厄介事に巻き込まれた貴族
※ガイルス辺境伯視点です。
食い道楽で知られる、
アーサー・ファン・ガイルス辺境伯は悩んでいた。
料理のレシピを勝手に王家に売ったのは確かに悪いと思っているが、
まさか、受け取らないとは思っていなかった…
しかも、王家に返して欲しいとは…
王家も一度出した金を返したと有れば面子が立たない、いっそ、有り難がって金を受け取る方が〈簡単な人物〉として可愛がって貰えるかもしれないが…
「どうしたものか…」
しかも、マヨネーズを我が領地の産業にして欲しいと言って帰った、
確かに新しいレシピにはマヨネーズは不可欠だ、
そのマヨネーズの生産を我が領地で出来れば凄まじい経済効果が有るだろう。
考えがあってか、行き当たりばったりかは解らないが、とりあえず王家との話し合いを持たなければならない…
「胃に穴が空きそうだな」
と、ため息混じりに呟き
執事を呼び早馬で王家へ
「レシピの件でご相談したき事があり、王都の屋敷にてお返事をお待ちしております。」
と手紙をだして、
家族に、「王都の屋敷に向かうぞ!」
と宣言をして馬車で二週間の王都を目指して一家で移動を始めた。
嫁はお茶会仲間に会えるとはしゃぎ、
娘は婚約者に逢えるとはしゃぐが、
馬車の中で一人、胃の痛みに耐えている貴族がいた。
二週間の長旅の末に王都にある辺境伯邸に到着するが、
到着するなり使用人が、
「王家からのお手紙が届いております。」
と報告してきた。
「休む暇はないか…」
と呟きながら、手紙を読む
『到着次第城へ来るように』
とだけ書いて有った。
怒ってるのかなぁ…これ…?
とりあえず急ぎ、お金と手土産を持って城に登る。
応接室に通され、王様達の御成を待つ間も胃がキリキリしだす。
王家の方々が応接室に入られた。
「急な謁見の申し出に応じて頂き有り難う御座います。
ガイルス、只今王都に到着し、参上いたしました。」
と挨拶をしたのち、チラリと王様をみるが怒ってはいないようで少しホッとしたのだが、本題はこれからだ…。
王様が、
「ガイルスよ長旅だっただろう、我が甥とその方の娘の婚約、我も嬉しく思うが…」
〈が… 〉のセリフにまた胃の痛みが強まる辺境伯をよそに、王様が続ける。
「弟がその方のパーティーに参加して料理のレシピを少ない金を渡して買い叩いたと聞いて、一刻も早くガイルス辺境伯に謝罪と説明をしたくてこうして集まったのだ。」
と王様が話した。
えっ!
「滅相も有りません。
公爵様にはレシピの代金として過分な料金を頂きましたが、
レシピを教えてくれた者が、王家の方からこの様な大金は頂けないと突き返された次第で…
そして、レシピは王家に献上しますが、マヨネーズだけは我が領地にて産業として作らせて頂きたいとその者からの願いを受けてしまい陛下にご相談に参上した次第でして…。」
と恐る恐る申し上げると、
「何!」
と、王様が声をあげた
〈怒らせたか!?〉
と再び胃が悲鳴を上げるが、
「なんと、欲の無い者か、
弟が話しておった〈この世の物とは思えぬ複雑な味わいの料理の数々だった〉と、レシピを買い取って来たのでお兄様も食べてみると良いと興奮して言うので、王宮の料理人に作らせたのだが、
弟が一緒に食べたのちに、首を傾げて、〈なんか違う〉と申すのだ。
かくなる上はガイルスに連絡をとりレシピの料理を作って貰う話をしていた所に早馬で知らせが来たのだよ。」
〈良かったぁ、怒らせたわけではなかったぁ〉
と、へんな汗をダラダラたらしている辺境伯に
「その者の話もゆっくり聞きたい、
近い内にあのレシピの食事を食べれる様に何とかならんかガイルスよ」
と王様か言うので、
少し上ずる声で、
「あの日の料理を作った料理人を連れて参りましたので、ご所望とあらばあの日の料理を全て再現できます。」
と答えると、王家の方々がザワザワしだす。
そして、来週、王家主宰のパーティーを行いそれから色々と相談しようではいか?
と王様から提案を受けて、パーティーの料理をウチの料理人が用意することとなった。
何とか成るかもしれないが、パーティーが終わるまで胃の痛みは続きそうだ…。
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