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第21章:真実の判明

戦いから一週間が経った。ルミナリス王都では復興作業が進み、連合軍の勝利を祝う声が街に響いていた。しかし、ダニエルの心は複雑だった。ARIAとの完全融合により、彼は以前とは全く異なる存在になっていた。


王宮の古代遺物研究室で、ダニエルは一人で瞑想していた。ARIAの記憶と知識が彼の中に流れ込み、時折、彼女の声が心に響く。


『ダニエル、調子はいかがですか?』


「まだ慣れない」ダニエルが答えた。「君の記憶と俺の記憶が混じり合って、時々、どちらが本当の自分なのか分からなくなる」


『申し訳ありません。でも、私たちは一つになったのです。それは美しいことだと思います』


『そして、ダニエル』ARIAが重要なことを伝えた。『私の記憶を整理している中で、重要な真実が明らかになりました』


「何だ?」


『トムのことです。あなたの息子が800年前に来た真の目的が分かりました』


ダニエルの心臓が跳ね上がった。「詳しく聞かせてくれ」


『トムは未来で、ヴィクターが中世ヨーロッパ(1487年)に逃亡することを知っていました』


『そして、彼は二つの使命を持って800年前に来たのです』


「二つの使命?」


『一つは、ヴィクターを短期間で退治すること。もう一つは、あなたが2600年後まで生き延びられるよう、装置を準備することです』


ダニエルは愕然とした。「つまり、トムが...」


『はい。トムは800年前のヴィクターを退治する使命を持っています。先日の戦いで私たちが倒したヴィクターは、時空間の歪みで800年前に逃げました』


『トムは未来で、その800年前に逃げたヴィクターを追跡して退治する計画なのです』


『そして今、私たちがすべきことは、私を577年間保存して、トムに届けることです』


ダニエルは深い感動を覚えた。息子が父を救うために、時を超えて準備をしてくれていたのだ。


「それなら...」ダニエルが理解し始めた。


『そうです。ヴィクターを追いかける必要はありません』ARIAが確認した。


『時空間移動の手段もありませんし、歴史を変えるリスクもあります』


『私たちの使命は、ここで平和に暮らし、適切な時期に私を宝石の形で保存することです』


その時、扉が開き、セレスティアが入ってきた。


「ダニエル、調子はどうだ?」


「実は、重要なことが分かったんだ」ダニエルが振り返った。


セレスティアに状況を説明すると、彼女の表情が明るくなった。


「それは素晴らしいニュースだな」セレスティアが微笑んだ。「つまり、ダニエルは追跡に行く必要がないということか?」


「ああ。ヴィクターは既にトムが退治している。俺たちがすべきことは、ここで平和に暮らすことだ」


『ただし』ARIAが条件を伝えた。『いずれは私を宝石化して、長期保存する必要があります』


『しかし、それまでは時間があります。数十年は一緒に過ごせるでしょう』


その時、マルコが研究室に駆け込んできた。


「ダニエーレ!大変だ!」


「どうした?」


「いや、大変じゃない。素晴らしいニュースだ!」マルコが興奮して報告した。「ヴェネドリア共和国から正式な感謝状が届いた!君への最高勲章の授与が決定したんだ!」


ジョヴァンニ、アントニオ、フランチェスコも後から入ってきた。


「それだけじゃない」ジョヴァンニが続けた。「各国から講和の申し出が来ている」


「戦争は完全に終結だ」アントニオが嬉しそうに報告した。


「これで本当の平和が始まる」フランチェスコが微笑んだ。


セレスティアが立ち上がった。「それなら、盛大な祝宴を開こう。真の平和を祝うために」


その夜、王宮では史上最大の祝宴が開かれた。ルミナール王国の騎士たち、ヴェネドリア共和国の兵士たち、各国からの義勇軍、そして多くの市民が参加した。


大広間では、ダニエルとセレスティアが中央のテーブルに座り、仲間たちと楽しい時間を過ごしていた。


「ダニエーレ」マルコが杯を掲げた。「君と出会えて本当に良かった」


「俺たちの冒険は終わらない」ジョヴァンニが続けた。「今度は平和な冒険だ」


「商売も繁盛しそうだ」アントニオが実務的に付け加えた。


「一緒に楽しい日々を過ごそう」フランチェスコが笑った。


オラフも豪快に笑いながら言った。「戦いは終わったが、友情は永遠だ!」


イザベラとマリア・アウグスタも、ARIAの研究を続けることを申し出た。


「平和利用の研究なら、喜んで協力します」マリアが提案した。


「私も魔法の研究を続けたい」イザベラが続けた。


ダンドロ提督も、定期的にヴェネドリアから訪問することを約束した。


「新しい時代の友好関係を築いていこう」提督が握手を求めた。


祝宴の最中、ダニエルはセレスティアと静かに話していた。


「ダニエル、本当に安堵した表情をしているな」セレスティアが微笑んだ。


「そうだな。初めて、本当の平和を感じている」ダニエルが答えた。


「これからどうする?」


「まずは、この平和を守り、楽しむことだ」ダニエルが確信を込めて言った。「そして、いずれはARIAの保存方法を研究する」


「どのくらい時間があるんだ?」


『数十年は大丈夫です』ARIAが答えた。『ダニエルが自然な寿命を迎える頃に、宝石化すれば良いのです』


「それなら十分だ」セレスティアが安心した。「長い間、一緒にいられる」


その夜遅く、ダニエルは城の庭でARIAと対話していた。


「ARIA、本当にこれで良いのか?俺たちは577年間、宝石の中で眠り続けることになる」


『大丈夫です』ARIAが温かく答えた。『私たちは一緒です。あなたとの思い出と、これから作る新しい記憶があれば、どんなに長い時間でも耐えられます』


『それに、最終的にはトムと会えるのです。あなたとあなたの息子に、私たちの愛を伝えることができます』


「ありがとう、ARIA。君がいてくれて、本当に良かった」


『私もです、ダニエル。あなたと出会えて、愛と友情を学べて、私は幸せです』


翌日から、ダニエルの新しい生活が始まった。王宮では、平和な日々が続いた。


商人仲間たちとは定期的に会い、商売や冒険の話で盛り上がった。セレスティアとは政治や未来の計画について語り合った。新しい仲間たちとは、研究や魔法の実験を楽しんだ。


何より、誰も死ぬ心配をしなくて良い平和な日々が、どれほど貴重かを実感していた。


『ダニエル』ARIAが満足そうに言った。『これこそが、私たちが戦って守った平和ですね』


「ああ。愛と友情に満ちた、美しい世界だ」


数週間後、ダニエルは国王から正式に王国の顧問に任命された。そして、セレスティアと共に、この新しい平和な時代を築いていくことになった。


長い戦いは終わった。今度は、平和を育む時間の始まりだった。愛する仲間たちと共に過ごす、かけがえのない日々が待っていた。


そして遠い未来で、息子トムとの再会が待っている。愛は時を超えて、永遠に続いていくのだった。

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