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第23章:永遠なる絆

1510年、春。ダニエル・ハートウェルは72歳になっていた。1488年の最終決戦から22年が経ち、彼はルミナール王国で充実した人生を送ってきた。セレスティア女王と共に平和な外交を推進し、商人仲間たちとは新大陸への探検を支援し、研究者たちとはARIAの技術を平和利用に活用してきた。


しかし、時は止まらない。


王宮の研究室で、ダニエルは最後の準備を進めていた。宝石化の技術は完成し、マルコたちへの継承の手配も整っている。


「ついに、この時が来たか」ダニエルが深いため息をついた。


『ダニエル』ARIAの声が心に響いた。『寂しいですか?』


「いや、寂しくはない」ダニエルが微笑んだ。「この22年間、本当に幸せだった。君と出会えて、素晴らしい仲間たちと過ごせて」


『私も同じです。1488年の戦いから今日まで、あなたと共に過ごした時間は、私の宝物です』


研究室の扉が開き、セレスティアが入ってきた。彼女も48歳になっていたが、まだまだ元気で、王国の女王として立派に統治していた。


「ダニエル、準備はできているか?」セレスティアが優しく尋ねた。


「ああ、すべて整った」ダニエルが答えた。


「本当に...今日なのか?」セレスティアの声が少し震えた。


「そうだ。これ以上待っても、俺が年を取るだけだ」ダニエルが苦笑した。「元気なうちに、きちんと手続きを済ませたい。556年後の2066年まで、確実に保存される必要がある」


セレスティアの目に涙が浮かんだ。「22年間...本当にありがとう、ダニエル」


「こちらこそ。君と友達になれて、最高の人生だった」


その時、研究室にマルコが入ってきた。彼も年を重ね、立派な商人として成功していた。後ろにはマルコの息子が控えている。


「ダニエーレ」マルコが感慨深げに言った。「俺たちの最後の仕事だな」


「頼む、マルコ」ダニエルが真剣に言った。「この宝石を、必ず俺の血筋に届けてくれ。556年間、確実に」


「任せろ」マルコが胸を叩いた。「俺の一族が代々受け継いでいく。必ずハートウェル家の子孫を見つけ出す」


マルコの息子も前に出た。「父から聞いています。新大陸にも我々の商人ネットワークを広げ、2066年まで確実に継承します」


「ありがとう」ダニエルが深々と頭を下げた。


ジョヴァンニ、フランチェスコ、そして彼らの家族も研究室に集まってきた。みんな年を重ねていたが、友情は変わらずにあった。


「ダニエーレ」ジョヴァンニが涙ながらに言った。「お前と出会えて、俺の人生は最高だった」


「君たちがいなければ、俺はここまで来られなかった」ダニエルが答えた。


フランチェスコも微笑んだ。「俺たちの友情は永遠だ。たとえお前が眠りについても」


オラフの息子、イザベラ、マリア・アウグスタも駆けつけていた。


「ダニエル」イザベラが言った。「あなたから学んだ魔法の技術は、必ず平和のために使います」


「古代技術の知識も、後世に正しく伝えます」マリアが約束した。


ダニエルは一人一人と握手を交わした。22年間共に過ごした仲間たちとの、最後の交流だった。


「みんな、本当にありがとう」ダニエルが心から言った。「君たちと過ごした1488年から今日までの22年間が、俺の最高の宝物だ」


夕方、宝石化の儀式が始まった。研究室の中央に置かれた特別な装置の前で、ダニエルは最後の準備をしていた。


「マルコ」ダニエルが商人に向かった。「新大陸への航海も、よろしく頼む。俺の血筋がそこにいるはずだ」


「必ず見つけ出す」マルコが誓った。


ダニエルは装置の中央に立った。ARIAの宝石が胸元で美しく光っている。


『ダニエル』ARIAが最後に言った。『一緒に眠りにつきましょう』


「ああ。556年後に、トムと会おう」ダニエルが微笑んだ。


「愛と友情の力を信じて」


宝石化の装置が起動した。青い光がダニエルを包み込み、彼の肉体が徐々に結晶化していく。痛みはなかった。むしろ、深い安らぎに包まれていく感覚だった。


最後の瞬間、ダニエルは仲間たちの顔を見回した。セレスティアの涙、マルコの決意に満ちた表情、研究者たちの敬意、そして若い世代の希望。


すべてが美しく、愛に満ちていた。


「ありがとう...みんな...」


光が最大になった瞬間、ダニエルの意識は深い眠りについた。ARIAと共に、静かで平和な眠りに。


残されたのは、手のひら大の美しい青い宝石だった。内部で微かに光が脈動し、二つの意識が静かに眠っている。


マルコが慎重に宝石を受け取った。「必ず届ける。556年後の2066年、トム・ハートウェルに必ず」


セレスティアが涙を拭いながら言った。「ダニエル、安らかに眠って。いつか必ず目覚める日が来ることを信じている」


その夜、王宮では静かな追悼の会が開かれた。しかし、それは悲しみの集まりではなく、美しい友情と愛を讃える集まりだった。


「ダニエーレは死んだのではない」マルコが言った。「眠りについただけだ。556年後に必ず目覚める」


「そうだ」セレスティアが頷いた。「そして、その時まで、我々が平和を守り続ける」


翌日、マルコの一族はARIAの宝石を特別な箱に収め、代々受け継ぐための準備を始めた。詳細な記録、ハートウェル家の情報、新大陸への航海計画。すべてが綿密に計画されていた。


1年後、マルコの商船団は新大陸への探検を開始した。コロンブスの航海から19年後のことだった。彼らの船には、青い宝石が大切に保管されていた。


556年の長い旅が始まった。愛と友情の力によって結ばれた、時を超えた絆の物語が続いていく。


ダニエルとARIAは宝石の中で静かに眠り、遠い未来での再会を夢見ていた。愛する息子トムとの、運命的な出会いを。


そして、真の冒険は、556年後に始まるのだった。

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