女神になったよ!
世界は壊れ、そして再生された。
この世界に召喚された「勇者」が魔王を倒し、世界は一度、崩れ落ちた。
しかし、それを見届けられる一般人は皆無。女神にしか認識できない「何か」で世界の再構成が行われる。
そして、その世界を統括していた女神も――
女神界では、普通「代替わり」というものが行われる。それは、世界が壊れ、そして再生するまでの間にその名の通り、女神が変わるという事だ。
それは、女神にとっては大変名誉なことであり、そうするために補助プログラムを形成する事が主な仕事だった。
そうして、新しく女神となる人が配属された。
「何で私がこんなところに?私って魔王討伐したはずだよね。もう平和な暮らしを送れるはずなんだよね?」
「あなたは、次代の女神へと生まれ変わります。少々お待ちください。」
どうしてだか、魔王を討伐したメンバーの一員らしき人が次代女神に選ばれたようだ。
そんな少女に、旧女神は機械的な声で応対する。
「……これで終わりました。あなたは、無事次代女神へと姿を変えたようです」
「は?ちょっと待って?私こんな事になるなんて思ってもなかったんだけど?何よ、女神って」
少女は、有無を言わさぬ雰囲気を纏った女神に食ってかかる。
しかし、その女神は相変わらず無表情で――何かを語り始めた。
「あなたは女神に選ばれました。あなたは、世界を見届ける義務が生まれます。頑張ってください」
「いや待って?私そんな事望んでない、早く元の世界に帰してよ。仲間が待ってるんだから!」
少女は早口でそう女神にまくし立てた。それは、仲間に対する思いが含まれているのだろうか、思わず語尾が強くなる。
しかし、女神はそんな少女に動じることなく、再び語り始める。
「世界を改変させられる時、あなたは現世へと戻る事ができるでしょう。それはとても名誉なことです。初心者女神は比較的自由が利くので、最初が肝心です。頑張ってください」
「いや、だから私は元の世界に帰りたいのー!このままだったらみんな心配しちゃうから!」
「その心配はありません。あなたは、一度世界の記憶から消えてもらい、再び現世へと戻る事になった時、あなたは世界の記憶に組み込まれるでしょう」
「……それだったら、っていいわけないよ!」
少女は、目の前にいる人がどれくらい神格化されているかも知らずに、涙目で食ってかかる。
しかし、やはり女神は取り乱すことはなかった。
「こうなったら強硬手段です。拒否権などあってないようなシステムですから」
と女神が言った時だった。
少女の体が一瞬硬直し、その間に女神は精霊へと姿を変えた。
「もう、この姿も限界ですね。やっと元の世界に戻れる。楽しみ」
元女神は、そう言って女神の世界から姿を消した。
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「ちょっと何?待って何が起こったか分からないよ!」
と、新女神の少女が叫んだ。
しかし、その声は石壁にぶつかり、ただ部屋に反響するだけだった。
「誰かいないのー?てか私はどうすれば?」
少女が上を見上げて叫んだとき、天井から声がした。
どうやらそれは人の声でなく、ガイドメッセージのようなものだった。
「あなたには、これからあなたが前にいた世界の監視をしてもらいます。そうして、起こりうる問題を、人々が解決できるように手助けしてあげてください。もし、世界の大変動が行われる時、あなたは元の世界に戻る事ができるでしょう。」
「……」
少女は、ここ数分で起こった出来事があまりにも現実離れしすぎていて、唖然としていた。
しかし、なってしまったものは仕方がない。どうにかして現世へと戻る方法を見つけなくてはならないと思った。
「あれ……?こんなところにパソコンとモニターがあるよ?何で?あの世界にはなかったはずなのに。」
少女はモニターとパソコンの電源を入れた。
なぜ、少女はそのような機械を知っているのか。
それはもちろん、少女自身も日本からの転生者であったからだ。
「ていうよりも、何で地球の機械がこんなにあるんだろう……?でも言葉はあの異世界語だし」
と呟きながら少女はパソコンを操作し始めた。
現世――いや、地球にいたころの習慣で、メールボックスを開く。
ふとメールボックスの中に新着メールが届いている事に気付いた。
「何かあるのかな。私について書いてあるといいんだけど」
少女は新着メールをクリックした。
『新米女神の方へ。あなたは、まずは二週間ほど世界の監視を行ってもらいます。もしそこで何か不備がある場合、すぐにこのメールで報告してください。
そして、二週間が経過したら、あなたにはプロジェクトを行ってもらいます。
ただ、何もせずに世界の監視だけでは暇だと思うので、このパソコンでいろいろ調達してください。
もちろん、料金はかかりません。安心してくださいね。
では、また二週間後、新しいプロジェクトをこの宛先に送ってきてください。
楽しみにしていますよ。
追伸 私は、あなたの教育係みたいなものです。気軽に相談してくださいね。』
「追伸が一番びっくりなんだけど!でもこの殺風景な部屋を改造できるのはいいよね。ちょっとやってみようかな。」
少女は、どうやら世界の監視より、部屋のレイアウトについてのほうが興味があるようだった。
まさかの女神さま。
不定期更新になるかもしれませんがよろしくお願いします。
少なくとも一月までは頑張って毎日更新……頑張ります