脳味噌
暑さに負けた脳味噌が
頭蓋の中で腐っていく
味噌は腐っても“醗酵”と呼ばれ
美化されるというのに
脳味噌は腐っても不思議なことに
腐敗臭しかしないのだ
おそらく脳味噌は“NO”味噌で
すなわちこれは『味噌に非ず』なので
美化されることなく腐り落ちていくのだろう
しかし世の中には
『腐っても鯛』という言葉が存在し
たとえ腐っていたとしても
他の雑魚よりはマシだと語る
つまりそれは
天才の脳は腐ったとしても
馬鹿の脳よりはマシであると
そういうことか
そういうことなのか
だとすれば随分な言い様だ
馬鹿の脳味噌は
腐ってしまえばそこで終わりだ
救いようなどないと言うのか
しかしこれもまた世の中は語る
『肉は腐りかけが一番旨い』と
腐る直前の肉ほど柔らかく
旨いものは無いそうだ
つまりそれは
脳味噌は腐りかけが一番良い
腐る直前が一番よく働くと
そういうことか
そういうことなのか
追い詰められてそこで初めて
真価を発揮するのだろう
しかしそれは
天才でも馬鹿でも同じことだ
さて
ここで改めて
辞書でも引いてみようか
“味噌”が意味するところは何処にあるのか
ただ調味料だというだけではないだろう
定義のひとつに
『(調味料の)味噌に似たもの』
とあった
つまり脳味噌とは“NO”味噌『味噌に非ず』ではなくて
もともと
『味噌に似た形をした人間の中の器官』
という意味だったのだ
とんだ思い違いだったということか
やはりこれは
暑さに負けて脳味噌が腐ってしまった所為だろう
蠅が辺りを飛んでいる