スーパーイケメンZと一目惚れ
俺は一目惚れをした。
雪の降る中、ボロを纏う女の子にだ。
俺は汚い見た目をした女が好きだったのだろうか?
この積雪で、外でボロボロな服をきて寒くないのだろうか? その瞳はどこを見ているのか分からない。
幸い、俺にはわずかばかりの金があった。
服屋を営んでおり、少々流行っていた。
服をあげることにした。
きっと喜んでくれるだろう。
ここでお近づきになり、この子に一目惚れした理由を解き明かすのだ。
「いらない」
、、にべもなく断られた。
話かけた時点で既にすごくイヤそうな顔をされていた。
村一番のスーパーオシャレイケメンZな俺にだ!
これは、由々しき自体である。
話かけただけでイヤがられるとは!
困った!
このままでは、俺がこの子を好きになった理由を解明できない。
、、しかし、なんだ。
話かけるまでは、いやな顔はされなかったのだ。
側にいるだけなら問題ないのではなかろうか?
というか単純に彼女の側にいたい。
俺は積雪のなか、上着を下敷きにして横に座った。
相手の顔色など伺わなくとも、論理的に間違っていないはずた!
それから毎日、彼女の横に居座るようになった。
相変わらず横にいるだけで心が落ち着く。
この積雪のように自分の心が白くなる感じだ。
ある日、店に戻ると俺の店は倒産していた。
店の広告塔たるスーパーオシャレイケメンZの俺が、こんなボロを着た子の横に毎日いたのだ。
固定客達は、おしゃれな服に興味がなくなり、客足は遠のいていった。
しかし、俺は全く懲りなかった。
その日からその子の側が俺の家になった。
また、冬がきた。
ある日「寒いね」と言われた。
口をきくのはあの日以来か。
俺は「寒いね」と答えた。
必殺おうむ返しというやつだ。
実は、生活のために私財を売っていたので、着る服はこのボロい一張羅だけ。
嘘ではない。今となっては実際に寒いのだ。
いや、待てよ?
あの日、彼女にあげようとした服だけは隠し持っていた!
、、が、あれは1年前のこと。
外で管理していたので、ボロボロになっていた。
でも、彼女から話かけてくれた今がチャンスだ!
俺は懐から無言で、彼女にボロを渡した。
「大切にするね」
あの日とは違い、彼女は笑顔で受け取ってくれた。
今、彼女が着ているのは俺のあげたボロだ。
渡したのはボロなのに、とても嬉しい気持ちになった。
俺の視界は涙で歪んでいる。
俺は、ボロボロと泣いていた。
ボロだけに。
◇
あれから、彼女は相変わらずボロを纏っている。
ただ、その瞳は前より澄んで見えた。
、、彼女に2度目の一目惚れをした。