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ピクセルに散りばめられた心の色  作者: 大西さん
第1章 色を見る少女
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第2話 焼き付く色

葬儀場からの帰り道、父が運転する車の後部座席で、私は窓の外を流れていく景色を無言で見つめていた。西陽が長く影を落とし、世界をオレンジ色に染めている。けれど、私の目には、そのオレンジ色にさえ、あの藍色の粒子がちらちらと混じって見えるような気がした。


母は助手席で、ずっと黙り込んでいる。時々、鼻をすする音が聞こえるだけだった。その母の横顔からも、まだあの藍色の光が、陽炎のようにゆらゆらと立ち上っているのが見えた。


「ハル、大丈夫か?疲れただろう」


バックミラー越しに、父が心配そうに私を見た。私はこくりと頷くだけで、何も答えられなかった。「大丈夫じゃない」と言ったら、どうなるんだろう。「お母さんの周りに、変な青いキラキラが見える」と言ったら、父はなんて言うだろう。きっと、疲れて幻でも見たんだと、笑われるだけだ。


家に帰り着き、窮屈な喪服を脱ぎ捨てて自分の部屋に駆け込むと、ベッドに倒れ込んだ。ひんやりとしたシーツの感触が、火照った体に心地よかった。ぎゅっと目を閉じる。けれど、暗闇の中に広がっていたのは、安らぎではなかった。


瞼の裏で、あの藍色のピクセルが明滅していた。


それは、強い光を直接見た後の残像のように、網膜にこびりついていた。一つひとつの粒子が、まるで生き物のように蠢き、集まったり散らばったりを繰り返している。それは次第に数を増し、私の意識のすべてを飲み込もうとするかのように、暗闇の中で増殖していく。


「いや……」


思わず声が出た。怖かった。目を開けても、閉じても、あの色から逃げられない。あれは一体何だったのだろう。どうして私にだけ見えたのだろう。見てはいけないものを見てしまったという、得体の知れない恐怖と罪悪感が、津波のように押し寄せてくる。


心臓が早鐘を打つ。呼吸が浅くなる。頭の痛みが、またじわじわと戻ってきた。こめかみのあたりを、内側から針で突き刺されるような、鋭い痛み。


私は布団を頭まで引き被り、体をエビのように丸めた。暗くて狭い、自分だけの空間。それでも、藍色の光は容赦なく侵入してくる。それはもう、母から発せられたものではなかった。私の記憶の中に、恐怖の中に、深く根を張ってしまった、消えない染みになっていた。


このまま、ずっとこの色を見続けなければならないのだろうか。明日になっても、明後日になっても、この光は消えてくれないのだろうか。そんなことを考えているうちに、体の芯がどんどん熱くなっていくのを感じた。寒気がして、全身の関節が軋むように痛い。何かが、私の内側で、急速に壊れ始めている。そんな予感がした。

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