第3話 ハイハイ勇者の逃走
第3話 ハイハイ勇者の逃走
暗い、夜か。 あまりにも衝撃的な事実に気絶してしまったようだ。
ーーまさか、俺が死に戻りするなんて。
死に戻り。 この現象は神がもたらす奇跡として、神話として語り継がれていた。 教養のない俺ですら知っていることだった。 まあ、ただの架空の物だと思っていたのだがーー
とにかく、今の状況を考えよう。 どうやら俺は、死に戻りをしたという事実を受け入れよう。 ーーそれなら今は過去の記憶が頼りになるな。
俺の記憶がたしかなら、この場所に間もなく魔物の大軍がやって来る。
目的は俺、勇者及び親近者の抹殺。
前世の俺は、この村の住民たち、そして師匠という犠牲を払って、生き延びた。
まあ。 今回も、どうせそうなるだろう。
だったら、こんな場所に居ても危ないだけだ。
幸い、俺の存在自体は奴らには感知できていないらしい。
その証拠に、この村が襲われて以来、死ぬ直前まで魔王からの接触はなかった。
ふん! おおかた奴らは、勇者はこの村で死んだと思ったのだろう。 好都合だ。
俺は四つん這いになり、家を抜け出した。 この家は、簡素な物で簡単に外に出られる。
こうして初めてのお散歩は、命懸けの脱走になった訳だ。
家を出ると意外にもこの村は、大きかった。
それもそうか、俺自体が小さいからだな。 まったく不便だな〜 さっさと大きくなりたいぜ!
よし、村外れに着いた。 さようなら生まれの故郷。 そして、もう会うことがない両親。 今回は顔を覚えたから、時々思い出すさーー
そういえばあの時、俺の名前を言いそうになっていたな?
そっか、俺にも名前があったんだ。 勇者じゃない、ちゃんとした名前がーー
上手いこと、聞きそびれちゃったな。 これも運命か。
なんだか、眠くなって来たから寝るか。 ここまで来れば大丈夫だろ!
というか、これ以上動けない。 幼体の限界だ!
そんな中、俺の前方には大きな布があった。
ーーあれは、テント? 懐かしい。 師匠のテントだ!
その時、中から若い女性が出てきた、師匠だ。 寝たふりしよう。
「ぬ! なんでここに勇者がすやすや寝てるんじゃ! まずいぞ、お前の両親にバレたら大変なことになってしまうぞ」
師匠に運ばれて、俺はテントの中へ。 その後、記憶が途切れた。
◇◇◇ ミート視点
儂が勇者をテントに寝かせると、ロマーニャがやってきた。
「ミート! 私の太陽知らない?」
「う、噂をすれば⋯⋯ロマーニャ」
「あ、私の太陽みっけ! ⋯⋯それから誘拐犯もね」
最悪じゃ! コイツは拳術家なのじゃ。 私とは、相性最悪じゃぞ!
ここは、懸命に、疑いを晴らさねば!
「違う、違うって! 私、違います!」
「まあ! こんなに泥だらけにさせて! そんなに欲しかったのかしら?」
「コイツが勝手に入って来たんですよ! 本当ですって!」
私は、なりふり構わず謝った。 しかし、奴は勇者をコイツ呼ばわりしたことに怒りをみせた。
「コイツですって! この子にはね、立派な名前があるんです!」
「そうなんですか! ⋯⋯な、なんとおっしゃるのでしょう?」
「ふふふ。 なんと⋯⋯」
その時、テントの外から大声で叫ぶ声が聞こえた。
「ブキャキャキャ。 人間の雌がいたぜ! この魔王直属新鋭隊のギュ……」
「うっさいハエね。 ⋯⋯今大事な所なの。 邪魔しないで!」
ーー哀れ、コイツを敵にしたら駄目なのじゃ!
「ククク。 俺様を殺した所でお前たちの村はいまご……」
「だからうるさいっての! ⋯⋯よし! じゃ続きを」
ハエ型のギュなんとか魔人を、二発のパンチで倒したロマーニャは、自慢気に話しを続けようとする。
村の心配はしないのですか?
「えっと村の様子はいいのかな? ⋯⋯私、儂は心配じゃな?」
「大丈夫でしょう。 寝ている時に不意打ちならともかく、今はみんな捜査体制よ。 ホラ、村は無事⋯⋯」
ロマーニャが、呑気に村の方を見る。 私も、それに続いて確認したがーー
「見事に、村が全壊しておるが⋯⋯おお。 派手に倒壊したの~」
私の発言に我に返った、ロマーニャは村へダッシュして行った。
ーー私を担いで。 助けてください! 生命の危機なのじゃ!
「アンタ達! なにやってんのよ! 雑魚の大軍如きに、全壊されやがって! 私の家も残骸じゃないの!」
「ロマーニャ、すまん。 少々数が多すぎてだな⋯⋯でも、全員無事だぞ! 不意打ちだったら、みんな今頃あの世行きだったな、ハハ」
「ハハ、じゃないわよ。 この子の住む家が⋯⋯」
悲しむロマーニャ。 私は棍棒のように、振り回される。
ボロボロにされる私。 このままじゃ死ぬ。 嫌じゃ!
「⋯⋯だったら、儂が預かろう……」
「ええ? なんでそうなるのよ! 私が一緒にいるわよ!」
「儂には、テントがあるが、お主は持ってないではないか!」
「しょうがないわね。 誘拐犯の家に預けてるなんて正気じゃないけど⋯⋯」
最初からそのつもりで、私を連れてきたのだろうに? コイツは、これでも私以上に頭が回る。 おおかた、私が逃げないように連れてきたのでしょ?
「よし、せっかくだから。 この子のために要塞を作りましょう!」
すっかり、気を取り直しましたね。 彼女の友達辞めようかな?




