第5話 師匠の小言ーー師匠視点
「この! 誘拐犯め! うちのかわいい太陽を強奪しておいて、まだ言い訳をすると言うの?」
「だから! 儂は、そんなことをしてないのじゃ~」
私は酔ったロマーニャから、攻撃を受けていた。 アルコスや、村のみんなが彼女を諌めるが、村一番の強者である彼女には勝てない。
「⋯⋯だったらなに? どうやってアンタの所に移動したのよ? あの子はまだ、赤ん坊なのよ? 自力で移動するなんてありえないわよ!」
たしかにそうじゃ。 それこそ、神の力でなければーー
「⋯⋯そうじゃ。 勇者だからじゃ! きっと! 神の力によって、テレポートしたのじゃ!」
突然、叫ぶように主張する儂に、アルコスたちは顔を見合わせた。 そこ! 殴られすぎて気が狂ったとか、言うでないぞ!
「⋯⋯神ね? まあ! さすが神ね! 見る目あるわよ!」
「そうじゃろ? だから、儂じゃないのじゃ⋯⋯」
そう言うと、私を持ち上げてはしゃぐ、ロマーニャ。 やめてくれ! 儂はもうボロボロじゃぞーー
「これは、祝いが必要ね! ミート! 飲むわよ!」
「え? 儂は酒が苦手だから、遠慮させてくれ⋯⋯」
「もう! なに言ってんのよ。 ホラググっと⋯⋯」
結局、暴行から酒に変わっただけじゃったのうーー
「イテテ。 もう最悪じゃぞ⋯⋯」
私は目が覚めて、テントから出る。
すると勇者が、村を見ながら絶句しているのを見かけた。
「⋯⋯お、お主。 やはり、自力でここまで来たんじゃな⋯⋯ゴホオ」
やはり、そうか。 コヤツは自力でここに来たんじゃな。 まったく無垢な顔をしておる。 一言、言ってやらんとな。
「まったく! お前のせいじゃぞ! わかっておるのか! お陰で儂は大変な目にあったのじゃぞ ⋯⋯っておい、寝たのか? まあ、まだまだ赤ん坊じゃしな。 このくらいにしてやるかの」
月日は過ぎ、儂は所用で移動をすることに。 なんとか、ロマーニャを説得したが、その条件は面倒なものじゃのう。
「ロマーニャへ。 提案があるんじゃが、毎日手紙と言うのは止めないか? そんなに毎日、勇者に変化は起きんぞ! 変わったのは、立って歩くようになったことと、喋るようになったことだけじゃぞ? ⋯⋯な? 意味がなかろう? なにか変化があったら連絡するからのう。 それでどうじゃろうか?」
うむ、そう書いたとは言え、子供の成長には驚くばかりぞ。 この前なんて、儂が寝ている間に、遠くへ散歩に行ってたからのう。 儂が声をかけたら、驚いていたがのう。 なんじゃったか「やっぱり睡眠薬がないと駄目か」とか。
ある時は、儂にお茶を煎じてくれての。 しかし、そこは子供の児戯。 お茶の中に睡眠効果のある草が入っておったわい。 代わりに飲むように伝えたら、そそくさと逃げおったぞ。 「クソ、毒だったら気づかれないのに⋯⋯」とか言っておったの。
この前なんか、睡眠攻撃をして来る生物を儂の前に連れて来たぞ。 じゃが、失敗じゃったのう。 儂の方が生物を手懐けるのは上手いのじゃ。 ぐうぐう無防備に寝る、奴の姿はかわいかったぞ。 「師匠。 今までありがとう」とか寝言を言っていたな。
うむ。 こうやってみると、教育とは面白いものじゃのう。 学園長打診があったのを思い出したわい。 そうじゃ! この子をそこに入れて、成長する様子を見たいのうーー ロマーニャを頑張って説得しようかの。
「⋯⋯さて、寝るか。 ⋯⋯老女には、この季節の風が一番堪えるのう⋯⋯ゴホゴホ」
あらら? 風邪を引いたらしいの? ホホ。
「師匠⋯⋯ やはり、もう寿命が⋯⋯俺はもう悲しみたくない⋯⋯この毒を使うか。 後はタイミングだな⋯⋯」




