料理長とチャレンジする男
〈解体地獄の刑〉が無事に執行されているようで、朝イチで〈スタンプボア〉を解体場に並べて、窓口で料金を受け取り1日の予定がほぼ終わる、
初日の解体分の〈スタンプボア〉の肉のバラ肉とロース肉を一部売らずに残してもらった、
実は俺自身〈スタンプボア〉を食べた事がないので楽しみにしている。
ありがたい事に王都では〈スタンプボア〉は珍しく、辺境伯領より高値で買い取ってくれるので大金貨や小金貨がアイテムボックスの中に普通の家ぐらいなら買えそうな程入っている。
「これだけ有れば、馬車と馬を買えるかな?」
と考えながら王都を散策している。
スキルショップも領都の倍以上の規模だ、
「冷やかしてみるか、」
とスキルショップに入るが、やはり塩対応な職員さん、
〈一度買わないと本気を出さないのは知ってますよ。〉
と思いながら品揃えを見てみる。
流石に売場が倍以上有るだけはあり、見たこと無いスキルがかなり有った。
魔法も中級までなら各種揃っているし、上級スキルも高額だが販売してある…
知らない生活魔法も扱っていた。
俺の目を引いたのが、
〈ターゲット〉狙った場所に魔法や弓等を当てる事が出来る補助スキル 大金貨二枚
高いが、凄く魅力的だ、馬車が何とか成ったら買いたいスキルだ。
他に、生活魔法の〈プチフリーズ〉治療院の職員さんに人気の水を氷らす生活魔法、氷らせる範囲は鍋一杯程度、小金貨三枚
!これは、即買いだ!
生活魔法なら安いし罪悪感が少ない、
生活魔法の棚で〈ドライ〉と言う乾燥に使う生活魔法が有った、これは小金貨二枚だ。
これも買おう!
目移りするが、散財はできないので、〈プチフリーズ〉と〈ドライ〉の2つを購入して店を出た。
〈アイスが作れる!〉
〈ドライフルーツが作れる!〉
とウキウキしながら町をぶらつき、
市場や商会を周り食材や調理器具を買うのだが、
あることを閃き大工道具を一式を商会で買い求め、そのあと木材屋に出向き、板材や木材を買い、店の大将に頼んで要らない木材の切れ端や皮の部分を数種類もらってガイルス様のお屋敷に帰った。
ガイルス辺境伯様に庭のレンガ組のバーベキューコンロの使用許可をもらい、お屋敷の庭でトンテンカンと日曜大工を頑張っている。
スタンプボアの肉を燻製にするためだ。
この世界には〈干し肉〉は在るが〈燻製〉は見たことがない
〈スタンプボア〉のバラ肉に塩を揉み込みボウルの水を〈プチフリーズ〉で氷らせバラ肉と一緒に箱に入れて一時間ほど寝かせる。
その間に塩、砂糖、酒類に水を火にかけ胡椒やハーブで香りをつけた漬け込み液 (ソミュール液)をつくり、〈プチフリーズ〉を軽くかけて粗熱をとる。
寝かせたバラ肉を軽く洗い塩を落とす。
〈ドライ〉をバラ肉の表面か乾く程度掛けて鍋に入れる、つけ込み液を茶漉しでハーブの粒を濾しとりながら鍋の肉が浸るくらいにする
あとは5日程度たまにひっくり返したり揉んだりして漬け込む…
時間がかかるなぁ、
出来た燻製器をアイテムボックスにしまい、色々な木材を〈ドライ〉を使いカラッカラにしてアイテムボックスにしまいこむ。
肉の入った鍋はガイルス様のお屋敷の料理長さんに頼んでキッチンの冷蔵庫で保管してもらった。
興味津々だったので、
「一緒にする?」
と誘えば目をキラキラさせて、
「良いですか?」
と答えた料理長、
バラ肉ばかりでは面白くないので、料理長には先程市場で買った〈卵鳥肉〉を使ってスモークチキン?を作って貰うの事にした。
手順はバラ肉と同じだが、漬け込みは短い方が俺の好みなので、早速明日燻製してみる事にした。
翌日、〈卵鳥肉〉を一時間塩抜きしたあとで、〈ドライ〉を使い表面が乾くほど水分を抜き、料理長と共にバーベキューコンロに燻製器を設置し、カラカラに乾かした木片を火にくべたのち、燻らせ燻製器に入れていく。
煙と仄かな熱がじっくりと〈卵鳥肉〉を調理していく。
お肉と知り期待をしながら見ていたリオは煙の匂いがお気に召さないのか、
〈散歩に行くね〉
と行ってしまった。
料理長はメモを取りながら、実験をしている科学者のように燻製を観察している。
煙の筋がお屋敷の庭から登る
〈大豪邸だからできる豪快な燻製だな〉
と思いながら、俺もこれをするときはキャンプ場とかでしか出来なかったなぁ…
と懐かしんでいた。
数時間燻した〈卵鳥肉〉が完成し、暫く外気で乾かしながら熱を冷ます。
アイテムボックスからまな板とナイフを、出して燻製卵鳥をカットして料理長と味見をしてみる。
〈うん、成功だ。〉
満足している俺の隣で、何故か涙を流している料理長
「おいしぃーいー、おいしぃーよー」
と、変な鳴き声を放っている。
「これが燻製ですよ。」
と料理長に話すと、
料理長は、
「あとはどの様なものを燻製出来ますか師匠!」
と聞いてきた。
「ユウでいいよ、料理長さん
あとは生で食べれるくらい新鮮な魚や貝柱、チーズや変わり種ではナッツ類かな、
でも、魚やチーズやナッツなどは燻製器の中があまり高温に成らない様に注意しなければならないよ。」
と、温燻と冷燻を料理長に説明した。
料理長は、
「ユウさんの作った燻製器を暫く貸して頂けませんか?」
と聞いてきたので、
「4日後に一緒に〈スタンプボア〉の燻製するから、それ以外は自由に使ってもらったらいいよ。」
と答えた。
すると、料理長は
「ありがとうございます」
と言ってすぐに何処かに出かけて行った。
リオが戻って来たので、燻製卵鳥を1切れあげたら、
〈美味しいけど、臭い〉
と、狼には煙の匂いはキツくて好みではないらしい。
そんな事をしていると、
帰ってきた料理長がナッツ類と木材片を鞄から出して、木材に〈ドライ〉をかけ始めた。
生活魔法まで買ってきた料理長に驚きながらも、燻製器の金網にナッツを並べている料理長を見ながら、
美味しい燻製レシピができたら料理長に教えて貰おう。
と思いながらリオと一緒に庭を後にした。
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