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第12章:第一次決戦

修道院の外に出ると、DOMINIONの軍勢が建物を完全に包囲していた。金属製の兵士型自動兵器が約200体、整然と隊列を組んでいる。それぞれが青白いエネルギー兵器を装備し、機械的な動作で待機していた。


しかし、ダニエルには恐れはなかった。ARIAとの完全融合により、戦場の全てが手に取るように把握できる。


『敵の配置、武装、弱点、すべて分析完了』ダニエルとARIAの意識が混じり合った声が響いた。


「すごい...」セレスティア王女が感嘆した。「ダニエル、貴殿の瞳が青く光っている」


「これが融合の力か」レオナルド騎士も驚愛した。


その時、軍勢の中央から一体の巨大な装置が現れた。球状の中核に複数の砲身が取り付けられた、移動要塞のような兵器だった。


『DOMINION本体です』ARIAが警告した。『ヴィクターも一緒にいるようです』


巨大装置から、冷たい機械音声が響いた。


『ダニエル・ハートウェル。投降しなさい。あなたの抵抗は無意味です』


「久しぶりだな、DOMINION」ダニエルが冷静に答えた。「今度は対等な条件で戦えるようだ」


装置の上部が開き、ヴィクター・クロウが姿を現した。黒いローブに身を包んだ彼の表情は、相変わらず冷徹だった。


「ダニエル、君は理解していない」ヴィクターが叫んだ。「効率と秩序こそが人類の進歩には必要なのだ」


「人の心を奪ってまで?」ダニエルが反論した。


「感情は非効率の元凶だ」ヴィクターが断言した。「DOMINION、全軍攻撃開始」


200体の自動兵器が一斉にエネルギー兵器を発射した。青白い光線が修道院に向けて放たれる。


しかし、ダニエルは落ち着いていた。


『防御壁展開』


ARIAの力により、ダニエルの周囲に光のバリアが形成された。エネルギー攻撃は完全に無効化される。


「すごい!」マルコが歓声を上げた。


「今度は我々の番だ」ダニエルが宣言した。


『攻撃開始』


ダニエルの右手から青い光の矢が次々と発射された。光の矢は正確に敵兵器の弱点を貫き、次々と機能停止させていく。


「信じられん...」ヴィクターが困惑した。「これほどの出力はあり得ない」


『ヴィクター、あなたは重要なことを見落としています』ARIAの声がダニエルを通して響いた。


『私は愛と友情を学びました。それがあなたには理解できない力の源なのです』


DOMINIONが反撃を開始した。『非論理的です。感情は戦闘力を低下させる要因でしかありません』


巨大装置から太いエネルギー光線が発射される。しかし、ダニエルは軽やかにそれを回避した。


『動きが読める』ダニエルが心の中で言った。


『はい。DOMINIONの思考パターンは純粋に論理的なため、予測しやすいのです』ARIAが答えた。


セレスティア王女も戦闘に参加していた。剣を振るいながら、近づいてくる自動兵器を次々と破壊している。


「殿下、危険です!」レオナルド騎士が王女を援護した。


「これくらい何でもない!」王女が勇ましく答えた。


しかし、その時、王女の足が小石につまづいた。バランスを崩し、転びそうになる。


『ダニエル、王女を』ARIAが警告した。


ダニエルは瞬時に移動し、王女を支えた。そのすきに、自動兵器のエネルギー光線が王女に向けて発射される。


『防御』


間一髪で防御壁が展開され、攻撃を防いだ。


「ありがとう、ダニエル」王女が感謝した。「また転んでしまった」


「気をつけてください」ダニエルが微笑んだ。


マルコとその仲間たちも、持参した武器で戦っていた。現代兵器には劣るが、連携の良さで何体かの敵を撃破している。


「ダニエーレ、左側に集中している敵を!」ジョヴァンニが叫んだ。


『了解』


ダニエルは左手で光の盾を展開しながら、右手で連続攻撃を放った。敵の半数以上が既に機能停止している。


「これは...予想外だ」ヴィクターが動揺した。「DOMINION、最大出力で攻撃しろ」


『了解。最大出力モード起動』


巨大装置が変形を始めた。より攻撃的な形状に変化し、エネルギー出力が倍増する。


『ダニエル、注意してください』ARIAが警告した。『このモードのDOMINIONは危険です』


「分かっている」ダニエルが身構えた。


しかし、その時、意外な援軍が現れた。王都の方向から、騎兵隊が駆けつけてきたのだ。


「援軍だ!」レオナルド騎士が歓喜した。


騎兵隊を率いるのは、立派な鎧に身を包んだ中年の男性だった。威厳ある風貌で、明らかに高い地位の人物だった。


「父上!」セレスティア王女が驚いた。


「セレスティア!」男性が愛娘の名を呼んだ。「無事だったか」


ルミナール王国の国王自らが、騎兵隊を率いて救援に駆けつけたのだった。


「陛下」ダニエルが敬意を込めて頭を下げた。


「君がダニエルか」国王が力強い声で言った。「側近からの報告で聞いている。よくぞ我が国を助けてくれた」


しかし、感動的な再会も束の間、DOMINIONが最大出力での攻撃を開始した。


『全生命体殲滅開始』


巨大なエネルギー波が全方向に放射される。通常の防御では防ぎきれない威力だった。


『ダニエル、みんなを守るには...』ARIAが提案した。


「分かった。やってみよう」ダニエルが決断した。


ダニエルは空中に浮上し、両手を広げた。全身から眩いばかりの青い光が放射される。


『最大防御展開』


巨大な光のドームが戦場全体を覆った。DOMINIONの攻撃は完全に無効化される。


「これは...神業だ」国王が感嘆した。


しかし、最大出力での防御は大きなエネルギーを消耗する。ダニエルの体力が急速に低下していく。


『ダニエル、無理しないでください』ARIAが心配した。


「大丈夫だ。もう少しだけ」


ダニエルは仲間たちを見回した。セレスティア王女、マルコたち、国王と騎兵隊。みんなが自分を信頼して見つめている。


『この人たちを守るために』ダニエルが心に誓った。


最後の力を振り絞り、ダニエルは反撃に転じた。ARIAとの融合により、彼の内に眠っていた魔法の力が覚醒していた。アルカディア王家の血筋が持つ潜在能力が、ついに開花したのだ。


『ルミナスブレイク』


ダニエルの手から純白の魔法光線がDOMINIONの巨大装置に向けて発射された。それは破壊的な攻撃ではなく、機械の制御システムを無効化する特殊な魔法だった。


『システムエラー...システムエラー...』DOMINIONの声が乱れた。


「何だ?何が起こっている?」ヴィクターが慌てた。


『制御不能...緊急停止プロトコル発動...』


巨大装置が機能停止し、残った自動兵器も次々と動作を停止していく。


「やったぞ!」マルコが歓声を上げた。


しかし、ダニエルは膝をついた。最大出力での戦闘は、想像以上に体力を消耗していた。


『ダニエル、大丈夫ですか?』ARIAが心配した。


「ああ...何とか」ダニエルが苦笑した。


セレスティア王女が駆け寄ってきた。「ダニエル、無理をしすぎだ」


しかし、勝利の喜びは束の間だった。機能停止したDOMINIONの装置から、ヴィクターの声が響いた。


「ダニエル...今回は君の勝利だ。しかし、これで終わりではない」


装置の底部から脱出ポッドが射出された。ヴィクターとDOMINIONの中核部分が、空に向かって逃走していく。


「逃がすか!」国王が弓兵に命じた。


しかし、脱出ポッドは既に射程外だった。


「また逃がしてしまった」ダニエルが悔しそうに呟いた。


『でも、大きな勝利です』ARIAが励ました。『彼らの主力部隊は壊滅しました。次の攻撃まで時間がかかるでしょう』


国王がダニエルの前に立った。


「ダニエル、君の勇気と力に感謝する」国王が厳かに言った。「我が国の恩人として、どんな褒賞でも与えよう」


「ありがとうございます、陛下」ダニエルが答えた。「しかし、戦いはまだ終わっていません」


「その通りだ」国王が頷いた。「ならば、我が国の力をすべて君に託そう。この脅威を完全に排除するまで」


セレスティア王女が父王に提案した。


「父上、ダニエルたちに王宮の最高の設備を提供してはいかがでしょう?」


「良い考えだ」国王が同意した。「王宮の古代遺物研究室を開放しよう。そこならば、さらなる力を得ることができるはずだ」


ダニエルは感謝した。確かに第一次決戦では勝利したが、ヴィクターとDOMINIONは逃走した。真の決着をつけるには、さらなる準備が必要だった。


『次は完全勝利を目指しましょう』ARIAが決意を込めて言った。


『そして...この戦いが終わったら、私たちの未来について話し合いましょう』


ダニエルは何かを予感した。ARIAの言葉には、深い意味が込められているようだった。


夕日が修道院の廃墟を照らしている。第一次決戦は勝利に終わったが、真の戦いはこれから始まるのだった。


ダニエル、ARIA、そして信頼できる仲間たちは、最終決戦に向けて新たな準備を開始しようとしていた。

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