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はじまりは本能寺から  作者: 太田牛一朗
1/1

ついに決着をつける時、いざ尋常に勝負せよ

静寂に包まれた境内に、ふと人の気配を感じた

床に入っていた信長だが、すぐに目を覚まし襖の向こうにいる小姓に声を掛けた

『お蘭』


『はっ見てまいります』

信長の小姓を務めるというのは求めることを先読みして行動するくらいの器量がないと務まらない。


しばらくののち

『御屋形様、謀反ござる』

様々な報告や状況を整理して的確に報告する


『境内に賊が乱入しております。』

報告はシンプルで要点をついたものでないといけない。


(まさか奇妙か?)

一瞬、信長の脳裏には、先ほどまで一緒にいた奇妙の顔が浮かんだがすぐに確認をする


『旗印は?』

『桔梗の紋、明智殿の軍勢です。』


『明智?』


一瞬、何が起こっているのかわからなかった

信長の頭では遠い場所にいるはずの明智がここに?


明智がここにいる

その現実を受け止め、思考を整理すると答えがおのずと導き出される


(そうか、明智がやったか)

思考の末たどり着いて出た言葉


『是非に及ばず』


『台所方、女どもを落とせ。後のものは徹底抗戦ぞ』

『明智が鍛えし、兵どもをわれ自身で検分してくれるわ』


所詮、多勢に無勢、数刻と持つこともなくそこら彼処で崩されていった。

『もはやこれまで。お蘭、これより火を放つ。一歩も中へ入れるでないぞ。』


そういって信長は奥の寝室へ消えていった。



(フフフ、まさか明智がやるとはな

まぁ良い。思う存分戦国を楽しんだわい)


そうして腹を召すところで、スッと背後に気配を感じた。

『何奴?』


『ハハハ、信長よ。存分に戦国の世は楽しんだか?』

血臭がすさまじい異形の武者は見たこともない得物を持ち、こちらを見下ろしていた。


脇にあった名刀、宗左文字を抜き放った

『貴様は何奴じゃ?』


『黄泉からの使者、とでも言っておこうか。貴様を連れに来た。まだまだ貴様にはやってもらわなければならぬことがあるのでな。

勿論、貴様の意思や望みなどは関係ない。これから数百年後の世界で我々と一緒に人類の皆殺しを手伝ってもらう。』


(何を言っている?)

信長には異形の武者が言っていることは全く理解できなかったが、ただ事ではないことが起こっているのは、全身で感じていた。


『おしゃべりが過ぎたようだ。ここは長くは持たない。では旅立つとするか。』


すっと差し出した手の先から怨霊の群れが飛び出して部屋中を覆いつくしていった。

その中に信長を身体ごと飲み込んでいった。


『心配するな。信玄坊主も、軍神も先に待っておるわ。ハハハハハ』

そういって地上にできた黒い闇の中に飛び出した怨霊どもと一緒に消えていった。



数百年後の現代


『真司、見たニュース?』

『んにゃ。今起きたところ、なんかあった?』


寝起きでぼさぼさの頭を掻きながらリビングにやってきた同居人に向かって沙也加は話した


『元首相が銃で撃たれたって』

『はぁどこの話し?日本でそんなことあるの?』

『もう朝からずっとこのニュースばっかりだよ』

『マジか…日本も物騒になったねぇ』


その頃、首相官邸では事件の内容、状況把握、犯人の動機、経歴、など様々な情報の整理で多数の人間が詰めてバタついていた。


総理は頭の整理をするために別室に移ってひとり思考を巡らせていた。


そこに背後から忍び寄る人影を感じたが、体が言うことを聞かず、声も出せない。

(誰だ)


『貴様が現在の日の本の長であるな。現代では総理というらしいな』

信長の元に現れた異形の武者がそこには立っていた。


『心配するな。貴様をすぐに殺すことはない。我々には先にやることが残っておるのでな。』

『今日来たのはそちらの指示系統を止めるためじゃ。』

『今頃は別室の重鎮どもは皆殺しとなっていよう。ハハハ』


まるで時間が止まっているような感覚で周りの音も、気配も何も感じない。

この場所が別の空間に隔離されているような感覚であった。



『おぬしは知らぬと見えるが、この日の本には強力な結界が張ってあるのじゃ、おかげで我らの軍勢も思うように行動できぬ。』

『まずはその結界を破るのが当面の目的じゃ。』

『貴様らがどれだけ足掻けるか?試してやろうと思っての。今日はここまでやってきたのじゃ。』

『ここでの用ももう済んだので帰らせてもらうぞ。』

『では総理、次に会う時は命がないものと思えよ。ハハハハハ』


そういって地面に現れた闇の中へと消えていった。

と同時に、自分を縛っていたものが解けたかのように軽くなり、座っていた椅子から滑り落ちた。

(いったい、何が起こったというのだ)

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