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【受賞&11月10日発売】転生のらねこ薬師さんのひみつのレシピ ~天才パパとしあわせカフェ、開店にゃ!~  作者: まえばる蒔乃@受賞感謝
第三章・ねこねこかふぇのくっきーをどうぞ

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その頃のビッグボス2

 都市ケーラから離れた、とある海商都市の地下カジノにて。

 夜も煌煌と光り輝き、煙草の煙と人間の欲と熱気でむせ返るようなフロアにて、今日も悲喜こもごもの歓声が響いている。

 そのフロアを見下ろす特別席にて、一人の金髪の男がどっかりと椅子に座り、不機嫌そうに場を監視していた。ビッグボスだ。


「っち、クソが……俺ともあろう男が、田舎のカジノの雇われ店長に落ちぶれるとはなあ」


 わかりやすい自己紹介の通り、彼は昔なじみの同胞の元に間借りし、カジノの雇われ店長の地位に収まっていた。

 もちろん不満である。同胞に借りを作るのは最悪である。

 その苛立ちが、彼がぎりぎりと噛みしめる紙煙草の曲がりっぷりに現れていた。

 ともあれ今は潜伏させてくれる相手が貴重だ。

 なにせ今のビックボスは――追われていたからだ。

 あのクズ魔石の密造ポーションの製造方法や入手経路について、それこそ裏と表の権力者たち、皆から。


 一画から大きなどよめきと歓声が沸き起こる。

 最初は聞き流していたが、その興奮はどんどんフロア中を飲み込んでいく。

 放って置けねえタイプの騒ぎかと、ふんぞり返った座り方を直して身を乗り出す。


 人が集まるのはルーレットの台だった。ウィールが回るごとにチップをどんどん積み重ね、誰か一人勝ちしている人間がいるようだった。


 サングラスを外してよく見る。

 見下ろした先には、輝く銀髪の少年がいた。14歳くらいだろうか。

 丸い少年らしい頭に、気の強そうな美少女、と言っても通るような凜とした顔立ち。

 大きな瞳は空色をうつしとったような極上のアクアマリンで、華奢な体を着ぶくれさせるように、大仰なマントと法衣のようなものを纏っている。服装も雪や氷を思わせる淡い白や水色の配色で、遠目にはまるで、雪に守られた妖精がすんとした顔で立っているように思わされた。


「おい、小僧。てめえイカサマやってんじゃねえだろうな?」


 似たような罵詈雑言があちこちから飛び交う。

 うずたかく積まれたチップを前にしても、自分より一回り以上体格のいいゴロツキたちにすごまれても、彼は聞こえていないかのように涼しげだった。


 すっと、その少年の眼差しがこちらへと向く――ビッグボスのほうへ。


「っ……!!」


 氷に射貫かれた。

 そう錯覚した次の瞬間、真後ろにぴたりと少年がつけていた。

 首筋にひやりとした金属が触れる。魔術師の杖だ。


「ロビン・スターゲイザーだな」


 掠れた変声期直前の声で、少年はビッグボスを本名で呼んだ。


「ようやく見つけた。騒ぎを作れば、お前が必ずこちらをのぞき見ると思った」


 ビッグボスが座っていた場所は特別製のガラスで、フロアから内部は見えない作りになっていた。ほんの少し、ビッグボスが少年に意識を向けただけで。

 特別製のガラスを通り越して、少年はビックボスに気付いた。

 それだけではない。少年は後ろからまさに、いつでもビックボスを殺せる位置にぴたりとついている。


「俺を脅そうが、密造ポーションの場所は言えねえぜ?」

「僕が聞きたいのはそんなどうでもいいことではないロビン・スターゲイザー」

「その名前連呼するの辞めてくれねえか、恥ずかしい」

「ロビン・スターゲイザー」

「クソガキ、俺の本名を囁く為だけにきたわけじゃねえだろ?」

「人を探している」


 少年は続けた。


「ロビン・スターゲイザー。長い黒髪に眼鏡の、胡散臭い男を捜している。協力を要請したい」

「頼んだら探してくれると思ってんのかい? ぼっちゃん」

「少しは追っ手を減らしたいだろう? 僕は宮廷からの追っ手なら、片付けてやれる」


 ぴく、と本名ロビン・スターゲイザーことビッグボスは反応する。


「この地下から出られない、雇われ店長暮らしを続けたいなら帰る。だが」

「話しをきこうか、坊ちゃん」


 ビッグボスは両手を挙げ、彼に向き直って肩をすくめる。


「まずはその杖を下ろせ。俺は話をちゃあんと聞く男だ、安心しな? 何せ部下に、5歳のノラネコを登用していたくらい理解ある男だからな?」


 二人の視線が交差する。

 二人は向かい合わせに腰を下ろし、一対一で交渉を始めた。

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新刊情報のお知らせ

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第一章まるっと試し読み
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転生のらねこ薬師さんのひみつのレシピ ~天才パパとしあわせカフェ、開店にゃ!~ 表紙
転生のらねこ薬師さんのひみつのレシピ ~天才パパとしあわせカフェ、開店にゃ!~ 表紙

新刊が出ます!

作品情報

転生のらねこ薬師さんのひみつのレシピ ~天才パパとしあわせカフェ、開店にゃ!~
著者:まえばる蒔乃
イラスト:п猫R

発売情報

発売日:2025年11月10日(日)
出版社:ドリコムメディア
レーベル:DREノベルス
定価:1,540円(本体1,400円+税)

ISBN:978-4-434-36578-2


社畜生活の末に命を落とし、プレイしていたゲーム世界の猫耳種族として転生したミルシェット。天才だけれど胡散臭い元宮廷魔術師のクリフォードに救われ、偽装親子として田舎町でカフェを経営して暮らすことに。転生知識とポーションの力でお悩み解決!幸せあふれるカフェストーリーです!


新作をお届けできることを嬉しく思います。

ぜひ書店や電子書籍ストアでチェックしてみてくださいね!

発売日:2025年11月10日(日)
みなさまどうぞよろしくお願いいたします!


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