第1話 名無しの団長
俺は一人。 この荒れ果てた大地で息絶えようとしていた。 骨が折れ、傷だらけの体では、これ以上は生きられない。 ーー周りには、人だった者の骸が無造作に置かれている。
バルテン王国。 数時間前までは太陽と水の国と呼ばれていたこの場所は、今や見る影もない。
「はは。 俺もついに終わりか。 師匠、キャス。 ⋯⋯俺も今、行くからな」
目を閉じて、師匠や最愛の彼女を思い浮かべる。 しかし、なぜか思い浮かぶのは、俺を辛そうに見る、彼女達の最後の瞬間だけだった。
「⋯⋯なんだよ。 最後ぐらい笑ってくれよ⋯⋯昔みたいにさ⋯⋯」
一緒に笑って、そして怒られた。 いつも優しかった、師匠。
能天気な奴だったのにーー俺のせいで性格が変わってしまった。 それでも、ずっとそばにいてくれて、そして俺を庇って死んだ、キャス。
他にも後悔していることが、次々と頭の中に浮かんでくる。 あの時、ああしていれば違った運命になっていたのではないか? ーーなぜ俺は罪のない、あのお姉さんを殺したのか。 ーーそうしなければキャスは死なないで済んだかもしれないのに。
そもそも、なんで俺は生まれたのか。 勇者だから? 魔王を倒すために? 俺が生まれたせいで、故郷は魔物に襲われて壊滅。 師匠も大怪我をしたんだ!
そして俺はこのザマか。
ーーそっか俺の存在自体が無駄だったんだ。 そうだよなぁ、だって俺には名前がないんだから、俺は世界に歓迎されてなかったんだーー
ああ、なんだか疲れたな。
来世では、名前が欲しい。
そして、自分勝手に生きたい。




