鍛え直す男
ダンジョンに向かって直ぐに撤退してきた俺は、
まだ明るいので、冒険者ギルドの図書館で資料を読み漁る。
〈記録〉スキルがあるので、凄いスピードでダンジョンの事、スキルの種類、魔物の事を詰め込んだ。
羊人間(仮)は〈羊男〉という名前らしい、
〈確かに立派な角が生えていたけど、そのまんまだな。〉
…近接武器の練習と、スキルの追加しかないが…
スキルを買うにはお金がない…
貴族って余り儲からないのかな?
と、がっかりしながら工房に帰ると、クララさんに、
「ご主人様、如何されましたか?
そのボロボロの服装は…」
と心配された。
「慣れない場所で戦闘したら、相手に翻弄されて切り裂かれました。」
と答えながら、
〈俺、ギルドにこんなボロボロの格好で行っていたのか。〉
と反省した。
クララさんは、職人組を集めて何やら会議を始めた。
「ご主人様、繕いますのでお召し物を後でお預かりします。」
と言われたので、部屋で着替えた。
着替え終わってクララさんに仕事着を預けに行くと、
「ご主人様、明日は冒険をお休みして下さい。
繕いものなどが終わるまでは町から出ない様にお願い致します。」
と言われた。
まぁ、明日も冒険者ギルドの図書館に行くから良いけど、
やっぱり主人がボロボロの格好でウロウロするのは不味いよね。
「解りました。修繕お願いします。」
というと
「お任せ下さい」
とクララさんが言ってくれたが、
その夜、工房組は夜通し何かを作っていた。
翌朝、頑張っている皆の手前、寝ている訳にもいかず工房を出る。
厩舎に向かい〈クロイ〉と子馬達に癒されに行く。
〈ホランさん〉は本当に馬の扱いが上手い様で、子馬達の毛並みもツヤツヤだ。
ひとしきり馬と戯れてから冒険者ギルドに向かう、リオは馬達の警備役に置いてきた。
図書館で暇そうにしていて可哀想だから、牧場ならば子馬と遊べて良いだろう。
ギルドの図書館に着き、資料を読み、情報を収集するのだが、昼過ぎには粗方の資料は読み終えた。
時間も有るし、ガイルス辺境伯様の家に向かうことにした。
ガイルス辺境伯様のお屋敷に行くと、庭でガイルス様と料理長が何かを燻製していた。
〈どっぷりハマってるね。〉
と思いながらガイルス様達に挨拶をすると、
「マヨネーズ男爵よ、良いところに来た。
料理長の渾身の腸詰めが仕上がるところだ。」
と赤ワインを片手にガイルス様が燻製の仕上がりを待っていた。
「ユウ殿も味見をお願いします。」
と料理長が出来立ての腸詰めを差し出す。
温燻でアツアツの腸詰めは、以前よりはるかに美味しく成っていた。
「物凄く美味しいです。
もう、料理長の方が燻製の事は俺よりも詳しいと思います。
この短期間で凄く頑張りましたね。」
と感想をのべた。
料理長に職人組が仕上げたミンサーの試作器を渡して。
「ミンチと腸詰めが出来る器具です。」
とプレゼントすると、料理長が、
「試してみても?!」
とワクワクしながら聞いてくるので、
「どうぞ、プレゼントです。」
と答えた。まぁ、アイテムボックスにミンサー完成品が入っているから試作品はもとから料理長にあげる予定だったので構わない。
「使い心地をまた聞かせて下さい。」
とお願いすると、
「はい!」
と答えてキッチンに走って材料を取りに向かう料理長をガイルス様と旨い腸詰めを頬張りながら見ていた。
材料を用意した料理長がボアの肉をミンサーに入れてハンドルを回すと内部のスクリューに押し出され出口手前のカッターで切り刻まれボウルにでてくる。
料理長に、
「ハンバーグも楽になるし、出てきたお肉を何回かミンサーで挽けば滑らかになる。
わざと粗挽きの肉と合わせても美味しいよ。」
と説明すると、料理長が〈その手が有ったか!〉とメモをしている。
そして、味付けをした肉をミンサーに入れて、出口にノズルを装着し腸をセットしハンドルを回す料理長は次の瞬間
「おぉ、凄い、凄い!」
と喜んでいる。
手絞りよりも楽に出来る腸詰めを見ながら、料理長が、
「辺境伯様!」
というと、ガイルス様が、
「うむ、参ろうか。」
と言って、鍛治師ギルドと商業ギルドに連行された。
鍛治師ギルドでミンサーの特許申請は現物と〈イスタさん〉の図面が有るので直ぐに終わった。
商業ギルドで燻製の技術と腸詰めのレシピを登録した。
これで、各地の肉屋が腸詰めを作り、ホットドックを売る売店が出来るであろう。
料理長のメモのお陰で登録が楽に出来たので、燻製の特許料は料理長と〈半分こ〉にした。
ホットドックは商業ギルドマスターに頼み、孤児院でパンを焼いて少し大きな子供に売らせれば運営が楽になると思うので、当面は孤児院のみに許可を出して下さい。
と伝えた。
先ほど出来上がった料理長の腸詰めをアイテムボックスに有った遠征用のパンに挟みケチャップをかけて商業ギルドマスターに渡した
食べながら小太りなギルドマスターが
「実に旨い!」
と言ってから、
「任せて下さい。肉屋にも声をかけて、孤児院長とも話をつけます。」
と、胸を ポムン っと叩いて笑っていた。
うん、これで安心だ。
商業ギルドマスターから燻製器は木工ギルドだと言われて向かうが、入り口で職員さんに、
「まだ、仕上がってない!」
と叱られた。
凄い馬車の注文が入りパニック状態らしい、鍛治師ギルドは制作期間で準備が出来たが、木工ギルドは、にわかに注文がきたから、まぁ、こうなるわな…
サラッと手続きだけして、詳しいシステムは商業ギルドの燻製の手引きを見てくださいと言って木工ギルドをあとにした。
〈ありゃ馬車が出来るのはもう少し先だな…〉
さて、今日するべき事は全て済んだので、リオを迎えに行ってから工房にかえる。
すると、工房組から仕事着と鎧のプレゼントが有った。
王様から頂いた布の中に防御力が高い物や、皮素材の中にもアーマーリザードの鎧皮が有ったので、工房組が夜なべして作ってくれたらしい。
新品の仕事着と、鉄兜などの鉄装備と、鉄とアーマーリザードのハイブリッド鎧を貰った。
「私たち皆からご主人様に、今ご用意できる最高の物です。」
とプレゼントされた。
ペータさんが、
「私は鎧等は作れませんが、こちらを。」
と言って、リオ用の荷車を差し出してきた。
リオが、
〈これなに?〉
と興味津々で聞いているので、
「リオ用の荷車だよ。」
言って装着してやったら、中庭をぐるっと回って
〈やったぁー〉
と喜んでいたので、
「ペータさん有り難う喜んでいるよ。
皆も有り難う、明日から頑張るよ。」
と答えると、ユキさんが、
「頑張り過ぎないで下さいね、無事に帰ってきてくれたらそれで良いですので。」
と心配してくれた。
次の日、心の籠った新装備を纏い、高原地帯を目指して〈クロイ〉に乗り、リオと走りだした。
修行するなら人里離れた山だな!
という、アホっぽい理由と、高原地帯の集落を見に行くついでに、魔物の種類が多い狩り場で近接武器の練習をするために進む、
鍛え直して、直ぐて無くてもリベンジする…
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