表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

貧乏人

作者: タッチ
掲載日:2023/02/12

 俺は一目惚(ひとめぼ)れをした。


 雪の()る中、ボロを(まと)う女の子にだ。


 俺は(きたな)い見た目をした女が好きだったのだろうか?


 この積雪で、外でボロボロな服をきて寒くないのだろうか? その(ひとみ)はどこを見ているのか分からない。


 (さいわ)い、俺にはわずかばかりの金があった。

 服屋を(いとな)んでおり、少々流行っていた。


 服をあげることにした。

 きっと喜んでくれるだろう。

 ここでお近づきになり、この子に一目惚れした理由を()()かすのだ。


「いらない」


 、、にべもなく断られた。

 話かけた時点で(すで)にすごくイヤそうな顔をされていた。


 村一番のスーパーオシャレイケメンZ(ゼット)な俺にだ!


 これは、由々(ゆゆ)しき自体である。

 話かけただけでイヤがられるとは!


 困った!

 このままでは、俺がこの子を好きになった理由を解明(かいめい)できない。


  、、しかし、なんだ。

 話かけるまでは、いやな顔はされなかったのだ。

 側にいるだけなら問題ないのではなかろうか?

 というか単純に彼女の(そば)にいたい。


 俺は積雪のなか、上着を下敷(したじ)きにして横に座った。

 相手の顔色など伺わなくとも、論理的に間違っていないはずた!


 それから毎日、彼女の横に居座(いすわ)るようになった。


 相変わらず横にいるだけで心が落ち着く。

 この積雪のように自分の心が白くなる感じだ。


 ある日、店に戻ると俺の店は倒産していた。

 店の広告塔たるスーパーオシャレイケメンZの俺が、こんなボロを着た子の横に毎日いたのだ。

 固定客達は、おしゃれな服に興味がなくなり、客足は遠のいていった。

 

 しかし、俺は全く()りなかった。

 その日からその子の側が俺の家になった。


 また、冬がきた。

 ある日「寒いね」と言われた。

 口をきくのはあの日以来か。


 俺は「寒いね」と答えた。

 必殺おうむ返しというやつだ。


 実は、生活のために私財を売っていたので、着る服はこのボロい一張羅(いっちょうら)だけ。

 嘘ではない。今となっては実際に寒いのだ。


 いや、待てよ?

 あの日、彼女にあげようとした服だけは隠し持っていた!


 、、が、あれは1年前のこと。

 外で管理していたので、ボロボロになっていた。


 でも、彼女から話かけてくれた今がチャンスだ!


 俺は(ふところ)から無言で、彼女にボロを渡した。


「大切にするね」


 あの日とは違い、彼女は笑顔で受け取ってくれた。

 今、彼女が着ているのは俺のあげたボロだ。


 渡したのはボロなのに、とても嬉しい気持ちになった。


 俺は、ボロボロと泣いていた。

 


 あれから、彼女は相変わらずボロを(まと)っている。

 (くも)りガラスは前より()んで見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ