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魔王を討伐した少女は次代女神に指名されたようです  作者: 橘葵
第一章 始まりは突然に
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名前を決めよう!


「こんな家具とか可愛いよねー。でも部屋に入りきるかなー」


 鼻歌を歌いながら少女はページをスクロールして、家具セット一覧を閲覧していた。

どうやら、少女の眼にかなうものが見つかったらしい。


「これとかいいかも。じゃあ、これにしようかな」


 少女が、それをクリックし、注文が完了した。

その一分後、どこからかノックの音が響いた。


「はーい」


と、少女が言うと、ドサッという音と共にどこからか家具が落ちてきた。


「てか早!そして雑!」


 と、少女は配送方法に文句をつけながら包装を解いていた。


 そうして一時間程たった頃だろうか。包装が解かれ、姿を現したものは――

白を基調として、所々に青のポイントがついている、そんなシンプルな家具セットだった。

重さは、少女でも持ち運ぶことの出来る軽さの物ばかりだ。


 少女は、鼻歌を歌いながら家具を配置した。

何もない黒い部屋が、明るい白の部屋へと姿を変えた。


 そして少女はモニターを開く。

そこには、確かに前にいた世界が映っており、少女は一瞬たじろいだ。


「ああ……私も前の世界に帰りたいな。てかモニター一台しかないの?」


 と少女は、モニターが一台しかなかった事に気付き、再びパソコンを開く。

そうして、今度はモニターを四台ほど注文した後、商品の来襲に備えていた。


ドスン!


 今度は、ノックもなく商品が落ちてきた。


「だから雑いんだよ!何で?私一応女神なのに」


 と、さっきも聞いたような愚痴をこぼす。

そうして、四台のモニターの接続がすべて完了し、少女は再びモニターを見た。


「前に一緒にいた人は……ああ、この辺にいるかな。固定しとこ」

「で、後は適当な街の要所要所を監視しといたらいいかな。これだけしかする事がないなんて、女神ってすっごい暇なお仕事」


 と、少女は一人でブツブツと呟きながら、前の……地上にいたころの記憶に思いを馳せた。


 少女は、特筆する事もない、平凡の少女だった。しかし、なぜだか知らないが異世界転移し、少女の生活は一変した。一緒に転移した人とパーティを組み、日々モンスターを狩る日々。

なぜだか知らないが、戦闘では一度も敗北することはなかった。


 そうして、周りの人々からちやほやされる日々。そんな生活を二年間続けて、ついに魔王をも倒す。

いわゆる、この少女は異世界で成り上がる……という、夢物語のような人生を送っていた。そして、これからも送るはずだった……なのだが。


「あーあ。何でこんな事になったんだろ。面倒な事に」


 魔王を倒し、祝杯をあげていた時、ふと瞬きをするとこの黒かった部屋に一人、立たされていた。

そうして、光をまとった女神?に、いきなり次代女神はあなたです。などと言われるという、にわかには信じがたい話になっていた。


「でも、ちょっと女神になって誰かにちやほやされ続けたいわー。これ以上何かを望むってのもまたおかしな話だけどさ」


 周りに誰か人が居るのなら、そんな少女の発言にはすかさず切れのある突っ込みが入るのだが、今はもう、そんな人はモニターから視える世界の中だ。

 少女は少し寂しさを覚えながらも、暇を持て余すかのようにモニターをいじっていた。


「待って。なんか声が聞こえるモードもある。ちょっとやってみよ」


 どうやら少女にとって興味深いものもあるみたいだ。


「ついに魔王倒されたかー。これで安心して過ごせるようになったねー」

「ほんとにね。あのパーティには感謝しないと。」

「なあなあ、俺達一般市民が開いたものでは物足りないかもしれないけどさ、ちょっと宴会でも開かないか?あの人たちこのあたりに住んでるらしいし。」

「それいいねー。ぱっーと盛り上げちゃおうよ!」


 そう誰かがいったとき、少女はぷつりとモニターの電源を落とした。


「どうして私抜きでパーティーされなきゃいけないのよ!一応私も魔王討伐にはかなり貢献したのに!」


 どうやら少女は自分の記憶が消されてしまっていて、宴会に呼ばれない事に対してご立腹のようだ。

と、少女が腹を立てていると、急にパソコンから音がした。


「なになに……?えっ待って。テレビ電話?凄い面白そうだけど何かあるのかな……」


 と少女がパソコンを開く。

そうしたら、画面には銀髪の女神……と思われる人が映っていた。

あまりの美しさに少女はうろたえたが、すぐに現実に戻り、会話を始めた。


「えっと……あなたは誰でしょうか」

「私の名前?ああ、システィよ。あなたが新米女神さん?別に敬語じゃなくていいから、ちょっと私の話を聞いてくれない?」


 いきなりかなりぐいぐいと来る人につかまってしまった。

と言うよりも、もしかしたら少女の教育係を任された人かもしれない。

それを確認するために、少女はシスティに話しかける。


「えっと……あの、もしかしたら私の教育係って、あなたですか?」

「うん。いやね、さっきメールしたんだけどさ、ちょっと言い足りない事とか、メールではなかなか言えない事とかあるからこれをしているわけなんだけど……時間あるよね」

「あ、もちろんです」


 システィという女神は、どうやら活発な人のようだ。

少女はそんなシスティの姿に驚きながらも、何か学べることはないものかと真面目な気持ちに切り換える。


「それじゃ、あなたの名前は……別に適当に名乗っていいよ。ただ、働きぶりによっては国教として崇拝されちゃうかもだから、あんまり恥ずかしくない名前にしてね」

「―――」


 少女はしばらくの間考え込んだ。

何せ、もしかしたらこれから百年単位で背負っていくかもしれない名前なのだ。慎重になるのも無理はない。静寂が数分、部屋を支配する。


 そうして少女が、何かを思いついたかのように急に顔を上げる。

画面越しに移っているシスティの顔は、とても穏やかであった。子供の成長を見守る、親のような顔で。


「あの……名前、今言っていいんですか?」

「もちろん。教育係の最初の仕事、名前を付ける。だからね。しっかり見届けてやらないと、だから」


 システィも少し緊張しているように見てとれた。

どうやらあの性格でも緊張というのはやはりあるらしい。

そんな姿を見た少女は、少し気を引き締めた。


「じゃあ、言います。私の名前は、『エレナ』です」

「エレナか、良い名前だね。由来とかあったりする?」

「少し信じられない話かもしれませんが、それでもいいですか?」

「ああ、いいよ。ちゃんと聞いてやるから、思い出話とかも含めてしっかり話してくれると助かるよ」


 エレナ、という名前の由来は、ただ単に、地上にいた頃エレフィーナと名乗っていたからだ。

しかし、エレナはこの世界に転移してくる前の話、そしてこの世界での思い出話などもしっかりとシスティに語った。


 システィは、それに相槌を打ちながら、遮ることなく聞いてやったのだった。







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