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なぜか私だけが作れるポーション。

 それから私は数年、ビッグボスの元でポーション作りにいそしんだ。

 私以外が作っても()()()うまく作れないようで、結局私が作り続けるしかなかったのだ。


「なんでお前がクズ魔石をいじるときだけ、いい感じにポーションになるんだ?」

「わ、わかりましぇん」

「嘘ついてねえだろうな?」

「みぃ〜」

「まあいいか。お前しか作れないんだったら、他に技術を奪われることもねえしな」

「そ、そうでしゅ。だから売らないでくだしゃい」


 ゲームの『魔女のポーション工房』では、当たり前のようにクズ魔石でポーションを作れていたが、この世界ではなぜか、私以外の人が同じことをしても作ることはできないらしい。

 子供が作った方がいいとか、聖猫族なのが理由だからとか、色々考察はできたけれど、結局それ以上のことを調べることはできなかった。

 魔術師にうっかり


「すみませーん、この子変なポーション作れるんですけど、魔術解析していただけません?」


 なんて、密造してる側が言いに行くこともできないし。



 そんなわけで私は密造ポーションを昼夜を問わず黙々と作り続けた。

 ヤバい効能のポーションは「つくれましぇん~!」でごまかして、切り傷擦り傷や胃痛、胃もたれ、肩こりに効く程度の薬しか作らないでおいた。


 私を文字通り猫可愛がりしながら、ビッグボスは唇を尖らせる。


「おめー、すげーポーション密造できるくせに、薬草以下のポーションしか作れねえんじゃねえか。薬草は燃やしゃあトべんのに、おめーのはトべねえんだよなぁ」


 幼女に!やばいポーション!作らせるな!


「し、しょんなのつくれましぇん」


 私は猫耳をぺとーっとしておめめをうるうるさせる。

 なぜか妙に私に甘いビッグボスは、屈託なく笑って私の頭をくしゃくしゃ撫でた。


「まあいーよいーよ、ままごとみたいなポーションだろうが、薬草より即効性あるしインスタントに消費できるから売れまくって助かってるぜ♡」

「そ、それは……なにより……でしゅ」


 ポーション消費してやってる()()()()()()()()()()

 そこを追及したら社会的に死にそうなので私はきにしないことにした。


 私をすっかり信頼してくれたビッグボスは、研究のためにたくさんあれこれ材料を持ってきてくれた。

 おかげで、私は5歳にして『魔女のポーション工房』で作れる序盤の薬は全部作れるようになっていた。


 ゲームでは序盤開発のポーション。

 でも、この世界ではチート極まりない。


 おかげでビッグボスはマフィア世界で頭角を現し――そして、おもいっきり大抗争を巻き起こしてしまった。



 平穏の終わりである。

 ビッグボスのアジトは爆発炎上した。

 別れ際、ビッグボスは私を逃がしてくれた。


「ミミ太郎、お前は逃げろ。逃げ先は世話してやらねえしピンチも助けてやらねえけど、状況落ち着いたら戻ってきて俺の金儲けに利用させろ、絶対逃がさねえからな。俺のタメに生き延びろ、金になれ」

「びえーっ!」


 私は逃げた。ビッグボスが私の本名、ミルシェットを最後まで覚えてくれなかったのがせめてもの救いだった。



 そして逃げた私は、同じようにビッグボスの元から逃げた悪徳占い師のおばあさんに捕まり、スラム街の片隅で脱法ポーション作りをまたさせられることになった。流転の密造幼女である。


「ぴえー、さすがにこんな質の悪いクズ魔石じゃむりでしゅ! 聖水もないですし!」

「なんとかやるんだよっ! 巨万の富を築いていたじゃないかっ!」

「いたいいたい、みみをひっぱらないでくだしゃい」


 そんな風に過ごしていると、当然簡単に足はつく。

 悪徳占い師のばあさんと私は敵のマフィアと警邏騎士、その両方から追われる立場になった。

 するとおばあさんはなんと、私をおとりにして逃げたのだ!


「ひっひっひ! わしはただのか弱い老婆じゃからのう! そこの猫幼女ならどこに売り飛ばしても役に立つからほら、やるから、わしは逃げるぞっじゃあな!」

「ぴえーっ! 南無三!」


 私はくそばばあにスラムのゴミ捨て場に捨て置かれ、ぴえぴえと泣くしかなかった。

 お腹はぺこぺこだし手足はひりひりして痛いし、ビッグボスに与えられていたかわいらしい服もくそばばあに奪われて、シュミーズとかぼちゃぱんつ一枚で。


「えーん、あの奪衣婆―っ! 羅生門―っ! もう終わりでしゅーっ!」

「いたぞ! あのばばあの連れてたガキだ!」

「本当の意味でメスのガキだ! 聖猫族のガキだ!」

「ぴえっ」


 私の元に先にやってきたのはマフィアのほうだ。敵のマフィアにぺとーっと土下座をして私は訴えた。

 治安維持騎士団に捕まってしまえば全てがおしまいだ。なぜなら私は……密造幼女、ミルシェット!!!!


「わ、わたし密造ポーション作れましゅ。役に立ちましゅ。どうか能力を買ってくだしゃい」


 しかし敵のマフィアは顔を見合わせ、絵文字かとおもうくらい綺麗に肩をすくめて見せた。


「なにいってんだ嬢ちゃん。お前はこれから猫耳幼女フェチのいけないお店に売り飛ばしてやるからな」

「びえーっ!」


 そうだ。私の言うことを信じてくれたビックボスが特別だったのだ。

 普通なら幼女が「ポーション作れましゅ」なんて言っても信じない。普通は。


「さあ来い。警邏騎士なんかによこしてたまるか」

「猫耳幼女、しかもあの男のお気に入りだ。とことん金にかえてやるぜ」

「ぴえええ……!」


 万事休す!

 だがその時、突風が敵のマフィアを吹っ飛ばした!


「うわー」


 気絶したマフィアたちを蹴り飛ばし、砂煙の中からやってきたのは、長い黒髪を靡かせた男性だった。

 スリーピースの貴族らしいノーブルな服を着た、眼鏡をかけたうさんくさい貴族っぽいおじ……お兄さんか微妙な年齢の男性だった。

 金色の瞳を細めて、貴族男性は柔和な笑顔を私に向けた。


「一緒に逃げましょう、私が助けて差し上げますよ」

「ぴえっ」

「悩んでる暇はありませんよ、それー」

「ぴえええ」


 彼は笑顔で有無を言わさず、ぽいと私をつまみ上げると馬車へと放り込む。

 馬車は彼が乗ったのと同時に凄い速度でスラム街を抜けていく。

 土煙が落ち着いたころには、馬車は市街地に出ていた。


「ここまで出れば安全ですね。まさか王宮魔術師御用達の馬車がスラム街にいたとは思いませんでしょう」

「お、おーきゅー……まじゅつ……」


 彼は金の瞳を細めてにこっと笑う。


 さーっと血の気が引く。そして私は馬車の扉を開けようとした! カリカリカリカリ! 爪がひっかかる!


「おやおや、そこは爪とぎではありませんよ」

「にゃーっ! ゆるしてくだしゃいーっ! お願いーっ! 」

「こらこら逃げようと思っちゃあいけません。幼い女の子、しかも聖猫族で、密造ポーションの関係者として各方面から追われる身のあなたが、身一つでどうやって生き延びるのです」

「ああああなたが安全とも限りませんし……! そ、それに王宮魔術師御用達の馬車って」

「ああ、それについてはご安心ください。私今王宮魔術師ではありません、無職です」

「むしょっ……」

「この馬車は借りパクしてきただけなので、足は着きゃあしません。御者にもたっぷりお金を弾みましたので口外されることもないでしょう。そもそも金に目がくらんで勝手に馬車を出した時点で、彼も私と同罪ですしね?」

「あわ、あわわ……」


 にっこにこでノーブルなこの男は、なにを言っているのだろうか。

 優しげで、実際私を助けてくれたし、いい人っぽくはある。

 けれど転生前含めた人生経験が訴えてくる。この男はやばいぞ、うさんくさいぞ、と。


 馬車の外からは、がやがやとした昼下がりの賑わいが聞こえてくる。

 私は暴れるのを辞める。――外に出たらおしまいだ。

 これは意図的に、人混みの中に馬車が置かれている。


「あ、あの……おじさんの……望みはなんでしょう……」

「おじさんとは失礼な。一応まだ20代です」

「ごしゃいからしたらおじさんでしゅ」

「ああ、窓の換気をしたくなってきましたねー、それドアを」

「ぴえええええやめてくらしゃいいいい」


 ドアを開けようとするおじさ……お兄さんに思わずすがりつく。

 私にふふふと嫌な勝ち誇った大人げない笑い方をすると、おじさんは足を組んで穏やかに話し始めた。


「改めまして。私は元王宮魔術師クリフォードと申します」

「元……おーきゅー……まじゅつし……でしゅか」

「ええ。今回はロビン・スターゲイザ――通称『ビッグボス』の元で密造ポーションを作っていたあなたに、ご提案があってお迎えいたしました」

「にゃ、にゃんのことでしゅか……?」


 私はどきっとしながら、可愛くごまかしてみる。

 実はビッグボスの本名は一部のブラザーしか知らない極秘情報だ。

 私はたまたま、彼の懐中時計の刻印を見て知っていたけれど。

 それを知っているこのおじさ――クリフォードさんは、ただものではない。


「ミルシェットさん。あなたが密造ポーションを作っていたという噂は本当のようですね?」

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