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愚劣な科学者の重力理論  作者: kjkjpw
2/2

01

  物事には限界が存在する。

 それは世界の定めであり、越えられない人としての壁でもあった。

  限界を超えようとすればその身は破滅し、やがて死を迎える。

 神を超える力を持つものは他ならぬ神自身だけだった。

  しかし時として稀に限界を超える者が存在した 、その者は時として英雄と呼ばれ 、 また時として悪魔と呼ばれ時代と共にそれは変わっていった。


  俺はある人からは平和をもたらした神と呼ばれ、またある人からは戦争を起こした悪魔と呼ばれた。


 そしてこれから起こす行動が善なのか悪なのかは後世の人々が判断するだろう。


ーー第三次世界大戦の勃発


  それは自らが引き起こし災厄として永遠に記憶され続けるだろう。


10年前の悲劇を再び繰り返してはならない。


そう心に誓って。




 凍てつく冬の寒さに身を縮ませながら一歩つづ歩いて行く。

辺りには人々が歩き、散寒とした青空には沢山の鳥が飛んでいた。


  水落は歩きながらある事を考えていた、父が残した言葉をどんな意味があるのかずっと考えていた 。


ーー神を信じてはならない


(あれはどんな意味だったのだろう)


   父は熱心な宗教論者ではない、むしろ科学者であった父は神の存在を否定していたし嫌ってもいた。

  そんな人が何故、あんな言葉残したのかそれが気になって仕方がない。


    ふとそんな事を考えていた時、不意に目の前にとある人物が仁王立ちしたままが立ち塞がるのが見えた。


「おーい、聞いてる?」

隣にいたウェンリーが不安そうに顔を覗き込見ながら尋ねてくる。


「ん?ああ、それで何の話からだったけ」

「はぁー ..大事な話してる途中に何考えてるのよ」

  溜息を付きつつも、怒らずに隣に居てくれるアルベルトの存在は父を無くした水落にとって大きな支えになっていた。


 水落の父はNASEの物理学者で、優しく勇敢で立派な父親だった。

  幼い頃、水落は父の話を聞く事が好きだった。

 父はいつも面白い話を聞かせてくれたり、褒めてくれた。

  最初は父の言葉を理解したい、父に最も褒められたくて頑張った。

 難しい言葉を覚えて、勉強しどんな些細な事でも調べて記憶する事に努めた、

 そして7歳の頃には父の論文を理解出来るようになった。


  母もそんな父と自分を微笑みながら側で見守ってくれていた。

そして15歳の頃に"ある事"が起きた。


ーー2040年 9月10日人類初の火星への有人飛行が成功した、

   NASAで作られたオリオン14号は無事火星に到着 、この日初めて人類が火星の地に足を踏む。


 それは人類の進化を示す一歩となった。


 しかし同時に悲劇を生み出すキッカケともなった。


  父は火星の地下で採掘された鉱物を研究所で解析を行ない膨大なデータを元に実験、その結果ひとつの結果に辿り着く。

  その性質に関する報告書を提出。 その後研究所である実験を始める


ーー2040年 研究所の実験室で火災が発生


   その結果、実験室は全焼。 原因は何らかの理由で引火した炎が実験用の水素タンクに引火し、爆発したと見られている。


ーー死者1名、重軽傷3名出した。


 死亡したのは水落 優一 、それは父の名前だった。


   現場の状況から調査の結果、実験の最中 、圧力に耐え切れなくなった部品が破損、それによる熱の放出が不可能になり引火、爆発それにより制御が不能となった燃料投下装置が再現を超えて燃料を投下し大規模な爆発が発生したとみられている。


 被害の大きさから、辺りは吹き飛び建物内部は原型を留めては居なかった。


  懸命な捜査が行われたが遺体は発見出来ず、事件は謎のまま終わった。


 母はそれを聞いて嘆き、悲しんだ、しかし俺は不思議な事に泣く事は無かった。

 胸に何か大きな穴が空いたかのような虚無感ととてつもない疲労感に襲われ、何もやる気が起きなかった。


 今までの幸せと苦労が全て無意味になったような出来事に不安を感じ自然と自分の心は闇へと落ちていった。


 母はいつも俺を見ると微笑み、笑顔でこちらを見る、

 しかし、その笑顔も元気が無く無理矢理作ったように見えた。


 そんな母を見るのが嫌でよくワザと悪い事をして怒られたり、冗談言ってからかったりもした。


 しかし、母はそんな俺を怒る事も無くそっと頭を撫でて微笑んで笑ったのだ。

  母は父さんが死んでから変わった、

昔は悪ふざけをしたらこっぴどく怒られたものたが、最近はまるで大切な物を扱うかのように労りのない丁寧な言葉しか発しなくなった。


  その頃から母の体調が優れなくなり身体が弱くなってよく体調を壊していた。


  その頃は荒れており、よく近所の不良とつるんでたりしていた。

危ない遊びをしたり、ケンカも生まれて初めてやった。

  それは父が生きてた頃は信じられない事だった。


  思えば自分が科学者を目指したのも父がキッカケだった。

  父はよく、平和を実現させる力があればと言っていた。


  そんな父の夢を叶えてあげることが出来れば天国にいる父さんも無念も晴れるだろうそう思った。

例え、どんなに素晴らしくてもそれが途中で終われば無駄になる。

20年間父がやってた事を無駄には出来ない...

いやしたくなかった。


  だから自分は科学者になる事に決めた。

もしかして本当は自分がただ幻想を抱いていただけなのかもしれない。

  自分が救われたいが為に父がやって来た事を何も考えずにただひたすらに押し進めていただけなのだろう...。

  過ちを犯してるとも思わず友人からの忠告も聞かずにそれが引き起こす結果がどうなるとも考えずに実験を繰り返した。


  実験は成功した、がーーそれは悪夢の始まりとなった。

それがもたらす出来事は父が願っていた事では無く、父が一番恐れていた事だった。


 事故の後、父の遺品を整理していた時、実験のレポートの一部を見つけた。


 それは実験の方法についてと、人工的に重力を発生させる方法についての可能性。




「それで?もう用事は済んだのか」

錆びついた鉄格子に手を置いて尋ねてくる。


「ああ、もう終わった。すまないな待たせて」

「良いって、好きでやってるんだし」


「しっかし、その男口調は変えたらどうだ?せっかくの美人が台無しだぞ、ウェンリー」


そう言うと、まるでリンゴのように赤くなる


「うううううるさい!からかうなら置いてくぞ!」


「ごめんって、そう怒るなよ〜冗談の一つも言わないとやってられなくてさ」


(冗談?つまり嘘だと言う事か!)


握り拳を作り怒りつつも笑顔で

「ん?何か言った?」

「いえ!何も言ってません!」


  そういうと、彼は急に人が変わったように黙り込む。

   彼は他人に話せない事情や、ごまかす時はいつも黙り混む。

  実に分かりやすい、彼は考えている事がすぐに顔や行動に表れるものだからいつもこいつが本当は馬鹿じゃないのか?と考えてしまう。


「どうした何を抱え込んでる」

「いやちょっとな」

  そう言うと水落は少し悲しそうに空を見上げ星に願い事をするかのように目を閉じる。


 雪が降り始め、風が吹き、まるでこの世の終りを見ているかの表情は何処か寂しそうな雰囲気を感じさせる。


「さて...と何時までも此処に止まっても仕方ないし行きますか」

「分かったわ」

  此処は私と彼が出逢った場所で、

彼が大切な物を失った場所でもある。


「それで敵さんはまだ追い掛けてきてるのか?」

「ああ、諦めの悪い奴らだ全くもう..何でこんなに必死になって追い掛けて来るのかしら」


  水落は放射能を無害化する技術を発見した事による功績によってその実績が注目され始めた。

  それからすぐに人工的に重力を生み出す理論の提唱、電磁パルスの無効化の方法を編み出し 、その正当性が証明された事によって一躍有名人となった。


   僅か3ヶ月で全ての事を成し遂げた事からアインシュタインを超える天才科学者とまで言われ、色々な有名な研究機関からオファーが来て、莫大な報酬を打診されていた。


  しかし、今は亡き父の夢を叶える事が出来た彼にとって研究はもう必要なかった。

それは自分にとっても念願の夢を叶えた事を意味していたからだ。

  父が何故死んだのか、何故あの事故が起きたのか、彼は知りたかった。

父が遺した論文があったからこそ、今の自分がいる事を感じていた。

  自分にとって父はまるで神の様に、絶対的でそして心に支えとなっていた。

   しかしいつまでもそのままでは居られない、だからそんな自分にピリオドを打つ為に、事実を知る必要があった。


  だがそんな事もお構い無しにオファーをする彼等の中には、強引に引き込もうとする輩もいた。


 

 水落とアルベルトはビクトリア.コンドリア大学の講演に参加していたその時いきなり正体不明の武装集団に襲われたのだ。



  白衣の来た人物が銃を発泡し、その場から悲鳴が鳴り辺りは恐怖に包まれた。

  その時、凄まじい爆発音が響いた それに怯んだ奴らのスキをついて逃走。


 それからというもの逃げ回る途中に彼と出会った。


「それよりこれからどうする?」

「うーん、とりあえず何処からか抜け出せる場所を探す必要があるな 」

 建物の中は以外に広く此処の建物は色んな場所に繋がっていた。


 大学の中の図書館に私達はいた、

古く年季を感じさせる木製の本棚に、色々な言語で書かれた沢山の本 、広く障害物も多いので隠れるには持ってこいの場所だ。




  足音が聞こえる、それを聞いて咄嗟に隠れる、建物のに隠れてじっとしていると先ほど襲ってきた奴らが追ってきていた。 

「Чёpт!3aмноп」

聞きなれない言葉が聞こえたてきた、何を言っているか分からないが....英語じゃないのは確かだ。

  「あれはロシア語だ、多分私の論文を狙いに来たんだろう」

 「ロシア語!?と言うことはあれはロシアの特殊部隊なのか?」

驚いた....てっきりあれはテロか何かとばかり思っていた。


  しかしこの状況だと迂闊に動けば敵にばれてしまう、かといって待っていたとしても外部連絡通信装備も破壊されて、連絡は取れない、つまりは救援は期待出来ない......。


「どうしようか....」

 そう迷っていると水落は提案をしてきた。


「一つのいい事思いついたんだけど....」

「何だ?言って見ろ」

「備品室に今では使われてないALVがあるんだけどさ、それを使えば連絡も可能なんじゃないかな?」


 そう、今では1ヶ月前の製品は昔とばかりに新しい技術が生まれては廃れ、どんどん新しい物が作られている。

ALVはそうした物の一つで、今では珍しい手動式しかも他のより重く、民間では全く人気が出なかった 。


しかし、高性能で距離が離れていてもほとんどラグや天候の影響を受けず、ジャミングが全く聞かないという事から軍や研究機関では重宝されている。


「その手があったかそれが分かれば早速行くぞ」

 「おい、待てって ここから備品室に着くまでに必ずあの大通りを通る必要がある あそこにはあいつらもいるはずだ、そこを見つからずに通るなんて無理だ」


 今居る場所は、二階にあり、此処から備品室に行くには一階の入り口のすぐ右にある。 しかし出口は武装集団から見張られている可能性がある、もし此処から動いて備品室に行くとすれば見つかる可能性もある。


「しかし、それしか方法のないなら....」

「方法ならあるさ」

そう言って彼は本棚に指を指す。

   そして真ん中にある黄色い本を押すと、

本棚が鈍い金属音を放ちながら横に壁が動きだす。


(まさか隠し扉がこんな所があったなんて....)


「ここからなら備品室に直接行ける」


 彼はニヤっと笑い先ほどの秘密の場所に入っていった。

  中は暗く、明かりが無いため足元が見えず一寸先は闇だった、それはまるで今の自分達の状況を表しているかの様に重く感じられた。





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