冒険者に戻った男
一年半、街を作り続け
全く、全然、これっぽっちも〈冒険〉をしていない。
これでは土木作業員としての人生が始まってしまう。
前世は挫折が多い人生だったから、今回だけはビシッと筋を通したい。
冒険者として何かを成し遂げる…
その為に、〈帝都〉に米を買いにいく!!
だって、現場仕事の後の濃い味のオカズに白飯がすすむ、すすむ、
いや、すすみ過ぎたのかも知れません。
…全部食べちゃった…
俺も馬鹿では無いので、血の涙を流しながら、種籾は必死で食べるのを我慢したが、
もう、辛抱たまらんっ!
街には、商会メンバーやお屋敷組と工房組に家畜などなどの引っ越しが済み、
ベンさんやトーマスさんに、マヨネーズの街を頼んで、俺はクロイを召喚してから旅支度をした。
ホランさんに
「夜は馬具を外してから送喚します。」
と伝えて帝都に〈ガルドさん〉と向かうのだが、あくまでも〈冒険者〉なので、
紋章のない、ただの小型の荷馬車で向かった。
サラは用事が有るらしく、
「兄…じゃなくて、お師匠様、今回はご遠慮させて頂きます…わ?」
なぜ疑問形?
と、思いながらも十五歳になってこの世界での成人を迎えた〈サラ嬢〉には、中身がオッサンの俺には解らない青春のアレや、コレが有るのだろう。
…グスン、最近ヨソヨソしいし…来ちゃったのかな?反抗期が…
「師匠臭い」、「師匠キモい」とか言われる…いや、裏ではもう?!
駄目だ、目から果汁が滴り落ちる…。
荷馬車に揺られながら、〈しょげて〉いると、
ガルドさんが、
「ご主人様、如何なされました?」
と聞いてくれるので、
馬車を運転してくれているガルドさんの隣で膝を抱えて、
「すみませんが、暫く〈拗ねます〉ので放置をお願いします。」
と告げてから、寂しさを噛み締めた。
約二週間、中身がオジサンと、丸々オジサンの二人旅が続き、
帝都に到着した。
言い忘れたが、リオは当面冒険には参加しない、
というか出来ない、
ガルに〈シテ、ヤられて〉、五匹のチビのママになっている。
サラに聞いたら、プラもガルにイテコマサレタらしいが、種族の差かベイビーは生まれなかった…
げに恐ろしき、発情期、
ガルのヤロウにウチの娘を二人とも…
…それを気にしてサラはヨソヨソしいのかな?
と言うわけで、テイマーなのに俺の従魔は
〈移動系〉のクロイとサンダー
〈家畜系〉のコッコとシズカ
〈保護中〉のパパン・ママン・サン親子
となり、戦闘参加が出来る者が居ない。
プラを召喚しても良いのだが、あからさまにリオの子供達の面倒を楽しそうにみているので、
呼び難い…。
かろうじて、パートタイマーの従魔的な枠で〈ゴーレム〉君が居るくらいだ。
従魔を探さなければ、自分の領土のダンジョンにも挑めない。
が、しかし今はまず米を買わなければ、
帝都に着いてクロイを送喚して、荷馬車をアイテムボックスにしまい、
小走りぐらいのスピードで〈山田商店〉に滑り込む。
店長は勿論、無駄に若々しく、
会長は、ぎっくり腰から復活していた。
前回の約束の翻訳は、工事の合間をみつけては、〈シコシコ〉頑張って、既に送ってある。
米の購入と共に、前回の続きを読みふけった。
そして、山田 登さんの日記から在ることに気がつく。
〈あれ、出会った神様一緒じゃない?〉
日記に出てくる日本の地域や神様についての記述、やり取りしたときの手記にある喋り方…
俺の時、
少し前に異世界の神様のせいで神様パワーが空状態と言っていたし、
山田 登さんを送ってしまったから、神様パワーがなくなったのでは?
と考えるも時期が合わない。
しかし、この日記には、俺がこっちに来る半年前に出来たばかりの商業施設に彼女と行った話が書いてあった…。
二十歳前後で転移した山田 登さんは、九十歳で、死んだらしい。
もしかしたら、時間の進み方が違う可能性もあるが、
…まぁ、デートのくだりは内緒にしてあげようかな?
とりあえずは、
買い出しも終わり、店を出ようとした時、前回、米・味噌・醤油・に気をとられていたが、
稲作用の農機具が並んでいた。
社会科の稲作の授業で農家さんから、今の農機具と昔の農機具で教えて貰った、
唐箕やら〈足踏み脱穀機〉に異世界ナイズされた〈魔石式の石臼〉など
〈ウチの工房でも作れそうだけど、念のため買っておこうかな。〉
と衝動買いしてから今回のメインイベント、従魔探しに移る。
帝都の冒険者ギルドに行き、
冒険者登録をする。
なぜなら、王国と、帝都の冒険者ギルドは別組織なのだ。
王国でA級でも、帝都では〈F級〉からの出発だが、
別に昇級する気はない、
魔物買い取り用の為だけの登録だ。
あとはギルド図書館で魔物の出没エリアの資料を〈記録〉して、
帝国での狩りをオッサン二人で始める。
帝都から南に3日ほどの森に入る。
目指すは虎魔物の〈キラータイガー〉というデカい虎か
〈影豹〉という、アサシンタイプの豹を仲間にスカウトしたい。
まぁ、〈友好度〉しだいだが…
オッサン二人で移動し、
オッサン二人で森を進み、
オッサン二人でマジックハウスで休む、
兎、狐、鹿、猪、と、森の仲間を倒して血抜きを済ませてからアイテムボックスにしまう。
これじゃ辺境伯領とあまり変わらない。
むしろ、オッサン二人でいつもより癒しが無いから、
きっつい…
サラの笑顔が恋しいよう、
反抗期なんてパパは嫌だよう。
などと思っていると、
「いやぁぁぁぁ!」
という女性の悲鳴が聞こえた。
俺とガルドさんは無言で頷き、悲鳴が聞こえた方に走りだした。
サーチで、〈索敵〉すると、
三十程の点が森の奥で密集している。
何かの巣かも?
と思ったが、案の定
丸裸の女性に丸裸のオーク達が群がっている。
俺は、発情期の奴が嫌いなんだよ!
アイテムボックスから〈魔杖〉を出して、ターゲットで興奮して自己主張の強い奴から順に〈ウインドカッター〉を〈複数化〉スキルで3つにして、三体ずつキノコ狩りの刑に処していく。
30体のオークの中にオークナイトと、オークキングが混じっていたが、
雑魚キノコは〈複数化〉で同時に狩るが、
上位種は〈集中・ウィンドカッター〉で、もう味見後の湿気たヤツを…
って、生々し過ぎて、〈ターゲット〉で凝視もしたくないので首を狙い魔杖を振る。
オークナイトは手応えを感じる間もなく、一瞬で息絶えた。
ガルドさんは何してるのかな?
と思えば、キノコの無くなった豚野郎を戦斧で凪払い、
ガルドさんは、自分のマジックバッグから替えのシーツを出して、多分キングや、ナイトに、酷い事をされた女性に渡して、
「お嬢さん、コレを使いなさい、この時期でも森はすこし冷えますゆえ、」
と言って「クリーン」を何も聞かずに、そっとお嬢さんに使い、女性についた豚汁を浄化していた。
〈カッコいい所を総取りしやがった!〉
と思った瞬間、
豚の王が俺に殴り掛かってきた。
「あっちが、今、良いところでしょうがぁぁぁぁ!」
と俺は、思わず殴りとばしたのだが、
思ったよりもすっ飛ぶ〈オークキング〉…
えっ、日々の労働で、俺強くなった?
と驚いていたが、
今は〈裸の王様の豚〉を倒すのが先だ。
しかし、なんのスキルも使わずに、オークキングをタコ殴りにしながら、
〈おかしい、身体強化を使わずに魔物と渡りあっている?〉
などと、考える余裕もある、
訳が解らん…
解らないのだが、女性に非道な行いをした豚野郎はゆるせない。
「形変えてやんよぉ!」
と豚キングに顔面に俺の固くて太い…
右ストレートを
ぶちこんでやった。
すると、豚は、ヨロヨロと起き上がると、
〈あいや待たれよ、我が人生、コレ程の強者に出会った事がない、
ぜひ、ぜひ、我を貴方様の配下の末席に、何卒…〉
と豚キングが話してきた。
「うん、ありがとう。
でも、ごめんね…」
〈集中・ストーンフォール!〉
上空から拳大の石が、その質量と見合わない速度で自然落下し
オークキングの頭部を弾けとばした。
〈えへぇ、マジで、汚い花火だな。〉
「クリーン」
と魔法で服についた〈豚ミンチ〉を取り除き、ガルドさんを見ると、
「飲むとよい。」
と女性にハイポーションを差し出す。
シーツを巻いたお嬢さんは、
「はい、ありがとうございます。
騎士さまっ!」
とキラキラしている二人…
だから、発情期は嫌いだ…。
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