①☆旅立ちと初戦闘と出逢いと
洞窟を出て森を歩いていたケルティムは女性の悲鳴を聞き……。
ここはネクライの洞窟がある薄墨の森。名前の通り灰色や黒っぽい木々と草花が多いのである。緑色のものはなく土までも灰色や黒っぽかった。
周囲は薄暗く、ゴーストなどが出てきそうな雰囲気である。
洞窟から数キロ離れた森の小道をケルティムは、キョロキョロしながら歩いていた。
「これが外なのか? なんか洞窟と変わらねえ雰囲気だ」
「うん、もっと明るいと思ってたよ」
「ああ……まあ違う所もあるがな」
そう言い空を見上げる。
「大きな木が多すぎて黒っぽい葉っぱしかみえねえ」
「こうみると葉っぱの洞窟みたいだね」
「なんか想像してたんと違って……ガッカリだ」
そうこう話を独り言のように呟きながら道なりに歩いていった。
――……キャアァァー!?……――
何処からか女性の悲鳴が聞こえてくる。
「今のって人間の女の悲鳴だよな?」
「多分そうだと思う。何かあったのかな?」
「行ってみるか?」
「うん……気になるし行こう」
それを確認すると悲鳴が聞こえた方へ向かい駆けだした。ヤッパリ中身は魔物なので助けようと云う気持ちが湧かないようである。
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悲鳴のした方までくると、ケルティムは五体のゴブリンに襲われそうになっている女性の姿が視界に入ってきた。
(どうする?)
(どうするって、こういう時って……人間なら助けるんじゃないかなぁ)
(でも知らねえヤツを助けんのか?)
そう問われスイティムは「それも、そうだね」と納得する。
(じゃあ助ける方を口実にして能力を試そうよ)
(そっちの方が面白えかもな。でも相手は、ゴブリンだぞ……勝てるか不安だ)
(やってみないと分からないよ)
そう言われて視線をゴブリンの方へ向けた。
「そうだな……やってみるか」
そう言いケルティムは能力の使い方を脳内で瞬時に把握する。そのあと、ゴブリンに掌を向けた。
《対象は五体のゴブリン 無力化しろ!!》
そう言い放ったと同時にゴブリン達の頭上に魔法陣が現れて、ピカッと激しくひかる。その後、魔法陣から光の柱がゴブリンへと降り注いだ。
その降り注いだ光は、ゴブリンの全身を覆い包んでいった。
(成功なのか?)
(一応は成功だと思うけど……まだ、どうなるか分からないよ)
ゴクリと唾を飲み込みケルティムは光に覆われたゴブリンを見据える。
ゴブリンを覆っていた光が消えるも、なんの変化もないようだ。
(何も変わらないね)
(ああ……意味のない能力なのか?)
そう脳内で会話をしているウチにも、ゴブリンが女性の近くまで来ていた。
(あーこのままじゃ、ヤバそうだな)
(うん、そうだね。剣で倒してあげたら?)
(倒せるのか? ゴブリンっていったら低級魔物の中でも上位の方だぞ)
そう、スライム→スケルトン→……――――……ゴブリン……というぐらいの差があるのだ。
(それもそうか……じゃあ放っておく?)
(そんなこと……できねえよな)
そう思いケルティムは剣を抜き構える。と同時に半分ヤケ糞で、ゴブリンへ向かい駆け出した。
ゴブリンのそばまでくるとケルティムは剣を横に振り上げる。
(悪い……今のオレ達は人間なんでな)
振り上げた剣を一閃し乱雑にゴブリンを斬っていった。
ゴブリンは反撃しようとするも能力や腕力が無力化していて、いやそれだけじゃない。何も考えられないのか、ケルティムをみたまま突っ立っている。
(どうして反撃してこねえ?)
(もしかしたら能力のせいかも)
(あーなるほど……)
と最後の一体を躊躇いなく斬った。
「フゥー……倒せた」
そう言い放ったあとケルティムは面倒なのでこの場を立ち去ろうとする。
「あ、あの……待って!!」
その言葉を聞きケルティムは女性に背を向けたまま立ち止まった。
(どうする?)
(どうするって……一応、話だけでもしといた方がいいんじゃないかな?)
(そ、そうだな……)
そう思いケルティムは女性の方へ振り返り視線を向ける。
「な、なんの用だ?」
「あ、あーえっと……ありがとうございました!」
そう言いながら立ち上がり女性は頭を下げた。そして頬を林檎のように赤く染めケルティムを真面にみれないようだ。
「そんなことなら問題ない。用がそれだけなら……」
なるべく人間と関わりたくないためケルティムは早くこの場を立ち去ろうとする。
「用……そうそう、あります! だから待ってください」
「用があるんじゃ仕方ないか」
歩みを進めようと地面を踏み込む寸前でやめケルティムは再び女性の方を向いた。
「もし良ければ私の用心棒になってくれませんか? お金が必要なら払います!」
「ヨウジンボウ?」
言葉の意味が分からずケルティムはそう問いかける。
「え、えっと……私を護って欲しいってことなんだけど」
「あーそういう事か。でも、なんで護らないといけない?」
「私は駆け出しの冒険者。ゴブリンの討伐をギルドでみつけ依頼を受けたんだけど思ったよりも強くて苦戦していたの。でも、それを貴方が簡単に倒してくれたのよ」
そう言い女性は目を輝かせてケルティムをみていた。
「ギルド?? 言っている意味が分からない。依頼ってことは誰かに頼まれたのか?」
「……近いわね。でもギルドを知らないってことは冒険者じゃないの?」
「冒険者って……冒険をする者のことだよな。それとギルドってヤツと、どう関係してるんだ?」
それを聞き女性の目は点になっている。その後、我に返り口を開いた。
「……身なりや強さから最高ランクの冒険者かと思ったんだけど違ったみたいね」
「だから……意味が分からないって言ってる!」
「ギルドのことを知りたいの?」
そう問われ頷きケルティムは、ムカつき頬を膨らませる。
「知りたいから聞いてるんだ!」
「そう怒らないでよ。ギルドのことを知らないなんて、どんな辺境の地から来たの。まあ、そうね……知りたいなら教えてあげるわ」
「無理にじゃない。教えるのが嫌なら別にいいぞ」
そう言われ女性は慌てて「教えたくない訳じゃないのよ」と取り繕った。そして、ギルドについて説明し始める。
「ふ〜ん……なるほど。その冒険者ギルドっていうのに登録すれば仕事がもらえて金になるってことなんだな」
「ハァハァ……そういう事よ。どんだけ細かく説明させるの。もう大丈夫よね?」
説明だけに力を使い果たしたらしく女性は疲れきってしまった。
「多分……な。あーいや、まだある。その冒険者ギルドって誰でも登録できるのか?」
「ええ、できるわよ。登録したいのなら案内するけど」
「そうしてくれると助かる」
それを聞き女性は「分かったわ」と頷き笑みを浮かべる。
「……そうだった! 私はノルンシェス・ミゼルカ、よろしくね」
ああ、そうそう。この女性は、ノルンシェス・ミゼルカと云い十八歳だ。冒険者としては、なりたてホヤホヤの初心者である。
オレンジ色の癖毛が特徴的な髪で可愛い容姿だ。
そんな彼女をみてもケルティムが、なんの反応も示さないのは魔物の思考だからなのであろう。多分……。
(なんで名前を名乗ったんだ?)
(名前を知らないと会話に困るからじゃないかな?)
(そういう事か……)
そう思ったあとケルティムは口を開いた。
「オレは、ケルティム・イムルトン。記憶が曖昧で殆ど覚えていない。だから……色々教えてくれると助かる」
「記憶喪失?? んー……見た感じ、それとも違うみたいね」
「部分的なものなんだ。分かることと、そうじゃないものがある」
それを聞いたノルンシェスは「分かったわ」と笑みを浮かべる。
その後、二人は近くにあるドウデモ村へ向かったのだった。
読んで頂きありがとうございます(*^▽^*)
では次話もよろしくお願いします٩(^‿^)۶




