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事のはじめ

一つ注意。これは三話完結へン。の、つもりです。頑張っていっこいっこの長さを半端なくするつもりだけど、短くなってしまうかも。

あと、この作品は他のサイトにも掲載するつもりです。

挿絵(By みてみん)

「ハぁ――――」

 吸った息を一気に吐き出してみると、山の上の気持良い空気が胸いっぱいに入ってきた。うーん、これでこその山。田舎! はじめてくる場所なのに、とても美しく見える。最高。

 なのに、やっぱり仕事だなんてあんまりだよね。

「駆け回りたーいいいいい」

 っていうか、かけまわっちゃおぉ! 私はとにかく走ってみちゃう。走って走ってあぁぁ髪がなび――きゃ。ぶつかっちゃった。とりあえず、顔をあげて謝るべきだよね……。

「エクスキューズミーって、なに英語話してんだよ私。ほんと、すみません」

 ぶつかった相手の同い年ぐらいの少女は私を見てとてもいぶかしんでくる。嫌だな……


          ◆              ◆              ◆

 

「ねぇ知ってた? ぬーみん。転校生来るんだってよ! し・か・も、この学年!! 」 

「うそぉ!」

 小さな小さな地図から抹殺されてしまった村。その村に小学校というものはたった一つしか存在していない。しかも、全校生徒は十二人しかいないので早くも転校生が来るというニュースは全校生徒に伝わっている。否、そろそろ村全体にも伝わり始めているかもしれない。本当に小さな村なのよ。みんな顔見知りで、よそ者が来た日にはもうたちまち噂になってしまう。本当に泥棒が入りにくい村。

 で、その小さな学校の中で多分私は一番最後にその情報を知る事になったとな。軽くショック受けるよ。情報通のつもりだったからね。

「で、そのうわさの真偽は?」

「何言ってるの? 本当に決まってるじゃない。嘘を広める様な馬鹿の知り合いはあいにくひと……」

「それはだれの事かなぁ?」

 にま、情報を持ってきてくれた私の親友(悪友)のほほをぺチッと叩く。

「あー、もうごめんなさいぃ」

 笑いながらにまは謝る。真剣見零。だけどそんな事は気にしない(気にしているけど気にしているそぶりを見せない)笑い顔を作って許してやるよ、と一言言って真面目な顔を作ってみた。半分笑っているが。

「それでさぁ、なんか情報は?」

「たっくさんあるよ。名前は『野騎已のののみ 乃之美ののみ』っていうの。笑えるよね~。それで、見た目はもう超可愛い! 南賀書店で唯一売ってるファッション誌に載ってるモデルの子レベルでかわいいよ! 髪茶髪だし」 

 南賀書店とは、この村に唯一ある書店の事。といっても品ぞろえはめちゃくちゃ悪いし(漫画が一個も売っていない)、店長のおばちゃんはもうお年。最近は存続危機に陥っている。

「実際に見たの?」

「あうん。野原走ってたらぶつかっちゃったのよ」

「へぇ~」

 なんて話しているうちに話題はどんどん変わっていく。転校生の話題も大切だけど、一年ぶりに起こった空き巣の話題の方が重要。生活にかかわる事だから。小さな村であるからどの家庭も本当にぎりぎりの生活をしているのだ。

 そんなとき唐突にドアは開いた。雪女(超低血圧の先生)と、もう一人知らない少女が入ってくる。

「あぁ」

 にまはぼそっとつぶやく。どうやら、転校生の様だ。といっても、同じ学年かは分からない。身長的にはにまと同じくらいだけど、見た目はあんまりあてにあらないしね。え、なんでこの教室に入ってきたのに同じ学年か確信できないかって? それは簡単。この学校にはひとクラスしかないのだ。先生は校長先生を合わせて五人しかいなくて、しかもいつも小さい子に付きっきりって感じだね。

「今日の日直は? あぁ? あおいだと? 葱、おまえまたさぼろうとしたな! とにかく前にこい!!」

 ……五人の先生の中の一人、雀(だいの麻雀好き)は何時ものように元気にどなる。雪女はちょっとおろおろしながらも何も言えない。葱、この学校唯一の一年生で悪ガキはからからと笑いながら足音をわざわざ立て前に出てくる。といっても静かになるはずもなく、しゃべり声は普通に聞こえてくる。

「えっとー、これから朝のかい始めるよ。おはよ ふぁ~」

 ねっむそ~。適当~。雪女なんて頭抱えちゃったじゃん。雀は相変わらずかっかしてる。でも、もう注意なんてしない。あきらめてるな。

「せんせー連絡は?」

 早く自分の席に戻りたそうに足を前に出しながら雪女に一言聞く。雪女ははっとしたように顔をあげて、少女に目配せをする。少女は一つこくりとうなづく。そしたら、雪女はやっと口を開けた。

「えっと、そのあの、て……転入生がいます。ええっとみ――みればわかると、思います……が、その、あえっと」

「先生、自分で自分の事ぐらいなら言えますよ。転入生の野騎已 乃之美ちゃんです! のめっちゃ多いけど、これが本名です! のみってよんでね! 以後宜しくぅ!」

「…………」

 この後教室を包み込んだものは、歓声でもなく歓迎でもなく沈黙であった。

 さすがにここまでテンションが高かったんだから、ここで沈黙がきちゃうと気まずいだろう。冷や汗を流しているのが見て取れる。私、前から二列目なんだけどな……。

「えっと、とにかく、よろしくね! 仲良くしてね……。仲間はずれに何て――」

 みんなが勝手におしゃべりを始めたので泣き出してしまった。彼女の二房のみつあみの髪が揺れる。その様子がものすごく可愛い! だけど、みんなはおしゃべりしてばっかで彼女への関心をなくしている。あ、私は結構関心あるよ。この子に。

 まぁ、こうして彼女という新しい生徒がこの学校に迎えられたのだった。

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