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メカニカルワルキューレ・ゼロ 第四章 決断


サイサとの死闘の後、私はサイサの家を訪れていた。私とサイサは身寄りこそ無いがそれなりにお金は持っていたため互いにアパートを借りて生活していた。チャイムを鳴らす。2回、3回。何度か鳴らすが反応は無い。居ないのかと思い、確認するだけのつもりでドアノブを回すと──ガチャリ。と扉は開いた。


これからの未来を暗示しているかのように中は真っ暗だった。


「サイサ…居るかい?」

私は恐る恐る家に踏み入れる。ギシギシと床の軋む音、どこからかパキパキと乾いた音がやけに耳に刺さる。何度も訪れ、泊まった事すらある筈の親友の部屋が、

まるで化け物の井の中の様に感じられた。


サイサの寝室、遊びに来たらよく駄弁る部屋の前に立つ。ノックをしてゆっくりと扉を開いたが、なかには誰も居なかった。私は安堵した。会いに来たのに居なくて安堵とは、我ながらに支離滅裂だなと苦笑いを浮かべながら、私はその部屋に足を踏み入れた。


特に変わった変化は見られずとんだ気苦労だったかと部屋を立とうとして、ふと机の上の携帯型デバイスに目が留まる。

──これは私とサイサで開発した量子通信端末。通信だけでなく、様々な機能を打ち込みまくって、もはや何を造りたかったのか、造った私達ですら分からなくなった代物だった。


そっかサイサ、まだ使ってたのか…


私はそれを持ち上げ起動する。すると空中にホログラムが展開する。

そこにはこまめなサイサらしく、日記が入っていた。最終更新日は数日前。

─もしかしたらサイサに現れた異変の兆候が記されて居るかも知れないと、少し時を遡りながら私は日記を読んで行く。


最初に開いたのは数カ月前の日記だった。

そこには何の変哲もない、論理に満ちた、いかにも“サイサらしい”文章が並んでいた。

読んでいて小気味がいい。

「…ああ、確かにあれは傑作だったよね」

文章がいつものサイサであればあるほど、数日前の事件が嘘や幻であればと考えてしまうが、自身の身体の傷がそれを拒む。

私は、読むのが少しだけ楽しくなってきていた。

この間は怖かったけど、サイサはやっぱり幼馴染で、唯一無二の親友だから。そんな彼女のちょっとした秘密を暴いているみたいで、好奇心と罪悪感で先を読む手が早まる。


──次の日記はちょうど魔力結晶が現れた日だ


最初こそ、サイサが今までに無いほど興奮しているのが文章からも分かる文だった。

私だってそうだ。魔力結晶が現れ、研究をすればするほど、それが世界を変えうる力を秘めていることが分かった。その興奮は計り知れなかった。


でも、そこからサイサは徐々に壊れていった。


サイサは日記の中でしきりに何かを恐れていた。何かに追われているようで、何かを追い詰めているようでもあった。それが悪夢をなのか、或いは最近形成されてしまったかも知れない他人格なのか、文章が途端に殴り書きになってしまっていて、意味を追うのも困難だったが、これだけは、嫌というほど分かってしまった。


──サイサはベル、私が、嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで、殺したいほど大嫌いで仕方ない──


ベルの笑顔が不快。思想が許せない。人を逆なでする発言が嫌。美を理解出来ない感性が不愉快。私の前に立つのが気持ち悪い。


「あ、あはは…ちょっと言い過ぎだろ…」


日記を進める指が重い。喉が異様に渇く。どんどん視界が歪んでいく。親友が……親友だと思って居た存在からの、存在そのものの否定が、私の心を粉々に砕いていく。


日記と同じページにパワードスーツの設計図があった。そこには

──私をどうやって殺すかと言う事が、まるで新しい遊びを思いついたかのように、楽しそうに書かれていた。


思わず胃液がこみ上げてくるがこれを必死に抑える。

サイサのパワードスーツ、メカニカルワルキューレって名前にしたのか…いかにもサイサらしい、綺麗な名前だと、思考を無理やり落ち着かせる。

しかし次のページを開いた時、私は思考を放棄した。

「え…」

言葉が見つからない。考えが纏まらない。

そこに記されていたのは、サイサが調べたらしいある特徴のある国々について纏められた計画書。

「テロ…計画…。」

目の前の文字が、まるで血のように赤く滲む。

この瞬間、世界の未来も、私の理性も、すべてが揺らいだ気がした。

──戦争を起こすかもしれない国々に、サイサは“先に手を打つ”事で、戦争を無くすつもり、らしい。

その論理が、信じられないほど冷酷で、思考が追いつかない。


──抑止力は振るった時点で抑止力ではなくなる


そんな事も分からなくなってしまったほど、サイサは壊れてしまった。

私は携帯していたメガミドライヴを取り出す。私のメガミドライヴはサイサのとは違い翡翠の光を放っていた。

──翡翠の光は、私の呼吸に合わせ鼓動を始めた。


「……そうだね、ヴァルキリー……

サイサ……君が……背負いきれないほどの、大きな罪を犯してしまう前に、"親友"として…正しい、選択を。」

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