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プロローグ:女生徒、ちんぽに出会う

本編開始です。ここから先はオールフィクション! 対よろ!!

 新学期、通学路。

 散りつつある桜の、しかしそれでも風情を感じさせる並木道を歩きながら、わたしは新生活への期待と不安で胸をいっぱいに膨らませていた。

 今一度、わたしはその左手首に巻き付けた高機能自発光(スマート)方式電子時計(ウォッチ)の画面を眺める。やはり、少し遅れてしまっているようだ。


「……これから登校する時はもうちょっと早く家を出た方がいいかな、うん。よし、やっていこう」


 自分自身に喝を入れるようにして、あるいは人生において大切なことを忘れないようにするため、わたしはそう口にする。

 そしてわたしは自分自身に物理的な喝を入れるべく、自身の顔の両側に垂れ下がる黒々とした三つ編みお下げを腕で退けるようにしてから、ぱんぱん、と、頬を叩いた。


 ◇


 錦章台学院大学附属高等学校。


 校門に書かれている文字を改めて眺めた後、校門の横に貼られていたラミネート加工されている張り紙らしきものに、わたしは視線を向けた。

「えーっと……附属中学校にご用の方はこちら、高校の場合は……」

 張り紙のすぐ隣に備え付けられたインターホンを押す手もあるかな、とは思ったものの、せっかくだし今は一人で校内を見て回りたい気持ちだ。張り紙の指示に従って、わたしはひとまず昇降口の方へと向かってみることにした。


 周囲に人影がないか注意を払いつつ、わたしは通学鞄──転校してきたわたしにとっては真新しい、この学校に指定されている通学鞄のサイドポケットの辺りに手を差し込むと、学生証を兼ねた校内通行証が入っているパスケースを取り出す。


 ぴぴっ、という小さい音が鳴ると同時に私わたしの前にあるゲートが開いた。


 小走りをするようにして門を潜り抜け、何かとぶつかったりすることがないように再び周囲を確認した後、わたしはカードに記載された内容を改めて確認する。


 花をあしらった校章。

 錦章台学院大学附属高等学校、学生証。

 氏名、美柚(みゆず)玉姫(たまき)

 上記の者は本校の生徒であることを証明する。

 錦章台学院大学附属高等学校、校長。

 あと、学校名を示す四角い印章。


 個人情報保護の観点からか最低限の情報だけが記載されたICカードを眺め、わたしは自分の口元がほころんでいることを自覚する。

 感慨深いものがあるなあ。前の高校の時は…………まあ、うん、結局一度も通わないままに転校してしまったから、こうやって情緒に浸るような経験をしたこともなかった訳だけれど。

 新たな学校、新たな生活。改めて、がんばってやっていかなくちゃ。


 決意を胸に、わたしはゆったりとした足取りで昇降口へと向かう。

 きょろきょろと辺りを見回してみても、この広い敷地内を歩いている人はわたしの他には誰もいない──少なくとも目に見える範囲ではいない辺り、今はまだ朝のホームルーム中だろうか。

 事前に遅れるという連絡をしたとはいえ、こんなにゆっくりしているのは悪い気がしてきた。一応遅刻してる身だぞ。もしかしたら、わたしの社会常識はここ一年と少しの生活の間で大分失われてしまっているのかも知れない。

 歩みの速度を上げ、わたしは急いで──より正確には、急ぎつつもこれから通うことになるこの学校の様子を眺めたりしながら、昇降口のある校舎へと向かうことにした。


 ◇


 無事に昇降口へと辿り着き、ふう、とわたしは言葉通りの意味で一息つくと、ひとまず来客用のスリッパに履き替えることにする。

 いちいちこの背負っている鞄──通学鞄ではなく、転校するにあたって必要な荷物をまとめたナップサックの中から上靴を出すのも手間だし、転校手続きこそ既に終わっているとはいえ、この場所でのわたしはまだ越境者のような存在だ。

 後で靴箱の場所も教えて貰えるだろうから、その時に履き替えればいいはず。つらつらとそんなことを考えつつ、わたしは土足をスリッパに履き替えてから昇降口付近に掲示されたアルミプレートを眺めた。


「入って正面から右が職員室、左には保健室とかがあって……」

 二階から上の避難ばしごの位置等についてもそれとなく確認してから、職員室に向かうべくわたしは振り返る──と、廊下の片隅に何かが置いてあることに気がついた。

 より具体的には、長机。机の上にはプラスチック製の用紙入れがいくつか置かれていて、それらの中には生徒向けのお知らせの要約書(レジュメ)宣伝広告(チラシ)のようなものが入っているようだ。


 何となく興味を惹かれたわたしは、半透明なケースの中身へと改めて視線を向ける。

 わたしは新1年生ではないけど、2年生で転校するという少し珍しい身柄にとっては何か役に立つ配布物があるかも知れない。熱中しすぎないように気を払いつつ、わたしはいくつかのプリントを確認し、時には手に取り──


「……あっ」


 部活説明会の案内らしきものを発見したわたしは、それをしっかりと手に取ってまじまじと眺めてみることにした。

 部活──部活、か。改めて考えると、わたしはそういう類のものとは随分と縁の遠い人生を送ってきたような気がする。

 身体を動かすこと自体は苦手という訳ではないし、いろんな文化に対しての興味もある方だと思ってはいる。けど、ちょっとだけ、わたしには物事に熱中しやすいというか、そういう感じの精神不調にも似た傾向があるからなあ。ちゃんと自覚しておかないと事故の元だし、これからも気を付けて生きたいと思う。


 でも、せっかくの新生活。

 高校2年生という中途半端な、元々その部活に参加していた人々からすれば中途参入者という身になる状態ではあるものの、部活に入ってみるというのもいいかも知れない。


 残念ながら説明会とやらはもう先々週に終わってしまったらしく、この紙判が本来の役目を果たすことは残念ながらないようだ。

 でも、わたしにとっては有益な情報源であるには違いない。わたしはこの学校にどんな部活があるのか知見を得るべく、部名が列挙されたリストへと視線を落とす。

 職員室に行く途中だったのを直前でぎりぎり思い出し、熱中しすぎない程度に気を付けつつ、わたしは紙面を眺める。


 陸上競技部。

 水泳部。

 バレーボール部。

 テニス部。

 薙刀部。


 へえ、そんなものもあるのか。さすが女子高。

 運動部ばかりが掲載されているけど、この部活説明会は運動部に特化したものだったのかな?


 バスケットボール部。

 ⿳⿳⿳⿳⿳⿳⿳⿳華道部。

 バドミントン部。

 ソフトボール部──


「うん?」


 あれ、華道部?

 女子高だしそういうものがあっていいとは思うけど、他は全部運動部なのに何となく場違いな感じがするような。単にこの高校は文系の部活動があまり盛んではないというだけなのかな?

 あと、何となく位置揃えが変だったというか、誤記みたいなものが一緒にくっついているような感じだったというか……


 わたしが改めて、リストを確認してみると。

 そこには、こんな文字列が並んでいた。




『ゲーミングちんぽ華道部』




「……なにそれ?」

ひとまず対あり。お暇でしたら気が向いた時にでもまたよろしくお願いします。



……ええと、わたしは割と本気なので。

センシティブな話題をおちゃらけた感じで扱わないよう、しっかり心がけます。太宰治先生は心の師。


という訳で、『女生徒』は太宰治先生の代表作のひとつです。現代日本に生きていて、多少なりとも小説というものに触れているのなら、当然ご存じですよね?

まさか『人間失格』しか知らないとかいうアホはいねえよなあ? だって『走れメロス』は教科書に載ってるもんなあ? 最近の教科書ってどうなのか知見がないので、載ってなかったらごめんね。


まあ、令和の世は情報が溢れすぎているので。一般的な読者の方々におかれましては、古典文学作品のことはあまり知らない、という感じであってもある程度は仕方のないことだと思います。

なので、青空文庫のリンクを貼っておきますね。忌村の作品は気が向いた時に読めばいいからひとまず『女生徒』を今すぐに読め。わたしは強火のオタクです。


女生徒 - 太宰治

https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/275_13903.html


読む気が起きなかったとしても、最後の行だけでいいから読め。

いいから。何なら引用してやるから今読め。ほら。


“おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか? もう、ふたたびお目にかかりません。”


ほら。

文学史的な観点から言えばまあ色々ある作品なのは確かではあるものの、仮に元ネタになった日記の文章そのまま不正引用(まるパクリ)であったにせよ、この一文の決め台詞的威力(パンチライン)はすごい。

そして、この最後の部分を最大限活かすためだけにその前の部分が存在していると言っても過言ではないと、わたしは思っている(個人の感想です)。

ときめきに死ぬがよい。お前らにはキュン死とか書いた方が伝わりやすいか? ん?


言葉は人を殺せるので、せっかくなら正しく使いたいところですよね。

なので、語彙を増やすために。少なくとも文芸作品を書いていらっしゃるという自負がある方々におかれましては、過去に文豪と呼ばれた方々の作品に触れるくらいのことはしていいんじゃないか、と思っています。しろ。だって青空文庫っていう開かれた場所にあるんだから。というかネットの片隅だったとしたら這ってでも探しに行け。目の前に調べるための板やら箱やらあんだろ。

“アンダーグラウンドから君の指まで遠くはない”って某アーティストさんもブログかどこかで仰っていたぞ。歌ってもいた。……これ歌詞に該当するんですかね? わたしの初見は歌詞カード以外の文字情報であったのは確かなんですが。該当するならすみません。ちゃんとこの言及部分に関しては消すので、教えてください。


まあ、その辺の事情はさておき、ですね。

別に偉そうに講釈出来るほどの知識はないし、こういうことを言うのはあまりよくないとは自覚してはいるけれど、古典文芸ナメんな、みたいな気持ちが少なからずあります。わたしは強火のオタクです。

というわけで、対戦よろしくおねがいします。



読めよ? あと、怒られたら消します。



女生徒 - 太宰治

https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/275_13903.html

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