第7話 愛しの我が太陽 ーーロマーニャ視点
「アルコス! 急いで。 もう、待ちきれないわ!」
「おう! 全速前進だぜ!」
誘拐犯のミートからお手紙をもらったの!
なんと今、景伯荘にいるんだって。
景伯荘と言えば、歓楽街として有名じゃない!
私たちの要塞完成祝いに、ぴったりだわ。 近くにいる行商人の列なんて蹴っとばして、景伯荘へゴーよ。
「うふふ~ お見上げなにがいいかしら?」
「ロマーニャがなにを用意しても、きっと大丈夫さ。 俺たちの太陽は喜んでくれるさ」
「まあ、アルコスったら! 大好き! ⋯⋯じゃ、全部買っていきましょう!」
「おいおい。 そんなに渡したら、俺たちの愛で押し潰されちゃうな! ハハ」
さて、準備も出来たし、迎うわよ!
「こんにちは! 支配人の方? こちらに宿泊の愛しの太陽はどこ?」
「愛しの太陽様ですか? ⋯⋯あいにく、お泊まりではないようですが?」
なんですって! どう言うことよ! あの女ーー
「支配人⋯⋯失礼ですが、ミートと言う名前で登録されてないですか?」
「⋯⋯ああ、その方でしたら⋯⋯」
「いるのね。 どこにいるのよ! さっさと出しなさいよね!」
まったく! 自分の名前で登録しているなんて! 私の太陽の名前で登録しなさい よ! まったく、わかってないわね。
「⋯⋯それが」
「なに? どうしたの?」
「ご本人様はおられるのですが、意気消沈しておりまして⋯⋯なんでもお連れ様が失踪した⋯⋯」
「その女はどこにいる! ボコボコにしてやんよ!」
「ひい⋯⋯お客様。 館内での暴力はおやめください」
「ロマーニャ、落ち着くんだ。 まだ失踪したのが我が子とは限らないからな」
「⋯⋯いえ。 失踪したのは少年ですね。 私が証人です」
「今すぐに! その女を出せ!」
ああ! 愛しの太陽! なんと言うことなんでしょうーー
「さっきからうるさいぞ。 迷惑客め! 儂は今イライラしているんじゃ!」
「⋯⋯あらあら。 これはこれは。 誘拐犯じゃないですか?」
「誘拐犯じゃと! 儂にはミートと言う名前が⋯⋯な、ロマーニャ! どうしてここにいるんじゃ?」
私は、惚けている彼女の胸元を掴み上げた。
「どこにいるのよ! 私の太陽は⋯⋯」
「奴は、失踪したんじゃ。 これを残してな⋯⋯」
私は、うめく彼女から手を離して、紙を確認する。
師匠へ。 手紙での対応、誠に申し訳ございませんがここに書かせていただきます。 俺は旅立ちます。 自分が勇者である存在に疑問があります。 この世に生を受けてから、亡くなった両親。 そして、まもなく死ぬ師匠。 繰り返されて痛感する、変えられない現実。 俺は疲れました。 ですので、これからは自分がしたいように生きようと思います。 そうだな。 まずは、最愛の人に会いに行こう!
では、この世に名前を授けられなかった勇者より。
「とても、儂は悲しんでおるのじゃ。 ⋯⋯うん? 二人してどうした? ああ、儂は元気じゃぞ! ホレ。 温泉に浸かってそのあと、ぐっすり寝たからの。 風邪が治ったのじゃ最高じゃ」
『お前を処刑する!』
「ええ? なんでじゃ? あの子が旅立ったのは悲しいが、定めとして一緒に悲しもうぞ! なあ? あの子と一緒にいた時間は、お前らより儂の方が長いんじゃから。 ブブ。 それにしても、ウケるの! あの子の中では、お前たちは死んでいるそうじゃぞ。 ⋯⋯後、その太陽だとか言う大層な名前も知らないようじゃしのう」
長々と笑いながら話す、大罪人。
決めた。 こいつは、殺す!




