プロローグ
見渡せば、そこらじゅうは真っ暗闇。
どこを見ても、歩いても、誰かを呼んでも返事は無い。暗い空間でただ一人の少女は、ずっと長い間そこで過ごしていた。
少女の瞳は光を宿してはいなかった。涙もかれてしまっていた。心も失い、自分自身が何故、ここにいるのですら忘れた。それでも少女は外側の世界をいつも眺めていた。そこから見えるのは人間たちの欲望にまみれた薄汚い世界だけ。
「つまらない世界…」
少女が呟きながら歩いていると、何やらびちゃり、と生暖かい液体に触れた。そこで自分がはだしでだったことに気づくも少女にとってそれはどうでもよかった。
そう、そこに『転がっているモノ』さえも。
少女は手紙を作り出し、その数枚を空へと手をかざし放った。手紙は赤、青、黄、緑の光を
帯び、小さくなって消えていく。
少女は狂った笑顔で笑い続けた。赤い空には少女の笑い声がただ止むことなく響き渡っていた。そのその手紙はとある少年、少女たちの運命を変えることとなる。
手紙の中身の招待状を開くことで、
―――――全ては、始まる。
【 More daze 】
暖かな日差しが窓から入ってくる。それに、身体がとても暖かく寝心地がいい。まだ朝起きる時間には早いし、もう少し寝て居たいかも…。いや、寝ていたいというより一生毛布になりたい。
―――――そう願う俺の願望はあっけなく崩れ去る。
彼女の怒鳴り声によって。
「なーーみーーやぁああああああああっ!!」
「うわああああああああああ!!!」
だだだだだだっ、と階段を勢いよく駆け上がる音がしたと思えば刹那―――ばあんっ!と俺の部屋の扉が大きな音を立て、俺の名前を怒鳴るかのように呼ぶ一人のツインテール少女が現れた。
その速さに驚いた俺は、冷蔵庫の裏に潜む這いよる混沌を想像し、絶叫するとベットから滑り落ち、頭を打った。
ああ、今日もコイツに起こされた。
「朝っぱらから男子高校生の部屋に乱入して怒鳴るなよ」
「アンタが自分で起きないのが悪いんじゃない!どうせ夜中までゲームしてたんでしょ!?」
「ぐ…っ」
そう、俺はコイツが起こしに来るのが日課になってしまっている。高校生でありながら、だ。しかし、コイツは俺の兄妹だとか親戚とかの関係ではない。めちゃくちゃ赤の他人である。
彼女の名は鬼人歩という。鬼に人と書いてキビトと読む。
歩は俺が幼いときに母さんと父さんが養護施設から引き取ってきたらしい。歩は両親から育児放棄をされ、虐待を受けていて心を閉ざしていた状態にあった。両親が吸ったタバコが原因で家が火事になり、両親は焼死したのだという。
歩はその火事の唯一の生存者だったが、誰も引き取る家がなく、流れるように養護施設へ入った。
そしてしばらくして彼女は俺の家へとやってきた。
俺は歩を最初に見たときは「誰その子?」と嫌そうな顔をしていて怪訝な表情を浮かべていた。あまり女の子と接したことがないからなのかもしれない。
「そんな顔をしちゃ駄目だよ、やさしくしてあげてね」
そう言う両親を見て押さないときの俺はこう思った。
(ああ、この子何かあった可哀そうなヤツなんだ)
俺は両親に言われたとおり、優しくしてやった。そして日々を重ねるうちに彼女は心を開き、徐々に白川家に打ち解けていった。
やがて、俺たちは成長していき、無事に義務教育を終えることができ、高校を受験して無事に入学。
今に至るわけだが…
「おい」
「な、何よ」
「お前さ、俺の裸も見ないと起きたって認めないのか?」
「―――――っっ!!」
歩の顔が、みるみる赤く染まっていく。どうやら彼女も思春期らしい。俺のこと、きちんと男として意識している証拠だ。部屋に突然乱入してくるものだから、そういうのは皆無かと思っていたが。
「べ、別にあんたの裸なんて気持ち悪くてみてらんないわよ!!」
赤面した歩は「ばーかばーか!」と俺に言い続け、勢いよく扉をしめた。壊れるぞ、俺の部屋の扉。
―――壊したらどうしてくれる。もし壊してしまったら地獄じゃないか。夜な夜な寒い空気の中、毛布に縮こまってブルブルと毎晩震えなければならなくなる。そんなのは御免だ。…ああ、恐ろしい。
「よし、こんなもんかな」
俺は少し着崩した制服に着替えると、部屋を出て玄関でムスッとした顔で待っていた歩と通っている高校へと歩き出す。
家から高校まで15分。そんなに時間はかからなかった。
県立原沢高校は俺たち二人とも、「家が近いから」という理由で受験した。原沢高校はこのあたりではテニス部が強豪だと有名だが、俺にはそんなのには一ミリも興味が無かった。
俺が興味があるのはゲームだけである。実際、歩の言うとおり午前二時までにはぶっ通しでオンラインゲームをしていた。そのため寝不足なのはいつもの事だ。
歩に起こされ、怒られながら学校に向かうのはいつもの事。
それが当たり前である俺の日常。
「アンタも懲りないよね。そろそろ進路とか考えなくていいの?」
「いや、そろそろ考えようかと思ってたとこだ」
「あっそ。私はもう考えてるから関係ないね。でも、気をつけなさいよ?最近ゲームの噂があちらこちら飛んでるからね」
「噂?」
「そ。いわゆる有名な都市伝説というかなんというか」
「へえ…」
そんな噂があるなんて知らなかった。
しかもゲームの噂だ。ここら辺じゃ最近は「隕石が落ちた」とか「ここら辺では昔、落ち武者が戦死した」などと疑わしいものばかりだった。
さすがにゲームの噂は気になる。何故なら俺はゲームの事にしか興味がない男だからだ。
「私たちみたいな若者がやるようなゲームの噂なんだけど。とあるスマホアプリゲームを、プレイした人が行方不明になるんだって噂」
「……なんっか、ありきたりだな。期待して損した」
「ちょっ!何よその反応は!実際に行方不明になった人もいるらしいんだから!」
「『らしい』ってお前ただの噂じゃねえか。最初にも都市伝説だーとか言ってたじゃねえか。で?どんなゲームっていうんだ、そいつは。」
「ええと、確か…、
―――――【More daze】」
(………あれ?)
そのゲームの名前を何処かで聞いたことがあるような気がした。一体、どこで聞いたのだろう。そのゲームがリメイク版で、俺自身が古い方をやったことがあるのか、それとも友人から聞いたのか。考えてみたが、思い出せなかった。
「『より多くの茫然自失』って意味なんだけど、私にもよくわからないの」
茫然自失。
確か意味はあっけにとられたり、呆れたりして我を失ったり、気が抜けてぼんやりしてしまうことだったか。
それがより多くだなんて、ジャンルはヤンデレの恋愛シュミレーションなのか?
歩にたずねると、首を横に振った。
「いいや?ていうかあんた、恋愛ゲームとかしてんの?うっわー、そっちの世界に彼女とかいるんだ…」
「そんなんじゃねえよ!何なんだよさっきから!つかやってねえし!! …で?違うってことはアクションゲームか?」
「あんまり詳しくはないけれど、アドベンチャーホラーゲームらしいよ?ほら、例えば幽霊に追いかけられながら、閉じ込められた場所から逃げ出すみたいな、そんなの」
「ふーん…、そんな普通のゲームをやって行方不明になるだなんて変な話だな。まあ、ちょっとやってみたい気はするけど」
「えっ!? ………やりたいの?」
「だって面白そうじゃねーか。俺、アドベンチャーとか好きだし」
「違う!そういう意味じゃないの!そこまでして行方不明になりたいのかって…!」
「何なんだよお前、心配しすぎだって。だからそれは所詮、ただの噂だろ?そんなんでビビるなんてどんだけだよ」
「…」
歩は黙ってしまった。そしてまた、口を開いた。
「ねえ、波也」
「ん?」
「もし、の話なんだけどさ」
「…?」
そのときの歩は、寂しげな雰囲気だった。
いつも俺を怒鳴りつける歩とは違って、今でも消えてないなくなってしまいそうな顔をしていた。
「もし、私が私じゃなく、別の誰かだったとして、もうすぐ消える存在だったとしても波也は…、私のこと忘れない?」
「…なんだよ、急に。歩は歩だろ?別の誰かだったとしても、今まで俺と過ごしてきたのは事実だし…、それに消えるだなんて言うんじゃねえよ。お前が居なくなったら俺、朝起きれなくなるじゃねーか」
「……そう、だよね。ありがとう」
俺の言葉に安心したのか、歩はフッと笑顔を見せた。
俺はこの歩の笑顔が好きだ。歩が笑ってくれると嬉しいんだ。ずっと笑っていてほしいんだ。もし歩が居なくなってしまえば、俺はきっと歩の事は忘れられず、探し続けるだろう。一生…。
俺たちの通う学校は、そんなに歴史のある学校でもなく新しくも無い。ただ、校舎は綺麗だからなんとなく俺はその外観を気に入っている。
「あっ、おーい!燐!燐生徒会長ー!!」
ブンブン、と手を振りながら大声を出して彼を呼ぶ。
空野燐。俺たちの後輩であり、この学校の生徒会長を務める男だ。といっても、燐が俺の跡を引き継いだんだけどな。
俺の声に気がついたのか、燐は呆れたような目で見ていた。今日もまたマスクをつけている。
マスクっていうか、ロックバンドの人が飾りでつけているようなマスクだ。
「そんな大声で呼ばなくても聞こえてるっすよ、先輩…」
「いやぁ、朝からごくろうさん!今日もいい朝だな!」
「何がいい朝よ。私に起こされて文句言ってたくせに」
「いちいちうるせーな、お前は…」
「何よ、本当のことじゃない!」
「ま、まあまあ…」
燐が喧嘩を止めようと中へと入ってくる。燐とは中学からの付き合いだ。だから、信頼関係とかも厚い。
ゲーム好きのとって、燐は天才だと思う。
この前のオンラインゲームの大会で優勝するほどの腕を持つし、勉強の成績もいい。ゲームと勉強を両立できるなんてなかなかのものだ。
「朝から見回りなんて、生徒会も大変ね」
「そうなんですよ。―――ところで、今日から生徒会はある注意を生徒にすることにしたんす」
「ある注意?」
「ええ、最近巷で噂になっている携帯ゲームアプリについてのことで」
「ああ、さっき歩が話していたやつか」
「ええ、【MOre daze】ですよ。行方不明になるだとか疑わしい噂が立っているようですが…、面白がってアプリをやる人が出てきて、歩きスマホをしてしまう人が多くなって。来週、携帯の扱いについて注意を行うために、携帯会社の方を呼んで、体育館で講習を行うそうっすよ」
「げ、面倒くさ…」
そんな長い集会、俺にとっては昼寝の時間としか思えん。すると歩がムッとした表情でこちらを睨んでいた。
「寝たら、起こすからね」
「無理だろ。お前、俺より背が低いから前の方に座るし。残念だったな」
「……ありさ先生に」
「起きます、起きます。全力で真面目に講習受けさせていただきます」
靴を履き替え、下駄箱付近にやってくると燐は「ここだけの話なんですが…」と口を開いた。
「ん?何なんだ?」
「くれぐれも他言しないでくださいっす…、そのアプリをやっている生徒の中に一人だけ―――行方不明者が居たことが、この間会議でわかったんすよ」
「「 ええっ!!? 」」
「声がでかいっす二人共!」
「「 むぐぐっ…! 」」
燐があわてて両手で俺と歩の口を塞ぐ。
信じられなかった。あのゲームで実際にここの生徒が行方不明になった生徒がいる。ただの噂だと思っていたがどうやら本当だったなんて。
「――ぷはっ。それって、この間からずっと欠席を続けてた2年3組の若城さんのこと?」
「! …ご存知なんすか、鬼人先輩?」
「いや、実際に話したことないんだけど、私、保健委員だから欠席者をホワイトボードによく書きにいくの。そのとき、ずっと若城さんの名前が出席停止の欄に書かれていたから、入院かとは思って…」
「3組の担任って誰だったっけ?」
「ああ、そっか。先輩は知らないんでしたっけ…、あなたの従姉の九川先生ですよ。」
「げっ、あいつかよ…」
―――と、その時
「『げ』とは失礼ね?」
真後ろから若い女性の低い声が聞こえた。その女性にしてやられたトラウマを思い出し、俺は本日二度目の絶叫を発する。
「うわあああああああっ!!う、後ろからいきなり話かけんじゃねえよババア!」
「ばっ!?先生に向かってババアとは何よ!?従弟のくせに可愛くないわね!」
「高校生に可愛さを求めんじゃねえ!!」
こいつは九川ありさ。俺の従姉で、この学校の生徒指導の教師である。
俺を見つけるなり、着崩した制服や地毛である銀髪、耳につけているピアスをしつこく指摘してくるから苦手だ。相手も銀髪だというのに、どの口が言うのだろうか。
「先生、今日も若城さんは来ていないんですか?」
「らしいわね。ていうかあんたら朝礼に出なくていいの?講習に参加できなくなるわよ」
「んなもん、面倒だからいいよ。そんな事より俺が気になるのはその行方不明事件だ。」
「行方不明事件―――って探偵でもないのに言う?」
「こういうときは言うんだよ、雰囲気的に!」
「はあ…。ゲームの影響でしょ、それって。まあいいけど…。先生、若城さんが行方不明になった原因ってあの噂になっている『More daze』ですよね?」
「ええ。彼女は急に消えたみたいに居なくなったわ。まるで蝋燭の火が消えるかのようにフッ…、とね。消えたそばには彼女の荷物と開かれた携帯があった。その携帯画面にはその『More daze』のタイトル画面が表示されていたわ」
ありさの話によると、具体的に若城さんが学校に来なくなったのは三週間前くらいのことらしい。最初はなんらかの風邪だと思っていた。
しかし欠席して4日――――どうも、おかしいと思ったありさは、若城さんの自宅に連絡をしたという。だが、若城さんは欠席し始めたときから様子がおかしかったと母親が言っていたそうだ。
ありさが彼女の自宅へ様子を見にいったとき、彼女はどこかぼんやりしていて、まるで心をどこかに置き去りにしてしまった様だったとありさは言った。
そして数日後―――彼女の行方がわからなくなったのだ。
「…茫然自失…」
「!」
「ええ、それがしっくりくるわね…」
「先生、『More daze』の意味がそれなんすよ。これって偶然っすかね…?」
「…わからないわ、それに――――」
――――突然だった。
いきなりここに居る全員の携帯電話が鳴った。全員とも驚いた表情になる。
「な、何だ?メールか?」
「え、なんで四人同時に来るわけ?何かの呪い?」
「いや、偶然…とはいえないっすよねこれは…」
「落ち着きなさい!3人とも学校に携帯持ってきちゃ駄目でしょう、よりによって生徒会長の貴方まで…」
メールの受信ボックスを開いてみると、なんと無題だった。メールアドレスも書かれていないしメールマークがなぜか他のは白いのに、今受信したメールは赤い色をしている。なんだこれ、バグか?まあ確かに長い間使用しているから、そろそろバグってもおかしくは無い。
しかし、それは俺だけでは無かった。
「えっ、ちょ…何これどっからきたの!?差出人のアドレスもないし、無題だしなんか青い…」
「――――え?」
「先輩もですか?俺もなんか黄色なんすけど…」
「私もよ、緑色…」
全員が携帯を差し出す。全員、受信したメールは無題と表示され、差出人のアドレスが無くメールマークに色がついている。
偶然か?
「…開いてみるか?」
「え、あんた何考えてるの?こういうのは開かないほうが一番いいって。削除しちゃえば…」
「無理みたいよ。削除画面がなぜか表示しないわ」
「あ、俺もっす」
「嘘…、どうするのこれ」
「…開くしかないな。せーので開くぞ?」
俺の言葉に三人はうなずいた。このメールは一体何なのだろうか?
「行くぞ、せーえのっ!」
トン、と全員がそのメールを開いた。俺が開いた赤いメール…、それは招待状だった。
『件名:無題
おめでとうございます、これは【More daze】の≪招待状≫です!あなた方はこのゲームの主催者に招待を受けました!よって、あなた方の命の保証は主催者が持っています!今すぐ参加しなければあと1分で心臓発作で死ぬことになります。死にたくなければ、ゲームに参加することをオススメします★』
「―――は?」
開いた瞬間、表示されていたタイマーが動き出した。あと一分で死ぬ―――背筋が凍るような感覚がした。俺が驚いたのは、それだけじゃない。その下の項目に『More daze』と書かれていたこともだ。
(『More daze』。より多くの茫然自失。行方不明になるという噂のアドベンチャーゲーム。若城さんが、行方不明になったといっていた原因のゲームアプリ…)
その招待状が俺たちの元へ来た。これも偶然なのか、そうじゃないのかわからない。いや、もうこれは偶然じゃない。俺の推理だと合っているか知らないが、主催者は恐らく俺たち4人を知っている人物なのかもしれない。文の下には、三つの項目が表示されていた。『参加する』『参加しない』『命削除』と書かれていた。『参加しない』を選択すれば、命はどうなるのだろうか。怖いため選択は出来ない。『命削除』はその
ままの意味で『命を消すこと』なのだろう。だから絶対に選択してはいけない。
――――と、なると『参加する』しか選択肢はない。
「…どうする?『参加する』しか選択肢は無いぞ?」
「気持ち悪い…。何なのよ…、これ…!」
「もしかしたらの話なんすけど…、このゲームの意味は『より多くの茫然自失』って意味っすよね?そして、若城さんが消えたのはこのゲームが原因。彼女が行方不明になるまでの間、彼女は確か―――」
「そのとおり。茫然自失した状態になっていたわ」
「!それって…」
「あくまで俺の推理っすけど…、もしかして若城さんがその状態になったのってこのゲームに参加したからじゃないんすかね?」
「ゲームの世界に行ったっていうのかよ…、そんなありえない話あるわけ無いだろ」
「…あり、える……かも、しれない…」
「え?」
――――歩?
「だって、ほんとに気持ち悪いけど…、4人も同時にこの招待状が来たのって普通ありえない。それって、このゲームもありえないってことなんじゃないかな…」
「鬼人さん…」
「もし、燐くんの話が本当だとしたら、向こうに若城さんが居るかもしれない。居たら、やり方はわからないけれども…、――――私たちで助けるってことも可能かもしれない」
歩のその意見に俺も他の二人も賛成だった。そうだ、可能性は低くはない。向こうに若城さんが居るというなら、助けなければいけない。願わくば、主催者も殴り倒してやりたい。
「いいアイデアだな、歩。可能性は低くないし、参加して若城さんを助けようぜ」
「そうっすね、先輩の言うとおりっす」
「貴方たちの責任は私が取るからね?これでもりっぱな大人だから」
「…うん。…………ありがとう」
そうして、俺たち4人は携帯画面に表示されている『参加する』の項目をタップした―――――…
ああ、始まった。全てが始まったのだ。
この私の世界で、あの外側の世界の人間がさまよい、大切な日々を失っていく。
外側の世界に住んでいる貴方たちはただ、一日の時間を貪っているに過ぎない。大切にしようとしない。
なら、奪ってやる。
そして私の中に取り込めば、この世界は、面白くなるのだ。
待っている長い間、私は全てを思い出した。
だから、その為の『あの子』がこっちへ帰ってくる。
私の分身。
外側の世界へ行った私の『あの子』が私と一つになるために帰ってくる。
外側の世界を知ったあの子。
どんな世界を見たんだろう?どんな人と出会ったのだろう?どんなことを学び、知ったのだろう?
ああ、早く帰ってきて。
そして、あの子の友達を殺さないように『仕掛け』のレベルを低くしておかなきゃ。
生かしたまま、私のところに帰ってきてね…?
そう、あの子の脳内に指示を送った。
ふと、空を見上げると赤と青、そして黄と緑の光が赤い空から降ってくるのが見えた。
「【More daze】へようこそ…、ゲームの参加者さん……。
ゲームスタートね」
少女はにやりと笑い、その場から一瞬にして消えた。
少女が作り上げた空間の赤い空は、何かが起ころうと予兆する黒い入道雲が風に乗って流れていた。
【プロローグ 完】 第一章へ続く
初めまして、鈴ノ木です。私の初のデビュー作品・『More daze』いかがだったでしょうか?
この、More dazeはもともと、私が去年中学二年生のときに思いついた話です。
実は、大学ノートには書いていたのがプロローグの後半あたりであって放置しちゃってる状態なんです(笑)
なのでここからは本当に本当に、More dazeが作られていく…ということなんですね。
まだ未成年なこんな私ですが、応援よろしくお願いいたします!
それでは、鈴ノ木でした!