②★議論とご褒美
なんで人間になったのかをスイティムとケルドスは話し合っていて……。
あれからスイティムとケルドスは話し合っていた。
「人間になっちゃったけど、どうする?」
「戻れねえんじゃ……このままの姿で一生すごすしかねえよな」
「そうだね……そうなると、ここに居れないんじゃないかな?」
そう言われケルドスは首を傾げる。
「……別に居たっていいんじゃねえのか?」
「今のボク達は人間だよ。それに多分……魔物の言葉なんて分からなくなってると思うんだ」
「そうなのか? 中身は魔物なのにな」
納得がいかないケルドスは怪訝な表情を浮かべた。
「そうだけど……今は人間だしね」
「そうかもしれねえ。だが……実際に確認しねえと分からねえよな?」
「そうだね。だけど、どうやって確認するつもり?」
そう言われケルドスは、クルリと周辺をみる。
「仲間か他の魔物が居ねえかな」
「ここには滅多にこないと思うよ」
「なんでだ?」
スイティムの言っていることが理解できずケルドスは首を傾げた。
「この泉は魔物にとって有害なんだ」
「そうなのか? オレは何時も、ここで顔を洗ってたぞ!」
「…………じょ、冗談だよね?」
そう問われてケルドスは首を横に振る。
「嘘じゃねえぞ」
「なんで浄化されないんだ?」
「浄化?? 言っている意味が分からねえ」
訳が分からずケルドスは混乱してきた。
「この泉の水は聖水と同じような効果があるんだよ」
それを聞いたケルドスは驚き目を丸くする。
「聖水……この水が。でも、どうして浄化されねえんだ?」
「そんなの分かる訳ないだろ。ボクの方が知りたいよ。だけど、もしかしたら……この泉の効果で融合できたのかも」
「この水を浴びてたからか?」
そう問いかけられスイティムは「うん」と頷いた。
「じゃあ、オレは……泉の効果で清められてたってことだよな?」
「うん、それだけじゃないと思う。人間として生きるチャンスを神さまが与えてくれたのかも」
「だが、スイティムと融合は偶然だろ?」
人間になったことが泉のせいだとケルドスは、どうしても思えないでいるようだ。
「ボクとの融合は偶然だと思う。だけど、そう考えないとあり得ないと思うんだ……それに普通は他種の魔物と融合なんてできないんじゃ」
「そうだとしてだ……なんで神は、すぐに人間にしなかった?」
「ボクには、そこまで分からないよ」
なんて応えたらいいのか分からずスイティムは誤魔化した。
融合して人間になった理由とは違うが一応説明しておこう。
……――ある日ケルドスは、この神秘なる泉をみつける。その時は邪悪なる心を宿していた。
人間と戦いボロボロになり、この泉に辿り着いたのである。因みに、この時のケルドスはスケルトン剣士で中級魔物だった。
思考もあるのかないのか分からない戦闘だけを強いられる魔物だ。
そんなケルドスは何かに導かれるように、この泉にきた。その時のことをケルドスは覚えていないようである。
疲れきっていたケルドスは何気に泉の水を両手ですくって飲んだ。
勿論、水は骨の隙間から漏れて着ている服に滲んでいる。それでも喉が渇いているかのように無意味に飲んでいた。
そんなケルドスの体は全身から放たれていた禍々しいオーラが消えていったのである。
その後のケルドスは中級から低級魔物とかし、なぜかこの泉を好きになり毎日顔を洗いに来ていたのだ。
そのためか魔物でありながら神の祝福……いや幸せになって邪気が消えただけである。
なのでスイティムとケルドスが融合したのは、この泉のせいじゃないのであった――……
と、こんな経緯なのでスイティムの予想は大ハズレである。
「まあいっか……それよりも、これからどうするんだ?」
「そうだなぁ……人間になっちゃったしね」
「この洞窟を出るか?」
その問いにスイティムは首を傾げる。
「いったい何処に行くつもりなのさ」
「行くあてなんかねえ。だけど折角、人間になったんだ。外の世界をみてえって思った」
「確かに外がどうなってるのか気になるね。それに今の姿なら人間の世界を旅して歩ける」
そう言ったあとスイティムは、これから起こることを思い浮かべた。そして、ワクワクしている。
「ああ、どんなもんがみれるかな。オレは生前のことなんて覚えてねえし」
「そうか……じゃあ生まれ変わったと同じだね」
「そうだな。何時までも、ここで話してたってしょうがねえ。ってことで、そろそろ行くか?」
周囲を見渡したあとケルドスは立ち上がった。
「そういや……着てるもんが、ボロボロのまんまだ。こんなんじゃ外を歩けないぞ」
「そうなの?」
「そうじゃねえのか? この洞窟にくる人間は、みんな綺麗な服を着てたぞ」
そう言いながらケルドスは、みえる範囲の体をみる。
「そういう事かぁ。だけど服なんて何処にあるんだ?」
「何処だろうな? 人間が宝箱とかから、アイテムとか出してたぞ」
「そういった宝箱は強い魔物が守ってるよ」
それを聞きケルドスは「それじゃ無理だな」と諦めた。
「そんじゃ着る物を、どうすんだ?」
そうケルドスが言った直後、神秘なる泉は光を放つ。
その光に気づき泉へ視線を向ける。
「「……!?」」
光は一瞬で消え泉付近の地面に装備一式と手紙が置かれていた。
「これって……やっぱりケルドスは神様から祝福されてるんだよ」
「そうなのか……なんか変な感じだ。魔物のオレが神に好かれてるなんてな」
「ケルドスは、もう魔物じゃない。人間になったんだからね」
そう言われるもケルドスは納得いかないようである。
「人間かぁ……でも脳内じゃ、スイティムが居るんだぞ」
「そうかもしれないけど……どうみても人間だよね?」
「見た目はな」
ハァーっと溜息をつきケルドスは装備一式へ視線を向けた。
「折角だから着替えようよ」
「そうだな……何時までも、ここに居たくねえし」
そう言いながら装備を取ろうとする。
「手紙……どういう事だ?」
手紙を取り読み始めた。
「なんて書いてあるの?」
「…………魔王さまからだ! 人間になったなら必要だろうって。それと、もう戻ってくるんじゃねえって書いてあるぞ」
「そうみたいだね。それと、この泉は神秘なる泉じゃなくて魔物のために作られた疲労回復の泉らしいね。それと人間になった理由って魔王さまの悪戯だってさ」
その文面を読みスイティムとケルドスは青ざめる。
「やられたな。まあ……だが、オレ達にとっての神は魔王さまだ」
「うん、そうだね。きっと、これは魔王さまからの……ご褒美だね」
「ああ……着替え終えたぞ。リュックってヤツも背負ったし剣も装備した」
これは見た目だけなら結構、強い冒険者だ。
「いい感じだね。流石、魔王さま。勇者のような装備をくれるなんて」
「勇者……まあ、そう言われてみてえけどな」
「そういえば名前どうする?」
そう聞かれケルドスは、どんな名前にしたらいいのかと思考を巡らせる。
「そうだな……オレとスイティムの名前を入れて、ケルティム・イムルトンってのはどうだ?」
「ボクは、それでいいと思う」
「じゃあ、これで決まりだな。あとは……そうだ! 能力が変わってたよな?」
そう思いケルドスは、どんな能力なのかを探り始めた。
「確か【無力化】だったと思うよ」
「そうみてえだな。だけど……無力化って、どんな能力なんだ?」
「どんな能力か分からないけど、あとで使ってみようよ」
そう言われケルドスは頷き無作為に遠くへ視線を向ける。
「そんじゃ、そろそろ行くか!」
「うん! 行こ〜」
一歩ずつ前に進んだあと笑みを浮かべ洞窟の出入り口へ駆け出した。
そして、ここからケルティムの冒険の旅が始まる。
読んで頂きありがとうございます(o^^o)
では次話もよろしくお願いします(*´꒳`*)




