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魔王を討伐した少女は次代女神に指名されたようです  作者: 橘葵
第一章 始まりは突然に
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話が飛躍しすぎだと思うんですけど……


「この建物にはね、結構不思議なところがたくさんあるの。まず光が入らないし、とっても広いし」

「大体そのあたりは予想出来てましたけど、やっぱりそうなんですね」


 エレナは、初めてこの世界にやってきた時から、その事実には気づいていた。しかし、なかなか信じられなかったため、半信半疑だったのだが。


「それで? もっと詳しく教えてもらいたいです」

「私が知ってる限りだと、この白いフロアは女神たちの共有スペースなの。こんなところが後三フロアあったりするの」

「じゃあ、白いフロアは共有スペースだって覚えといたらいいでですね。それで、その共有スペースって入るのにフロアごとの制限なんてあったりします?」


 エレナは、かつて通っていた中学校の頃の制限をふと思い出した。

あの頃は、絶対に他学年のフロアにないってはいけないし、通るだけでも怒られたものだ。

そういうルールがこの女神界にもあったとすると、知らないと大変な事になる。

 とりあえず気になった事は聞いておく、それがエレナ流の、知らない所でこれから生きていく時のやり方だった。


「まあ……あるよ?」

「何で私に聞くんですか。私何も知らないんですよ」


 システィは、何故か不安そうにエレナのほうを見た。

 システィは、いつもエレナの予想の斜め上の事を返してくる。

 エレナはそれに慣れつつあるのだが、こういうのは勘弁してほしいと思う。


「一応、規則って言うかなんていうか……。住んでるフロアから上に出ちゃいけないんだよ。この建物」

「それって年齢が低い順から高い順になってるんですか?」

「地位が高いか低いかの違いだった思うの。確か」

「格差社会ですねー。地上でもここでも」


 女神になっても地上と変わらない格差社会に、エレナは少し悲しむ。

それはそうとして、エレナはここに居ても良かったのだろうか。


「あの、私ってこのフロアにいて大丈夫な感じですか?」

「うーん……グレーゾーン?私から離れるとちょっとアウトかも」

「さっき思いっきり他の女神と話しに行ってたじゃないですか」

「あ……あまりにもエレナが有能そうだったから大丈夫かなって」

「意味がわからないですよほんと」


 エレナは、有能そうだとシスティに言われて少し照れるが、ルール無視とはいかなるものか。

後で罰をくらうなど、面倒くさい事はまっぴら御免だ。


「じゃあですよ、私は今どの階層に住んでるんですか?」

「一階層よ。そのうち上がるだろうけど」

「ありがとうございます。というより、部屋とかってどうなるんですか? 上がる時」

「そのままエレベーターみたいに?」

「……」


 なんだかよくわからない答えを返されたので、エレナは何も返事出来ずにいる。

エレベーターのようにに部屋が動く、という意味がよくわからなかったのだ。


「なんだかよくわからないんですけど、もしかしたら一人が上がるごとに一人は落とされるっていう事なんですか?」

「その認識で合ってる思うわ」

「結構厳しいんですね。この女神界」

「まあでも楽しいと思うよー」


 エレナは、女神になってもまだ存在する厳しい制度に少し悲しみを覚える。

どう見てもこの世界は楽園のような、ゆるい世界なのに。


「後は、フロアごとに何人くらい住んでいるんですか?」

「えっとねー。一階層に大体二十人、二階層に十五人、三階層からは分からないけど、確か七人ごとに住んでいるはずだわ。」

「というより、この建物、何階層まであるんですか?」


 住んでいる人数から見ると、そこまで高い建物でもなさそうだ。

エレナは、とりあえずは知っておく、の精神でシスティに質問する。望んでいる答えと食い違っているかもしれないが。


「一応四階層までだった気がする。あと、まだその上に監視室的なものがあるけどね」

「ほー。今に限ればシスティ先輩がちゃんと先輩してますね」

「いつも先輩だし――!」


 とりあえず、今に限ればシスティは先輩感が出せているな、とエレナは思う。


「あ……この階段降りて、曲がって三つ目の部屋がエレナの部屋だから、よろしくー。」

「右手ですか? 左手ですか?」

「右手」

「危うく別の女神の部屋に入っちゃうところだったじゃないですかーー!」

「ごめんごめん」


 システィは軽くエレナに謝る。

システィは二階層の住人のだ。だからか、一階層の住人、エレナを送り届けることはしないようだ、

別に入る事は出来るが、階の移動が面倒なのだろう。


「じゃあ、私たちはここでお別れですか?」

「そうね。じゃあ、ばいばーい」

「さようなら―」


 エレナとシスティは別れの挨拶を交わしあい、別れて行った。




「ふぅ……やっと帰ってきたぞー」


 そう言ってエレナは部屋の中にあるクッションに倒れこむ。

そこで、ある異変に気付いた。というより、なんだか視線を感じる。


「ソフィアさん、またここにいるんですかー?」


 エレナは前もこうやって隠れていた女神の事を思い出し、軽い気持ちで言ってみた。


「いるよ。忍び込んでいてすまない」

「……?」


 突然姿を現した姿は確かにソフィアなのだが、口調がなんだかおかしい。

エレナの知っている限りでは、ソフィアはもっとおどおどとしていて柔らかい感じだったのだが、今回はきりっとしている。


「ソフィアさん……ですか?」

「そうだ。と言っても、口調が違うとまた違った人に見えるだろうな」

「雰囲気、全然違うんですけど……?」


 今日のソフィアは前と同じかわいらしい服装なのにきりっとした言葉遣いをする。エレナは、そのギャップもかなり面白いものだと思うが、前回と印象があまりにも違いすぎていて、ついていけていない。


「今日はまだあの薬の効果が切れていないからな」

「それ危ない薬だったりするんですか? 幸せの白い粉とか」

「そんなものは服用しない。私が飲んでいるのは元気が出る薬だ」

「それやっぱり危ない奴じゃないですか……」


 エレナは、このソフィアと言う女神にはなかなかついていく事が出来ない。

というよりもその元気が出る粉、というのはどういうものなのか。ソフィアは危なくないと言っているが、エレナが聞く限りは危ない薬としか思えない。


「この女神界にはいろいろあるもんでね。私も最初は疑ったのだが、どうも合法なので大丈夫らしい」

「誰に聞いたんですかそれって」

「ネットで調べた」

「なんだか不安になるんですけど……」


 ネットワーク程不確定な情報が多いものはない。

エレナは、地球にいたころはネットワークの危険性を耳にタコができるほど教えられたものだ。


「ただこの建物の上層部が作っていたサイトなので、大丈夫だとは思うのだが……」

「凄い上層部を信頼してますね」

「まあ、私はあそこには感謝しないといけない事が数多くあるからな」


 なぜそんな事があったのかエレナは聞きたかったが、それはまた別の暇な機会にでも聞けばいいかと考える。今聞いても訳が分からなそうだから。

 それはそうとして、なぜこの女神は二階もここに侵入しているのか。エレナはそれが気がかりだった。


「というより、何でソフィアさんがこの部屋にいるんですか?」

「あなたをずっと観察していたいからだ」

「ストーカーじゃないですか。気持ち悪いですよ」


 エレナはソフィアに引いてしまう。

というよりも、なぜエレナはこうも変人ばかりに遭遇してしまうのか。というよりも、先輩と言うのはこうも変人が多いものなのか。

 リナはかなりの常識人だと思うが。


「別に観察するのはいいんですけど、それだったら実体化してくださいよ。わざわざ隠れる必要性なんてないと思うんです」

「システィとの絡みが嫌」


 即答だった。

確かに、システィは好みが分かれる人だとエレナも思う。ただ、ソフィアにはそこまで嫌いな理由があるのか。


「システィは私を見るとすぐにいじってくるから嫌いだ。あとすぐに抱きつく」

「えー……それはちょっと気持ち悪いですね。百合っぽくて」


 別に、エレナは百合は嫌いではないのだが、実際にされるのは少し嫌だ。


「それで、部屋には帰らないのですか?」

「もうずっとここに住んでいてもいいのではないかと思う」

「何があったんですか。私とあなたの間に」

「特に何もないが、何故か私はあなたに惹かれるのだ」

「私は引きますよ」

「それでも別にいい」


ソフィアの身に何があったのか分からないが、エレナはとりあえず気の済むまではこの人と住んでいてもいいのだはないかと思う。あくまでも、気のすむまで、だが。


「……別にいいですよ。一緒に住んでも。ただ、この部屋凄く狭いですが」

「良かった。というか、もっと拒絶されるものだと思ったが、エレナは優しいな」

「面倒くさがりなだけです。あと、いろいろと便利ですし」

「何にだ?」

「システィ避けとしてです」


 何があったのか分からないが、エレナとソフィアは一緒にこの部屋で過ごす事になったのだった。


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