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More daze  作者: 鈴ノ木
 Stage1 原沢高等学校
15/26

第十四話 協力

 『九月×日 木曜日


 ああ、いつになったらこの悲劇は終わるのかな。今日も机に落書きがされていた。そしてみんな、私を助けてくれない。以前仲良しだった友達も見てみぬふりをして。先生は皆にいじめをやめてくれるように、いつもHRで呼びかけてくれるけど、いつも「お前がチクったんだろ」と言ってくる。お父さん、お母さんも私がいじめられていることより勉強のことばかり言ってくる。悲しい、もう学校に行きたくないな。』


 一ページ目からいじめの話がやってきた。確かこいつの担任はありさだ。あいつ、もしかして悩んでいたんじゃねえのかな。だったら一言相談してくれたっていいのに。従姉とはいえど、もう家族といっても言えるんだから。


「若城さん、いじめられてたんだね」

「……みたいだな」


 そして次のページも、またその次のページも似たようなことが書いてあった。嫌がらせの数々、助けてくれないという悲しみが、そこに書いてあった。そして字はどんどん走り書きになって汚くなっていく。


「……!」


 そして、あるページで俺は手が止まった。一旦、日記帳を閉じる。


「波也?どうしたの」

「歩、ちょっと後ろ向いてろ。ちょっと女子が見るには…」

「元々、性別なんてないけど…。まあいいや、あの子の代わりだし。いいよ、終わったら言って」

「ああ」


 俺は、歩が後ろを向いたのを確認すると、再び日記帳を開き、そのページを読んだ。


「……いくらなんでも……ないだろ……」


『九月△日 火曜日


 鬼人歩が憎い。あいつは私と同じような身なりをしているくせに、ぶりっ子だし、何より皆から好かれているのが妬ましい。何回か話したことはあるけど、あんなでかい目をしていて、へらへらと笑っているやつの何処がいいっていうんだろう。大体、いつも一緒に居る白川くんとかいう男子も、先生の親戚にあたる人らしいけれど、もしかして付き合ったりしているのかな。だったら、そんなやつより私のほうが全然いいのに』


 若城さんは確か黒髪で、歩と同じツインテールをしていたとありさは話していたっけか。確かに、自分とちょっと身なりが似ている人物が自分より才能があるって知ったら、俺でも嫉妬に苛まれるだろうな。ただ、身近に居る奴の悪口は聞きたくない。歩がぶりっ子?全然違うな、歩はツンデレだ。しかも、俺のことまで書かれているし…。


(とりあえず、歩の悪口とか書かれているページは飛ばしておくか)


「…もういいぞー」

「はーい、何かわかった?」

「……お前は知らなくていい」

「何よそれ―――って、うわ、若城さん、なんか荒れてってる」

「ね。何があったんだろうな」

「いやいやいや、あんた読んだんでしょ?それに何で棒読みになってるのよ」

「聞くなよ」


 しかし、歩がしばらく読んだ先のページは破れてしまっていた。数枚足りないようだ。もしかしたら、そのページが重要な情報が書かれているのかもしれない。…若城さんには見つかったら、あとで勝手に見てしまったことを謝っておこう。

 日記の足りないページについての俺の意見を歩に聞かせると、彼女は「なるほどね」と頷いてくれた。


「だとしたら、ステージごとにいくつか落ちているのかもしれないよ」

「全部じゃないのか?」

「ええ。あの放送をしていたやつがいってたじゃない、鍵を見つけて脱出しろって。そこから次の指令が待ってるって。それって次の指令は、次のステージへ行けってことなんじゃないの?」

「次のステージか…」

「そう。そしてその日記の『足りないページ』は、このゲームをクリアするためのアイテムだと思うよ」

「なるほどな!」


 だったら集めなくてはならない。次のステージがどんなものなのかは知ったこっちゃないが、ゲームを進めるためのものが見つかるのは嬉しい。しかしページはただの一枚の紙だから、あの二人にも日記のページを探すように協力を呼びかけたほうが効率がいい。


「っ―――あ……!」

「? …どうしたんだ、歩」


 突然、両手で口元を押さえる歩。何かを感じ取ったのだろうか。


「り、燐くんが…」

「燐が?燐が、どうしたんだよ」

「燐くんの気配が、別の…、別の次元に飛ばされてってる…」

「は!?な、何だよそれ!!?」

「わ、私にもわからない…。どうしよう、このままじゃ燐くんが…!」

「お、落ち着けよ!お前、この世界を作ったんだろ!?なら解決方法が…」


 頭を抱えてしゃがみこむ彼女に俺は、何の力もない人間だった。「解決方法」といっても俺の頭の中は真っ白で、ただ安心させるだけの言葉に過ぎない。本当にどうしたらいいのかわからない、そうだ。あいつには確かありさがいたはずだ。一度、あいつに連絡を…!


「待ってください」

「!」

「……誰…っ!?」


 いきなり現れたフードを被った人物。見覚えのない姿をしているということは、鬼ということになるが俺は、その声に違和感を感じていた。この声……、どこかで……?


「九川ありささんへの連絡は現在しないほうがよろしいかと」

「どうしてよ!?このままじゃ、燐くんが戻れなくなっちゃうじゃない!先生に一度連絡して、私たちにどう動いてほしいか指示がなきゃ…」

「その二人を助けるために言っているんですよ、九川ありささんも燐と同様、意識が別次元へ飛んでいます。連絡なんて届きませんよ」

「何それ…!?鬼のことを信用しろっていうの!?」


 するとフードの人物は少し黙ると、俺のほうを見つめて微笑んだ。それを見て、俺はそのフードの人物が誰なのかがわかった。もう確信している。どうして此処にいるのか問い詰めたいが、今はそれどころじゃない。一刻も早く、俺のダチを救わなきゃな。


「いや、コイツは信用していい鬼だ」

「はあ!?」

「! ……私のことが、わかるんですね?」

「見間違えたよ。こんな形でまた会えるとは思っていなかったがな」

「…あの時はありがとうございました。貴方が見つけてくれなかったら私は、あのまま死んでいたかもしれません」

「ちょっと…、何がなんだかわからないんだけど……」


 簡単に言えば、恩を返す、返されるの仲だよ…と歩に軽く説明をして、燐を助けるための作戦会議に入る。


「燐を助ける方法ですが…、まず彼は緑鬼のハヤテに捕まっています。彼女は『仕掛け』で攻撃をしてくるんです。その『仕掛け』というのが、裁判仕掛けといって、かかった人の過去を別次元の世界にし、映像として再生させるんです。そして重い精神攻撃をしたあとに殺すんです」

「うわ…」

「趣味悪い……」

「なので別次元に入るための穴を貴女に作ってほしいんです。『主催者』の力を持つ貴女ならきっと出来るはずなんです」

「……先生はどうなるのよ」

「勿論、私が助けに行きます。緑鬼のハヤテは鬼役として違反行為をしているので、恐らく彼女はクビになる可能性が高いです。そうすれば、きっと九川ありささんも戻ってくるはずです。――――お願いできませんか……?」


彼女は真剣な顔で、歩を見つめる。その目は間違いなく本気で、本当に燐のことを助けたいと思っているのだろう。


「――――わかった、助けてあげる」

「歩…!」

「あっ、ありがとうございます!」

「その代わり、絶対に助けてよね。空野くんは私たちの仲間なんだから。……貴女にとってもね」

「……はい!」


 こうして、燐救出作戦が始まったのだった。

 

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