⑤☆ケルティムの初依頼(仕事)
依頼書に書かれている船着場にケルティムとノルンシェスは向かい……。
必要な事を記載したあとノルンシェスはラキセアにみせる。
「……記載の漏れは、なさそうですね。では依頼書の手続きをします」
カウンターの下の棚から書類を取り出すとラキセアは先程ケルティムが選んだ依頼書の脇に置いた。
次いで依頼書をみながら必要な項目に記入する。記入が終えラキセアは書類を見直し受領印を押した。
「では依頼内容を確認後サインをしてください。ノルンシェスさん代筆をお願いしますね」
そう言われノルンシェスはケルティムの代わりに書類を確認して依頼書と両方にサインをする。
「これで、ヨシっと! あとは西の海岸にある船着場に行けばいいのよね?」
サッと確認した後ラキセアは依頼書をノルンシェスに渡した。
その依頼書をノルンシェスはバッグに仕舞いラキセアをみる。
「ええ、そうなります。船着場の見張り小屋には、この島を管理しているテロルバ国の人たちが居るので渡した依頼書をみせてくださいませ」
「分かりました」
そう言いノルンシェスは「行こう!」とケルティムの手を取り歩き出した。
まだ聞きたいことがあったケルティムは、ノルンシェスに手を引っ張られて嫌だと思うも言えない。
そのためケルティムは、アタフタしながらノルンシェスに引きずられるようにギルドの外へと出ていった。
そんな二人をラキセアは、ニコニコ笑顔で見送っている。
その隣でゼサルークは「やっと行ったか」と呟き、カウンター奥の自室へと向かった。
振り返りラキセアは、ゼサルークが視認できなくなるまで後ろ姿をみつめている。
(相変わらず忽然と現れたと思ったら何も言わず部屋に籠ってしまう。部屋で何をしているのでしょうか?
気にはなりますが……プライベートなことですし追求しないようにしましょう)
そう思いラキセアは書類をカウンターの下にある棚に収納した。
★♧★♧★
ここはドウデモ村の外で、カサカサ草原である。
村と船着場の途中で、この草原の道沿いをケルティムとノルンシェスが話をしながら歩いていた。
「この辺のことも覚えてないのね?」
「あーうん……全然、記憶にない」
「今から行く船着場も?」
そう問われケルティムは首を傾げる。
「どうだろう……行ってみないと分からない。多分、覚えてないかも」
「そう……そうかぁ。記憶……早く思い出せるといいね」
「ノルン、ありがとう。そうなるといいけどな」
笑みを浮かべてノルンシェスは「大丈夫よ……絶対、思い出せる時がくるわ」と言いケルティムをみつめた。
「ああ……そうだな」
騙してることで申し訳なく思いケルティムはノルンシェスから目を逸らし空を見上げる。
(なんか胸が苦しい)
(オレもだ)
思うもケルティムは、なぜそうなるのかを理解していなかった。
「あと少しで着くわよ。それにしても……魔物と遭遇しないわね」
「この辺にも現れたりするのか?」
「うん……何時もなら弱い魔物が、ウロウロしてるんだけど」
そう言いノルンシェスは周囲をキョロキョロみる。
「なんで魔物がいないんだろうな?」
不思議に思いケルティムは、グルリと見渡し青ざめた。
(遠くにみえるのって赤スラじゃねえのか?)
(あーホントだ! 赤スライムの大群だね。その他にもトカゲ鳥も、いっぱい纏まって飛んでる)
(グルッとみた限りだと、オレ達から逃げてるような気がするぞ)
怪訝に思いケルティムは首を傾げる。
「ケルティム、どうしたの?」
問いかけられケルティムは驚き「ヒャッ!?」と変な声が出てしまった。
「なんでそんなにビックリしてるのよ」
「あっ……うん、どうして魔物が消えたのか考えてた。だけど分からなかったから首を傾げたんだ」
「そういう事かぁ……確かに変よね。ここで何かあったのかな? 天気で暑いはずなのに……急に寒くなってきたんだけど」
何が起きているのかとノルンシェスは怖くなって体を震わせて怯えている。
なぜ魔物たちが、ケルティムとノルンシェスの周囲にいないのか? それは脅威的な魔の源である魔気が常にケルティムの体から出ていたからだ。
そのことについてケルティムは自覚していないのである。
それと、この魔気は高位ほど強力で魔物や魔族でしか感知できないのだ。
それなのにどうしてケルティムが強力な魔気を放っているのかと云うと、これも魔王からのギフトである。
多分ケルティムが知ったら迷惑だとツッコミを入れるだろうと思う。
「周囲には、なんの気配もない。もしかしたら……誰かが魔物を倒して行ったのかも」
「そうかも……ううん! 絶対そうだね」
そう言いノルンシェスは、ホッと胸を撫で下ろした。
「魔物がいない今のうちに行こう!」
「そうだね。今なら体力を温存できるし」
それを聞きケルティムは頷き笑みを浮かべる。
その後、二人は話をしながら船着場へと歩きを速め向かった。
★♧★♧★
船着場へ辿り着いたケルティムとノルンシェスは周囲を見渡している。
「ここが船着場なのかぁ」
「そうよ……んーまあいいか。一応、船がなんなのか……教えておくわね」
なんとなく船のことは分かっていたケルティムだったが一応ノルンシェスの説明を聞くことにした。
船着場に停泊してる大きな船を指差しノルンシェスは説明し始める。
「あの船にのれば……色んな大陸に行けるのかぁ」
「そうよ……もしかしたらケルティムの記憶も戻るかもしれないよね」
「あ、ああ……そうだといいな」
そう言うもケルティムの顔は、ひきつり強張っていた。
「大丈夫よ! 絶対に思い出せるから」
満面の笑みを浮かべてノルンシェスはケルティムをみつめる。
「ノルン、ありがとう。オレも思い出せるように努力する」
「そう、それでいいのよ。じゃあ急ぎましょ!」
そう言いノルンシェスは船着場の近くにある小屋へと向かい歩き出した。
そのあとをケルティムが追いかける。
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小屋の中に入ったケルティムとノルンシェスは眼前に居る厳つい顔をした男に睨まれ怖くなって逃げ出したくなった。
「あ、あの……ギルドから依頼を……」
そう言うもケルティムの声は、これ以上でない。
「ほう……余りにも身なりが良くて女連れだったから、テッキリ何処ぞのお偉いさんの坊ちゃんかと思ったぜ」
「は、あ……言っている意味が分からない」
「ケルティム……理解できないなら分からない方がいいかも」
どうしてノルンシェスがそんなことを言ったのか理解できないケルティムは怪訝に思った。だが聞いても理解できないと思い「そうだな」と苦笑し納得したフリをする。
「まあいい……そんで依頼書は持って来たんだろうな?」
そう問われてノルンシェスは依頼書を厳つい顔の男にみせた。
「うむ……いいだろう。二人ってことは、パーティーだよな?」
「そうなるけど……何か不都合なのか?」
「いや、パーティーなら……それで構わん。ただ男女だと分ける必要があってな。恋仲同士を引き裂くようなことはできんし」
そう言われるもケルティムには理解不能である。
ノルンシェスに至っては顔を赤くして、アワワ状態だ。
「恋人同士……まだそんな関係じゃ、ないです」
「まだ? なるほど……これからってことか。じゃあ寝泊まりは別の場所でもいいってことだな」
そう聞かれノルンシェスは、チラッとケルティムをみる。
「オレはどっちでもいいぞ」
「そうよね……そう、それで構わないです」
そう言うもノルンシェスは残念に思っていた。
表情が暗いノルンシェスをみてケルティムは不思議に思い首を傾げる。
その後二人は厳つい顔の男から仕事の説明を聞いていたのだった。
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