムになってモテモテになるなんて、最高じゃん?
だけど……実際異世界になんて行きたくない。
別に今の世界も不況だ何だ言われてるけど、この世界から違う世界に行きたいなんて思わない。
アニメや漫画の続きも見たいし、なによりこの世界で培った思い出がある。
それを全部丸投げて、異世界に行ったって嬉しいなんて思えない。
それに、器が小さいと思うかもしれないが、俺は家族が好きなんだ。
父さんがいて母さんがいて、姉がいて、ポチもいる。
そりゃ、家族なんだから喧嘩もするが、一生離れて過ごしたいとも思わない。
だからせめて。
せめて……異世界に行くことがあるなら家族と一緒がいい。
……なんて、そんな非現実な事起きるはずもないけどな。
____
「……なぁんでこんな事になったんだろうな」
「さあね。神様のせいなんじゃない?」
「いやいや、姉ちゃん。流石に楽観としすぎじゃない?これどう考えても非常事態だよ?」
「こんなこと簡単に受け入れないんだから、ヤケよヤケ」
「こらこら。新太も舞も喧嘩しない。こんな時こそ冷静になりましょ。ね、あなた?」
「か、母さんの言う通りだ。新太も少し落ち着きなさい」
「そうは言うけどよ父さん」
1度首を回しそこらを確認する。
「どう考えても落ち着ける状況じゃなくね?」
俺たち家族5人。俺、姉、母、父、それと犬は今、山奥にいた。
少し考えて欲しい。家族で家の外に出て、星を見ていたらいつの間にか山奥に移動していた。
……いやいやいや。どう考えてもおかしいよね?
「本当にどうなってんだよ…これ」
頭が抱えたくなったその時、1つの声が聞こえた。
『ようこそ皆様。初めまして、神様です』
声と共に現れたのは、えらく派手な見た目の女性は笑顔を浮かべて近づいてくる。
髪は金髪、服は真っ白。背中には羽まで付けてやがる。
「星野家集合〜!」
俺がいきなり現れた自称神に声を発せずにいると、母さんが俺たちに集合を命じた。家族で食事をする時など、俺や姉さんも呼ぶ時のそれだ。
「な、なんだよ母さん。いきなり集合だなんて」
自称神さんを無視して家族で円になる。
呼びかけに応じて犬のポチも円に混じる。
「あの人、どう考えても変な人よ。逃げましょう」
母さんがひそひそ声で提案する。
「そうね。自分を神なんて絶対ヤバイ薬使ってる人よ。なんとか隙をついて逃げましょ」
姉もそれに同意する。
「お、お父さんも逃げるのには賛成だ」
「ワン!」
父もポチも関わり合いになりたくないようだ。
「だな」
かく言う俺もあんなのには関わりたくない。
「じゃ、新太があの変な女に注意を引きつけて。その間に私達は逃げるから」
姉はそんな無慈悲な事を提案する。
「ちょまてや!俺だけ置いて逃げる気だろ!」
「しょうがないじゃない。何とか隙を突いて1人で逃げて?後で合流しましょう」
こ……このクソ女。俺を餌にして逃げる魂胆か!なんて卑劣な……!
『お取り込み中すみません。早く話を進めたいのですが』
『⁉︎』
自称神は俺たちの円の中ににゅると現れた。
まるで瞬間移動したかのように。
『理解するのに時間はかかりません。ただ一言貴方たちには知って欲しいことがあるのです。それを伝えるために私はここにいるのです』
そう言って自称神は淡々と、俺たちにとっては大事な事を平然と。
『貴方たち家族は貴方たちのいた世界とは違う、いわゆる異世界に訪れました』