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第15章:新たな仲間

祝宴から三日後、ルミナリス王宮は再び緊張に包まれていた。城の作戦会議室には、国王、セレスティア王女、ダニエル、そして軍の幹部たちが集まっている。壁に掛けられた大陸地図には、敵軍の進軍を示す赤い印が無数に描かれていた。


「状況は深刻だ」軍務卿のウィリアム卿が報告した。「六カ国連合軍の先遣隊が既に国境を越えています。エルドリア帝国軍は北から、ガリア王国軍は東から進軍中です」


「数は?」国王が尋ねた。


「合計で約8万。我が軍の5万を大きく上回ります」


ダニエルは地図を見つめながら考えていた。ARIAの完全体復活により戦力は格段に向上したが、それでも数的不利は深刻だった。


『ダニエル』ARIAの声が心に響いた。『敵軍の装備について分析結果があります』


「どのような?」ダニエルが心の中で尋ねた。


『全軍にDOMINION製の新型武器が配備されています。エネルギー兵器、自動照準装置、防御力を大幅に向上させる装甲...通常の中世軍隊の3倍以上の戦闘力と推定されます』


ダニエルの表情が険しくなった。予想以上に敵は強化されている。


その時、会議室の扉が開き、伝令が駆け込んできた。


「陛下!港にヴェネドリア共和国の船団が到着いたしました!」


「ああ、セレスティアが取り付けた協力だな」国王が安堵した。「どの程度の支援だ?」


「戦闘艦12隻、輸送船20隻、そして...」伝令が興奮して続けた。「約3000名の義勇兵が上陸しています!」


セレスティア王女の顔が明るくなった。「予想以上の支援だな」


一行は急いで港に向かった。そこには確かに、ヴェネドリア共和国の旗を掲げた船団が停泊している。船から降りてくる兵士たちは、中世の一般的な兵装とは明らかに異なる洗練された装備を身につけていた。


「セレスティア王女殿下!」船団の指揮官らしき男性が近づいてきた。40代半ばの逞しい体格で、海軍提督の制服を着ている。


「お疲れ様でした」セレスティアが迎えた。「こちらは?」


「エンリコ・ダンドロ提督です」男性が敬礼した。「執政官閣下の命により、支援に参りました」


「3000名とは心強い」ダニエルが感謝した。


「実は」ダンドロ提督が微笑んだ。「これだけではありません」


提督が合図すると、船からさらに多くの人々が現れた。しかし、これらは兵士ではなく、様々な装いをした人々だった。


「こちらは各国からの義勇軍です」提督が紹介した。「ヴェネドリア経由でこの戦いに参加を希望した勇士たちです」


先頭に立つ女性が前に出た。金髪に青い瞳、凛とした表情の美しい女性で、軽装の鎧に身を包んでいる。


「私はイザベラ・デ・アルベリア」女性が名乗った。「南方アルベリア王国から参りました」


「王国から?」セレスティアが驚いた。


「正確には、王の許可なく勝手に来ました」イザベラが苦笑した。「この戦いの重要性を理解している者は、私の他にもいます」


彼女の後ろから、様々な出身地の戦士たちが現れた。


「俺はオラフ・エリクソン」巨漢の男性が名乗った。「北方ノルディア地方の出身だ。故郷が戦争に巻き込まれる前に、元凶を断ちたくてな」


「私はマリア・アウグスタ」知的な雰囲気の女性が続いた。「旧ローマ帝国の学者です。古代技術の研究をしており、この戦いに学術的興味があります」


次々と名乗りを上げる戦士たち。その数は約500名に上った。


「皆、それぞれの理由でこの戦いに参加を希望しています」ダンドロ提督が説明した。「ヴェネドリア共和国の商船ネットワークを通じて情報が広まり、志願者が集まったのです」


ダニエルは感動した。大陸各地から、正義を信じる人々が集まってきたのだ。


『ダニエル』ARIAが分析した。『興味深いことに、この人々の中に特異な能力を持つ者が数名います』


「どのような?」


『イザベラという女性は、微弱ながら魔法的な素質があります。おそらく、遠い昔にアルカディア王国の血を引いているのでしょう』


『学者のマリア・アウグスタも、古代技術に対する深い理解があります。私との相性が良さそうです』


ダニエルはイザベラに近づいた。「アルベリア王国の方が、なぜこの戦いに?」


「実は」イザベラが真剣な表情で答えた。「我が国にも奇妙な使者が現れました。黒いローブの男が、新しい武器を提供すると言って」


「ヴィクター・クロウか」ダニエルが確信した。


「おそらく。しかし、王は彼の提案を拒否しました。『不気味な男の正体が分からない』というのが理由でした」


「賢明な判断だ」セレスティアが評価した。


「それで、その男の真の目的を知るため、私が個人的に調査を開始したのです」イザベラが続けた。「調べれば調べるほど、この脅威の深刻さが分かりました」


マリア・アウグスタも説明した。「私の研究でも、最近の技術的異常は明らかに古代文明の水準を超えています。誰かが過去の知識を悪用している」


ダニエルとセレスティアは顔を見合わせた。これらの新しい仲間は、単なる戦力ではなく、貴重な情報と専門知識を持っている。


「皆さん」ダニエルが義勇軍に向かって言った。「ありがとうございます。しかし、この戦いは想像以上に危険です」


オラフが豪快に笑った。「危険だからこそ、やりがいがあるってもんだ」


「私たちは覚悟の上です」イザベラが決意を示した。


その夜、王宮では新たな仲間たちを迎えた歓迎会が開かれた。大広間には、ルミナール王国の騎士たち、ヴェネドリア共和国の兵士たち、そして各国からの義勇軍が一堂に会している。


ダニエルはARIAと相談しながら、新しい戦術を検討していた。


『これだけの多様な人材がいれば、新しい可能性が生まれます』ARIAが提案した。


『特に、イザベラの魔法的素質とマリア・アウグスタの学術知識を活用すれば、私の能力をさらに拡張できるかもしれません』


「どういう意味だ?」


『私の力を一時的に他の人に分け与えることです。アレイス王子との融合のように』


『ただし、適性のある人物に限られますが』


ダニエルは興味を覚えた。「試してみる価値はあるな」


歓迎会の最中、ダニエルはイザベラとマリア・アウグスタに相談してみた。


「興味深い提案ですね」マリアが目を輝かせた。「古代技術との融合実験、学術的に非常に価値があります」


「私もやってみたい」イザベラが積極的だった。「故郷を守るためなら、どんなリスクも受け入れます」


ダニエルはARIAの宝石を取り出した。青い光が二人を包み込む。


『適性検査を開始します』ARIAが宣言した。


数分後、結果が出た。


『イザベラは予想通り、魔法的融合が可能です。マリア・アウグスタは技術的理解力が卓越しており、私の知識データベースと連携できます』


「つまり?」


『イザベラには戦闘支援能力を、マリアには戦術分析能力を一時的に付与できます』


実験が成功し、新たな戦力が加わった。イザベラは青い光のオーラを纏い、マリアの瞳には古代の知識が宿っていた。


「すごい...」イザベラが自分の手から発せられる光を見つめた。「力が溢れてくる」


「膨大な知識が流れ込んできます」マリアが興奮した。「これなら敵の技術も解析できそうです」


セレスティア王女が感嘆した。「これで戦況は大きく変わるな」


しかし、歓迎会の最中に、緊急の報告が入った。


「陛下!」伝令が息を切らして駆け込んできた。「敵軍が予定より早く進軍しています!明後日には首都圏に到達する見込みです!」


会場が静まり返った。準備時間が大幅に短縮されてしまった。


「どういうことだ?」国王が尋ねた。


「敵の移動速度が異常です。まるで疲労を知らないかのように、昼夜を問わず進軍しています」


『DOMINION製の体力増強装置です』ARIAが分析した。『兵士たちの疲労を軽減し、行軍速度を倍増させています』


ダニエルは立ち上がった。「予定を変更する。明日中に迎撃態勢を整えなければならない」


「了解した」セレスティアが頷いた。「全軍に緊急招集をかけろ」


歓迎会は急遽、作戦会議に変更された。新たな仲間たちも加わり、大陸の命運を賭けた戦いの準備が始まった。


ダンドロ提督が海からの支援を、オラフが陸上戦闘を、イザベラとマリアがARIAとの連携戦術を担当することになった。


『皆さん』ARIAが全員に語りかけた。『いよいよ真の戦いが始まります』


『しかし、これだけの素晴らしい仲間がいれば、きっと勝利できるでしょう』


深夜まで続いた作戦会議の後、ダニエルは城の屋上で星空を見上げていた。明日からの戦いを前に、緊張と期待が入り混じっていた。


「ダニエル」セレスティア王女が隣に立った。「不安か?」


「いえ」ダニエルが微笑んだ。「むしろ希望を感じています。これほど多くの正義を信じる人々と共に戦えることを」


「同感だ」王女が頷いた。「明日からの戦い、必ず勝利しよう」


「はい、殿下」


二人は星空の下で、来るべき戦いへの決意を新たにした。新たな仲間たちと共に、愛と正義の力で世界を守る戦いが、ついに始まろうとしていた。

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