第10話 運命の再会
景伯荘の部屋で師匠に手紙を書いた俺は、いよいよここを離れる。
だが、師匠をまかないといけない。 俺は、師匠がテーブルでのんびりしているところへ、ジュースを持ってやって来た。
「師匠。 ここに来たからには、これを飲みませんと⋯⋯」
「うむ? ⋯⋯お主、やけに詳しいの? たしかにその通りじゃが⋯⋯」
俺はここの名物であるジュースに、睡眠毒を入れ、師匠に飲ませる。
「なんじゃこれは? 凄く変な味が⋯⋯」
さすが、速効性の毒。 これで師匠は動かない。
「支配人。 俺、出かけます」
「坊や一人でかい?」
「はい、そうです」
こうして、証人を作った俺は、あの運命の廃墟を目指すのであった。
道中の魔物たちをただの木刀で、凌ぐことは困難だった。 そこで俺は、ひたすら逃げ続けて、なんとか到着したのだった。
ーーなぜ、そんなに上手くいったのかと疑問に思うだろうか? もともと、景伯荘と目的地である廃墟は近い。 俺は、それを知っていて景伯荘に師匠を招いたのである。
歩き疲れた体を休ませる。 この体はまだまだ未熟だ。 そう思っていると、目的の人物が現れた。 俺は彼女に挨拶をする。
しかし、彼女の服装に違和感を覚えた。
「あれ? ズボンじゃなくてスカートを履いてる! あのキャスが⋯⋯」
その言葉が、不意に出てしまった。 まだ、紹介されてないのに彼女の名前をつい、言ってしまった。 おかげで、彼女は警戒の表情を滲ませる。
「あ、貴方はなんですか!」
「⋯⋯名前なんてない。 あるのは称号だけ⋯⋯」
「わかりました。 貴方の名前はゆう君ですね」
「ゆう君? ⋯⋯どうしてその名前を!」
なんだと、まさかキャスも死に戻りをしたのかーー
だったら、話しが早い。
「ところで君はどうして、ここにいるのかな?」
「⋯⋯君に逢いに来た」
「ちょっと待っててね。 ⋯⋯あ、このご飯食べてていいから」
「わかった。 待ってる⋯⋯」
よかった。 俺の感が当たったようだ。 それにしても、キャスのご飯かーー
「美味しいな⋯⋯」
目から、思わず涙がこぼれる。 子供の体じゃ仕方がない。 しばらく待っていると、キャスが帰って来た。
「あ、キャス。 美味しかったよ。ご飯」
「⋯⋯そう。 最後の晩餐には丁度よかったようね」
「え? ⋯⋯あ! いつもの服装だ! やっぱり君はその方が落ち着くよ」
やっぱり、彼女はこの格好じゃないと。 しかし、彼女表情が硬い。
「うん? どうしたんだ? そんな剣呑な表情をして⋯⋯敵か?」
「敵は、お前だ! なんだってのよ、アンタ! 私だって、たまにはスカートを履くわよ!」
「⋯⋯俺の知ってるキャスと違う⋯⋯」
「なによ。 初対面の癖に、知ってるような口をきいて」
初対面。 その言葉にショックを受けた。 その反応を理解したのか、キャスは落ち着いた口調で話しを繰り出す。
「ところでアンタの保護者はどこ? とっちめてやる!」
「⋯⋯両親は魔物にやられて死んだよ。 師匠も今頃は⋯⋯」
「⋯⋯そう。 なんだ」
「⋯⋯君だってそうだろ? キャス」
俺がそう言うと、考え込んでしまうキャス。 ーーどうやら図星のようだ
「ねえ。 行く場所ないんでしょ? ⋯⋯だったら、ウチに来る?」
「その言葉、待ってました!」
「はは⋯⋯あっそう」
呆れた顔をするキャスと一緒に、俺は教会を出て行った。
「ニャオー。 あの女、 この魔王直属の暗殺部クロン様の存在に気づいていたニャー? ⋯⋯勇者を抹殺するだけでは駄目だな。 あの女諸共、俺様の剣で切り刻んでやるニャ! 」




