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「その力は呪いだ」と婚約破棄されましたが、実は伝説の【星詠みの魔力】でした。今更戻ってきたい? もう遅すぎます  作者: 九葉(くずは)


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第7話

魔物の大氾濫から、一月が過ぎた。

王都は辺境伯軍の尽力もあり、驚異的な速さで復興を遂げつつあった。


そして、王城では一つの大きな裁判が開かれていた。

被告は、元第一王子アルフォンスと、男爵令嬢エリザ。


エリザは、自らの希少な治癒魔法の価値を吊り上げるため、王家に恩を売ろうと画策。

アルフォンス王子に近づき、「セレスティナ様の呪われた魔力が、いずれ国に災厄をもたらす。自分こそが国を守る聖女である」と偽りの神託を囁き、王子を巧みに洗脳していたことが明らかになった。

大氾濫の予兆に気づいていながら、それを自分の手柄にするために隠蔽していた罪も重い。


そしてアルフォンス元王子は、次期国王という立場にありながら、私情で公爵家との婚約を一方的に破棄し、国政を混乱させたこと。

令嬢の甘言に惑わされ、セレスティナという一人の人間の真価を見抜けず、国を滅ぼしかけた愚かさを断罪された。


結果、エリザは聖女の称号を剥奪の上、平民に降格。二度と王都の土を踏めぬよう、国境の修道院へ幽閉されることとなった。

アルフォンスは王位継承権を剥奪され、一貴族として王家を支えるよう命じられた。彼にとってそれは、死よりも辛い罰であったに違いない。


一方、わたくしの父、クライン公爵は、国王陛下から厳しい叱責を受けた。

「そなたは、自らの娘に宿った国宝級の才能を見抜けず、ただ恐れ、見捨てた。家の名誉を重んじるあまり、真に守るべきものを見失った罪は重い」と。

父は、青ざめた顔でただ頭を垂れるばかりだったと聞いた。

後日、公爵家から復縁と謝罪を乞う使者が何度も辺境伯邸へ送られてきたが、わたくしは一度も会うことなく、全て丁重にお断りした。


わたくしの居場所は、もうあそこにはないのだから。


そして、王都復興の最大の功労者であるリアム様とわたくしには、国王陛下自ら、最大級の賛辞と感謝の言葉が贈られた。


「星詠みの姫君、セレスティナ嬢。そして、氷狼将軍、リアム辺境伯。二人がいなければ、この国は今頃、地図から消えていただろう。……国を代表して、心から感謝する」


深々と頭を下げる国王陛下の前で、わたくしはリアム様の隣に立ち、静かにそれを受けていた。

人々は、わたくしを「国を救った本物の聖女」「星詠みの姫君」と呼び、尊敬と感謝の眼差しを向けてくれる。

もう、あの侮蔑と好奇に満ちた視線を向ける者は、どこにもいなかった。


全てが、終わったのだ。

長かった悪夢が、ようやく。


その夜。

わたくしは、辺境伯領へ戻る前夜、リアム様に誘われて王城のバルコニーにいた。

かつて、アルフォンスに婚約破棄を突きつけられた、因縁の場所。

けれど、今ここで隣にいるのは、彼ではない。


「……不思議ですわね。あの日、ここで全てを失ったはずなのに。今、こんなに穏やかな気持ちでこの景色を見ているなんて」


眼下に広がる王都の灯りは、復興の光となって、星のようにきらめいていた。


「君は、何も失ってなどいない」


リアム様が、静かに言った。


「君はただ、君を縛り付けていた偽りの鎖から、解き放たれただけだ。……君本来の輝きを取り戻した、というべきか」


彼はそう言うと、わたくしの手を取り、その薬指に、小さな星屑を集めて作ったような、繊細な指輪をそっとはめてくれた。


「これは……?」


「星が、好きなんだろう?」


彼は少し照れくさそうに、視線を逸らしながら言った。


「俺は、口下手で、気の利いた言葉も言えん。豪華な城も、宝石も、君に与えてはやれないかもしれん。……だが、これだけは誓える」


リアム様は、わたくしの手を両手で包み込み、その黒曜石の瞳で、まっすぐに見つめてきた。


「俺は、生涯を懸けて君を守る。君のその力を、その魂を、世界中の誰よりも理解し、愛し続ける。だから……セレスティナ。俺と、結婚してほしい」


それは、今まで聞いたどんな言葉よりも、誠実で、温かい、魂からの求婚だった。

幼いあの日、孤独に泣いていたわたくしに、お守りをくれた少年。

そして今、再びわたくしを見つけ出し、新しい居場所と未来をくれた、唯一人の男性。


涙が、頬を伝う。

でも、それはもう悲しみの涙ではなかった。

あふれんばかりの喜びと、愛しさが、温かい雫となってこぼれ落ちていく。


「……はい。喜んで」


わたくしが微笑むと、彼は心底安堵したように息をつき、不器用ながらも優しく、わたくしをそのたくましい腕の中に抱きしめてくれた。

彼の胸に顔を埋めると、安心する匂いがした。


見上げた夜空には、満天の星が、まるでわたくしたちの未来を祝福するように、どこまでも明るく輝いていた。

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