⑥☆仕事をする前に……。
仕事内容を聞いたあとケルティムとノルンシェスは宿舎へと向かい……。
ケルティムとノルンシェスは厳つい顔の男から仕事の内容を聞いていた。
「なるほど……オレ達は南側の海岸沿いを往復して戻ってくればいいんだな」
「タダ往復して帰ってくればいいって訳じゃない。魔物の調査と、この船着場を経由しないで島に上陸した者を捕らえて連れてくる」
「そんな人たちが居るのね」
コクッと頷き厳つい顔の男はケルティムとノルンシェスをみる。
「船着場に停泊して上陸すれば金がかかるからな」
「金かぁ……オレには価値が分からない。そんなに金って必要なのか?」
「……ケルティム、そんなことまで記憶にないなんて」
マズイことを言ったのかと思いケルティムは返答に困ってしまった。
「ほう……記憶喪失か、そりゃ大変だったな」
「いや……全て忘れた訳じゃないから、そんなに大変じゃない」
「全てじゃないってのが救いってことか……まあ無理ない程度にやりゃあいい」
そう言われケルティムは頷き苦笑する。
「そうそう……オレは、この船着場の管理を任されてるゼルノン・ハックってんだ。まあ半年もすりゃ交代するんだがな」
「じゃあ交代したばかりなんですか?」
そうノルンシェスに聞かれゼルノンは、コクッと頷いた。
「そうなると、ケルティムが……この船着場を通ったとしても分からないわね」
何かケルティムについて手掛かりがみつかるんじゃないかと思っていたノルンシェスは残念と肩を落としている。
「なんも役にたてなくて……すまん」
それを聞いたケルティムは心の中でホッとしていた。
「いや……大丈夫です。それよりも仕事って何時からやればいいんだ?」
「今日からだが先ずは宿舎を案内させる。その辺の椅子にでも座って待っててくれ」
そう言われケルティムとノルンシェスは近くにある長椅子に座り待つことにする。
「残念だったね」
「何をだ?」
「記憶を取り戻すための手掛かりがみつかるかもしれなかったのに……」
心配に思いノルンシェスは、ケルティムへ視線を向けた。
「そ、そのことか……記憶なんて思い出せなくてもいい。これから新しい記憶を作っていけばいいしな」
「本当にそれでいいの? 家族のことも覚えてないのよね?」
「家族……覚えてない。だからって今それを考えたって仕方ない」
それを聞きノルンシェスは余りにもケルティムが哀れに思い涙を浮かべる。
「そうね……それに何時かは思い出すかもしれないもの」
「あ、うん……そうだな」
俯きケルティムは溜息をついた。
二人が話をしている間にゼルノンは自分の裏で休憩していた痩せ型の男に「宿舎の案内をさせる者を男女二人連れてこい」と指示する。
それを聞き痩せ型の男は指示され嫌々ながら小屋から外へ出ていった。
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暫くして痩せ型の男は二人の男女を連れて小屋の中へ入ってくる。と同時に再びゼルノンの後ろにある椅子へと向かい座った。
「この二人を宿舎に案内すればいいのよね?」
この女性はルナムセス・ヌルド、二十二歳。冒険者で、この船着場の警護と管理補助をしている。勿論ギルドで依頼を受けてだ。
「ああ、そういう事だ」
「面倒だ……なんで、こんな事までしなきゃならねえんだ?」
この面倒くさそうな顔をしている男性は、タンゼム・シェズリ。ルナムセスと同じ依頼で船着場にいる。
因みに、この二人は別にパーティーを組んでいる訳じゃない。
「嫌なら報酬を減らすぞ」
そう言われタンゼムは「へーい」と渋々了承した。
その後お互い自己紹介を済ませると、ケルティム達四人は小屋を出て宿舎へと向かう。
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ここは女性用の宿舎だ。
宿舎にある部屋の前では、ノルンシェスとルナムセスが話をしている。
「ここが貴女の部屋よ。まあ他も空いてるんだけど……」
「空いてるってことは、もしかして女性って少ないんですか?」
「冒険者自体女性が少ないからね」
それを聞きノルンシェスは納得した。
「アタシは隣の部屋にいるから何か聞きたいことがあったら何時でも言ってね。まあ仕事してる時以外にだけど」
「はい! 助かります。その時はよろしくお願いします」
その後ノルンシェスは「荷物を置いたら仕事しないと」と言いルナムセスと別れ部屋の中に入っていった。
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男性用の宿舎に着き部屋の中に入るとケルティムはタンゼムに色々説明をしてもらっている。
「記憶がねえんじゃ大変だろ。なんか分からないことがあったら言ってくれ。オレに分かる範囲のことなら教えてやる」
「ありがとう、そうする……」
申し訳なく思いケルティムは胸が苦しくなった。だがなぜそんな風に感じ思ってしまうのか分からないようである。
それだけ人間に近づいているのだろうか?
それとも、この人間的な感情も魔王のギフトなのか……。
「じゃあオレは自分の部屋に戻る。お前は、このあと仕事だろ?」
「うん、そうみたいだ。ユックリしたいけどな」
「誰だって仕事もしないで、のんびりしてえよなぁ。だが金がないと暮らしていけない。金さえあれば好きなもん買ったりできる」
それを聞きケルティムは人間って大変なんだなぁと思った。
(思ってたよりも人間って苦労してんだな)
(そうみたいだね。だけど金さえあれば欲しいものが手に入るよ)
(そうだが……。魔物の暮らしのが自由だった気もしねえか?)
そう問われスイティムは「そうだね」と応える。
そうこう思っているうちにタンゼムは部屋からいなくなっていた。
(行ったみたいだね)
(そうだな。じゃあ必要な荷物だけ置いて、ノルンと待ち合わせをした船着場の入口に行くぞ)
背負っていたリュックを床に置くと中からバッグを取りだす。そして、そのバッグの中にナイフや色々なアイテムを入れる。
(洞窟から持って来たアイテムと、ノルンからのを合わせると結構ある。厳選して持ってった方がいいよな)
(木の棒なんて必要ないし、バッグの中に入らないから)
(そりゃそうだ。元々持ってく、つもりなんかねえぞ)
それを聞きスイティムは、ケラケラと笑っていた。
(ごめん、そうだね……普通は持ってかない。だけどケルドスなら、やりかねないって思ったんだ)
(いくら能無しのオレだってなあ……そのぐらい分かる!)
ケルドスよ……自分が能無しだってことを認めるのか(汗
(そう? それならいいんだけど……じゃあ荷物も持ったし)
(あ、ああ……そうだな。なんか誤魔化された気もするんだが、まあいいか)
バッグを持つとケルティムは部屋を出てノルンシェスの待つ船着場の入口へと向かった。
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ここは船着場側の入口付近である。
ノルンシェスは早めに来てケルティムを待っていた。
(今日は良いことばかり起きてるわ。ケルティムに逢えたし……。家出して正解だった……やっぱり私の行動は間違ってなかったのよ)
そう、ノルンシェスは家出をしこの島へと来たのである。
なんでわざわざこんな島に来たのかというと……まあそのうち明かすとしよう。
「ノルンシェス! もう来てたんだな」
そう言いケルティムは、ノルンシェスのそばへ駆け寄った。
「あ、うん……早くケルティムと海岸沿いのみまわりに行きたかったから」
「そうなのか……でも、その前に小屋に寄っていかないとな」
「それでも一緒だからいいの!」
なんでそんなことをノルンシェスが言ったのかケルティムは理解できないでいる。だが面倒なので聞くのをやめた。
その後ケルティムとノルンシェスは小屋に行きゼルノンに仕事を開始することを告げる。
それから二人は小屋を出て船着場から南側の海岸沿いのみまわりを開始した。
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